【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

ロタウィルスによる下痢症状に整腸剤は効果がありますか?

ここ数日、当薬局ではロタウィルスによる下痢症で来局される患者さんが若干見られるため、整腸剤による効果が検討されている論文を読んでみたいと思います。

 
 
「Efficacy of probiotic use in acute rotavirus diarrhea in children: A systematic review and meta-analysis.」
PMID: 26644891
 

PECO

P : ロタウィルス性の下痢症状がある子供
E : プロバイオティクスの使用あり
C : 使用なし
O : 下痢の期間
 

チェック項目

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 2人のレビューワーが独立して評価している
・出版バイアス : Funnel plotを用いて検討されているが、「The funnel plot for publication bias had an asymmetrical distribution」と記載されており、視覚的にも偏っているように見える
・元論文バイアス : 全てRCTのメタ解析
・異質性バイアス : 視覚的にブロボグラムの方向性は比較的一致しているように見える
 

結果

・下痢の期間→SMD-0.41(95%信頼区間-0.56~-0.25) 異質性:I2=39.9%・P=0.046
 
※サブグループ解析(アウトカムは下痢の期間)
・LGG以外のプロバイオティクス→SMD-0.35(95%信頼区間-0.51~-0.25) 異質性:I2=13.9%・P=0.318
・LGG→SMD-0.47(95%信頼区間-0.80~0.14) 異質性:I2=57.8%・P=0.020
 

感想

アウトカムの指標が標準平均差であるため個人的に(勉強不足のため…)効果の程度が若干掴みづらいですが、結果だけを見るとプロバイオティクスはロタウィルスによる下痢症状の期間を短くする効果がまずまず期待できそうだなと思います。
 
ただ、中等度の異質性があり出版バイアスの可能性もあるためある程度割り引いて考える必要があるのでその点を考慮するとプロバイオティクスを服用した場合と服用しない場合では下痢症状の期間にあまり大きな差はないのかもしれません。
 
 
乳幼児においては脱水症の危険などを考えると、わずかでも下痢の期間を短くするのであればプロバイオティクスを服用するのはやはり「あり」かなと思いますが、解析に含まれている各RCTの介入を見てみたところ日本で使われている整腸剤の菌株とは異なる点に注意が必要です。
他の論文についても調べてみたところやはりプロバイオティクスによる下痢の期間を短くする効果については期待ができるものの(PMID: 11698781 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11698781 、PMID: 26991503 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26991503 )、良く処方されるような整腸剤とは菌株が異なるか又は不明でした。
ちなみにサブグループ解析が行われているLGGでパッと思い浮かぶのが「ヨーグルト」なんですが、もしかしたらそういったヨーグルト等を摂取するのを勧めてみても良いのかもしれません。現実的には難しい部分もあるかもしれませんが…。
 
 
いずれにしろまずは手洗いや出来ればワクチンの摂取等による予防を行い、感染して症状がある場合は脱水症状に注意し水分補給を行うというのが基本になるとは思いますが、積極的にお勧めするほどのものではありませんが副作用やコストを考慮しても整腸剤はまあ「あり」かなと思います。