【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

白衣高血圧の患者は治療するべきですか?

「The Cardiovascular Risk of White-Coat Hypertension.」

PMID:27810041

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27810041

 

PECO

: 降圧薬による治療を受けていない18歳以上の成人(1306人)

: 白衣高血圧あり(≧140/90mmHg)

: 正常血圧

: 心血管エンドポイント(心血管死亡、突然死、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞、冠血行再建術、非致死的心不全)

 

チェック項目

・研究デザイン : 人口ベースのコホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 11ヶ国の地域住民を対象としており、大きな問題はないと思われる

・交絡因子の調整は? : 年齢によるマッチングが行われており、性別・BMI・喫煙・飲酒・総血清コレステロール・心血管疾患・糖尿病について調整されている

・追跡期間中央値 : 10.6年

 

結果

・白衣効果量は30歳で9.4mmHg、70歳では25.0mmHg増加

・心血管疾患高リスク群(心血管疾患リスク因子が3つ以上・心血管疾患の既往あり・他のリスクのある糖尿病)→調整ハザード比2.06(95%信頼区間1.10~3.84)P=0.023

・低リスク群(心血管リスク因子が3つ未満)→調整ハザード比1.06(95%信頼区間0.66~1.72)P=0.80

 

※サブグループ解析

・60歳未満の低リスク群→有意な差は見られていない(P=0.32)

・60歳未満の高リスク群→有意な差は見られていない(P=0.41)

・60歳以上の低リスク群→調整ハザード比0.88(95%信頼区間0.51~1.53)P=0.66

・60歳以上の高リスク群→調整ハザード比2.19(95%信頼区間1.09~4.37)P=0.027

 

感想

24時間自由行動下血圧は正常であるが診察室での血圧が高い患者では心血管疾患リスクが高い場合に白衣高血圧のない患者と比較して心血管疾患の発生リスクが高いことが示唆されている。

とは言え、降圧治療を行うことで心血管疾患の予防効果があるかどうかはこの研究のみでは不明でしょうか...

 

少なくとも心血管疾患のリスクが低い白衣高血圧の患者に対して過剰な治療が行われていないかには注意したい。