【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

ACE阻害薬+Ca拮抗薬とACE阻害薬+利尿薬ではどちらが良いですか?

 

こちらのメタ解析で大きなウェイトを占めていたACCOMPLISH試験を今回は読んでみようと思います。

 
「Benazepril plus amlodipine or hydrochlorothiazide for hypertension in high-risk patients.」
PMID: 19052124
 

PECO

P : 冠イベント・心筋梗塞・血行再建術・脳卒中・腎機能不全・末梢動脈疾患・左室肥大・糖尿病のうちいずれかの既往がある心血管イベントリスクが高く、血圧の高い患者(11506人、5ヶ国548施設)
E : ベナゼプリル(20mg/日)+アムロジピン(5mg/日)(5744人)
C : ベナゼプリル(20mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日)(5762人)
※両群とも開始から1ヶ月後にベナゼプリルを40mg/日に増量。降圧が不十分な場合はアムロジピンを10mg/日、ヒドロクロロチアジドを25mg/日まで増量。
O : 心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中・狭心症による入院・冠血圧再建術・心停止からの蘇生
 

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : 2重盲検が行われている
・ITT解析が行われているか? : 行われている
・脱落者 :  1.0%
・サンプルサイズ : 1642人(パワー90%)
・患者背景 : 同等、男性60.5%・平均年齢68.4歳・平均BMI31.0・平均血圧145.3/80.1mmHg
・追跡期間 : 平均36ヶ月(事前に設定された基準を満たしたため早期終了している)
 

結果

・一次アウトカム(心血管死亡又は心血管イベント)
E群(9.6%) vs C群(11.8%)→ハザード比0.80(95%心血管0.72~0.90)P<0.001、NNT=46人
 
※複合アウトカムの各要素
・心血管死亡→ハザード比0.80(95%信頼区間0.62~1.03)P=0.08
・心筋梗塞→ハザード比0.78(95%信頼区間0.62~0.99)P=0.04
・脳卒中→ハザード比0.84(95%信頼区間0.65~1.08)P=0.17
・狭心症による入院→ハザード比0.75(95%信頼区間0.50~1.10)P=0.14
・冠血行再建術→ハザード比0.86(95%信頼区間0.74~1.00)P=0.05
・心停止からの蘇生→ハザード比1.75(95%心血管0.73~4.17)P=0.20
 

感想

心血管死亡及び心血管イベントの複合アウトカムにおいて、ACE阻害薬+Ca拮抗薬はACE阻害薬+利尿薬と比較すると有意にリスクをさげているが、複合アウトカムの各要素を見てみると心筋梗塞梗塞のみリスクの低下が見られ、死亡についてはリスクを下げる傾向にあるものの有意な差は見られていません。
 
 
やはり最も気になる点はサンプルサイズよりもサンプル数がかなり多く、そうしなければ有意差が出ないほどの差なのかもしれません。
それでいて早期終了しているという事になっているため、いずれにしろ効果について適切に評価されていないような印象です。
 
 
以前のメタ解析に戻って考えると、やはりRA系阻害薬+Ca拮抗薬が最も優れているという事はあまり明確ではなく、降圧薬の併用に関しては現時点ではあまり大きな差はないのかなと思います。