【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

大出血後の抗凝固薬/メトホルミンへの糖尿病治療薬の追加/最適な収縮期血圧

【私的背景】

抄録しか読めないものの、気になった論文を読んでみたいと思う。

 

①「Anticoagulation Use and Clinical Outcomes After Major Bleeding on Dabigatran or Warfarin in Atrial Fibrillation」

https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.116.015150
Stroke. 2017;48:159-166
Originally published December 1, 2016

http://stroke.ahajournals.org/content/48/1/159

 

【PECO】

: 大出血の既往のある心房細動患者

: 出血後にワルファリン(n=1135)またはダビガトラン(n=404)を再開

: 抗凝固薬を中止

: 虚血性脳卒中または総死亡、出血の再発

 

【チェック項目】

・研究デザイン : 観察研究(詳細は不明)

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

対象集団の代表性は? : メディケア受給者が対象となっており、大きな問題はないと思われる

 

【結果】

〇虚血性脳卒中または総死亡

・ワルファリンを再開 vs 抗凝固薬中止→ハザード比 0.76(95%信頼区間 0.59~0.97)

・ダビガトランを再開 vs 抗凝固薬を中止→ハザード比 0.66(95%信頼区間 0.44~0.99)

 

〇大出血の再発

・ワルファリンを再開 vs ダビガトランを再開→ハザード比 2.31(95%信頼区間 1.19~4.76)

・ワルファリンを再開 vs 抗凝固薬を中止→ハザード比 1.56(95%信頼区間 1.10~2.22)

・ダビガトランを再開 vs 抗凝固薬を中止→ハザード比 0.65(95%信頼区間 0.32~1.33)

 

【感想】

以前取り上げた論文では、頭蓋内出血の既往がある心房細動患者において、CHA2DS2-VAScスコアが6点以上の場合にワルファリンを使用するとベネフィットがリスクを上回る事が示唆されておりました(関連記事①)。

今回の論文では、大出血後に抗凝固薬の再開が必要な場合はワルファリンと比較するとダビガトランを使用した方が大出血の再発リスクが低い事が示唆されております。

ただ、抗凝固薬群と比較した場合もダビガトラン再開群の方が大出血の再発リスクは減少傾向にあり、これはややおかしな結果であるように思います。選択バイアスの可能性が高いのかもしれません。

やはりこの結果のみで結論することはできませんが、今後も追っていきたいテーマです。

 

 

②「Comparative cardiovascular risks of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors with other 2nd and 3rd line antidiabetic drugs in patients with type 2 diabetes」

Accepted manuscript online: 21 January 2017
DOI: 10.1111/bcp.13241

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bcp.13241/full

 

【PECO】

: 2型糖尿病患者(113051人)

: メトホルミンにDPP-4阻害薬を追加、メトホルミン+SU薬にDPP-4阻害薬を追加

: メトホルミンにSU薬を追加、メトホルミン+SU薬にアカルボースまたはメグリチニドを追加

: 虚血性脳卒中、心筋梗塞、心不全

 

【チェック項目】

・研究デザイン : コホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている

 

【結果】

〇メトホルミンに DPP-4阻害薬を追加 vs SU薬を追加

・虚血性脳卒中→ハザード比 0.817(95%信頼区間 0.687~0.971)

※二次アウトカム

・総死亡→ハザード比 0.825(95%信頼区間 0.687~0.992)

 

〇メトホルミン+SU薬に DPP-4阻害薬を追加 vs アカルボースを追加

・虚血性脳卒中→ハザード比 0.826(95%信頼区間 0.740~0.923)

※二次アウトカム

・総死亡→ハザード比 0.784(95%信頼区間 0.701~0.878)

 

メトホルミン+SU薬に DPP-4阻害薬を追加 vs メグリチニドを追加

・虚血性脳卒中→ハザード比 0.653(95%信頼区間 0.542~0.786)

・心不全→ハザード比 0.721(95%信頼区間 0.567~0.917)

※二次アウトカム

・総死亡→ハザード比 0.689(95%信頼区間 0.594~0.703)

 

【結果】

これまで同様(関連記事②、③、④)、メトホルミンに追加するならDPP-4阻害薬が良いという結果です。

観察研究しかないため注意が必要なところではありますが、やはり今のところはメトホルミンに追加するのであればDPP-4阻害薬が妥当なところかなと思います。

 

 

③「Optimal Systolic Blood Pressure Target after SPRINT Insights from a Network Meta-Analysis of Randomized Trials」

DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.amjmed.2017.01.004

http://www.amjmed.com/article/S0002-9343(17)30035-9/fulltext

 

【PECO】

: 降圧治療が行われている患者(55163人)

E&C : 収縮期血圧の降圧目標について比較

: 脳卒中、心筋梗塞、死亡、心血管死亡、心不全、深刻な有害反応

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ネットワークメタ解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されている

 

【結果】

〇<120mmHg vs <160mmHg

・脳卒中→RR 0.54(95%信頼区間 0.29~1.00)

・心筋梗塞→RR 0.68(95%信頼区間 0.47~1.00)

〇<120mmHgと比較して、<140mmHg・<150mmHg・<160mmHgではそれぞれ72%・97%・227%脳卒中の増加が見られた。

〇死亡、心血管死亡、心不全については有意な差は見られなかった。

〇<120mmHgおよび<130mmHgが最も有効な降圧目標であった。

〇深刻な有害反応

・<120mmHg vs <150mmHg→RR 1.83(95%信頼区間 1.05~3.20)

・<120mmHg vs <140mmHg→RR 2.12(95%信頼区間 1.46~3.08)

・<140mmHgおよび<150mmHgが深刻な有害反応においては最も安全な降圧目標であった。

〇有効性・安全性を考慮すると<130mmHgが最適な降圧目標であった。

 

【感想】

仮説生成的な研究である点には注意が必要ですが、各群で死亡については有意な差は見られておらず、少なくとも低ければ良いというものではないことが示唆されています。

 

 

関連記事

① 


 

③