セレコキシブは非選択的NSAIDsと比較して心血管イベントリスクを増加させますか?
「Randomized trial of switching from prescribed non-selective non-steroidal anti-inflammatory drugs to prescribed celecoxib: the Standard care vs. Celecoxib Outcome Trial (SCOT).」
PMID:27705888
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27705888
PECO
P : 非選択的NSAIDsを慢性的に処方されている60歳以上で心血管疾患や脳血管疾患の既往のない変形性関節症または関節リウマチ患者(英国・デンマーク・オランダ、7297例)
E : 非選択的NSAIDsをセレコキシブに変更(3647例、平均169.8mg/日)
C : 非選択的NSAIDsを継続(3650例、ジクロフェナク平均79.4mg/日・イブプロフェン675.9mg/日・ナプロキセン平均581.0mg/日)
O : 非致死的な心筋梗塞またはその他の急性冠症候群のバイオマーカー陽性による入院・非致死的脳卒中・心血管死亡の複合エンドポイント
チェック項目
・研究デザイン : ランダム化比較試験(非劣性試験)
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : PROBE法が行われている
・ITT解析されているか? : 割り付けられた群から脱落した患者を除いて実際に行われた治療に基づいたon-treatment解析とmITT解析が行われている
・脱落率 : セレコキシブ群48.2%、非選択的NSAIDs群31.5%
・サンプルサイズ : 2年間の追跡で各群6841例(パワー80%)
・患者背景 : 気になるような偏りはない、平均年齢68歳・女性59%・喫煙者15.5%・糖尿病8%・高血圧44%・平均血圧141/78mmHg・平均BMI29.7kg/㎡
・追跡期間中央値 : 3.0年間
結果
非劣性マージンはハザード比が1.4
・on-treatment解析
E群(0.95%/年) vs C群(0.86%/年)→ハザード比1.12(95%信頼区間0.81~1.55)P=0.50
・ITT解析
E群(1.14%/年) vs C群(1.10%/年)→ハザード比1.04(95%信頼区間0.81~1.33)P=0.75
※二次アウトカム(ITT解析のみ記載)
・上部消化管潰瘍に関連した入院または死亡
E群(0.09%/年) vs C群(0.04%/年)→ハザード比2.08(95%信頼区間0.65~7.74)P=0.27
・心不全による入院
E群(1.20%/年) vs C群(1.14%/年)→ハザード比0.76(95%信頼区間0.31~1.76)P=0.61
・総死亡
E群(0.89%/年) vs C群(0.97%/年)→ハザード比0.92(95%信頼区間0.70~1.21)P=0.56
感想
今回はセレコキシブの心血管疾患リスクについて否定的という文脈で読んでみましたが、確かに他のNSAIDsとの比較で非劣性が示されており統計的に有意な差も見られておりません。
ただし、脱落者が非常に多いためランダム化が保持されていない点、OT解析とITT解析では若干の乖離が見られている点、症例数が不足しているためβエラーの可能性が高い点を考慮するとこの非劣性試験の結果が妥当なものであるかは疑問であり、非選択的NSAIDsと比較してセレコキシブは心血管疾患リスクの点で劣っていないとは結論できない印象です。また、結果には直接影響はないようですがPROBE法が行われおりますが一次アウトカムにソフトエンドポイントが含まれている点も気になります。
また、セレコキシブ群では鎮痛効果が不十分のため脱落する例も多い点も注目すべきかと思います。
そもそもNSAIDs自体心血管疾患リスクを増加させることが示唆されておりますが、少なくともセレコキシブは他のNSAIDsと比較して心血管疾患リスクに差がないとは言えないような状況であり積極的な使用は推奨されないように思います。
このテーマについてはまた改めて調べてみる必要がありますね。
それにしても、一次情報に当たるというのは非常に重要だなと改めて感じた論文でした。
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