【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

横断研究について

横断研究について記録も兼ねて簡単なまとめ。

 
そもそも横断研究というのは、ある時点での疾患を有する患者に対して暴露の有無・程度や有病率を調査し検討する方法です。
あくまでも一時点なので、過去にさかのぼって調査したり、将来にわたって調査したりなどの時間の流れはありません。
ちなみに、診断法を検討する際などに理想的な研究デザインだと言われているようです。
 
前回のブログの内容だと、インフルエンザ対してインフルエンザ抗原迅速診断キットによる診断をVRVというgold standardと呼ばれる検査を標準検査として比較されていたわけです。
 
※gold standardとは診断や評価の精度が高いものとして広く容認された手法のこと。
 
横断研究を批判的吟味する際は以下のポイントについて確認していきます。
・横断研究であるか?
・標準検査は妥当か?
・対象患者は臨床上、適切な患者であるか?
・研究で行われた診断法と標準検査は全ての患者で行われているか?
・研究で行われた診断法と標準検査は独立して判定されているか?
・研究で行われた診断法と標準検査の判定方法は明確か?
・研究で行われた診断法と標準検査はいずれも再現性があるか?
 
では指標や結果の整理の仕方などを
 
・オッズ比
疾患と因子の関連はオッズ比で示されます。
オッズ比とは危険率を表す指標で、「ある事象/そうでない事象」で表されます。
例えば、インフルエンザに罹患している人が10人中3人いた場、
確率であれば3/10ですが、オッズ比だとインフルエンザに罹患していない人が7人いるわけですから3/7となります。
 
・結果の整理
論文の結果から下図の四分割表を用いて結果を整理します。
 

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この四分割表から以下の項目が算出できます。

・有病割合 : 研究参加者における疾患保有者の割合→a+c/a+b+c+d

・感度 : 疾患を有する者を陽性と正しく判定した割合→a/a+c

(感度が高いと病気の見逃し率が減り、所見がなければその疾患を除外する可能性が高くなる)

・特異度 : 疾患を有さない者を陰性と正しく判定した割合→d/b+d

(特異度が高いと誤って病気と診断してしまう確率が減り、所見があれば確定診断できる可能性が高くなる)

・陽性的中率 : 診断結果が陽性の場合に疾患がある人の割合→a/a+b

・陰性的中率 : 診断結果が陰性の場合に疾患がない人の割合→c/c+d

 

これらは検査の正確度を意味するもので、これらを利用して尤度比というものを算出できます。

ベイズの定理というものらしいですが、尤度比を使えば検査前オッズ(平たく言うと、検査する前に疾患がある確率はこれくらいかなーという見立て)に尤度比を乗じると検査後オッズを算出することができます。

・陽性尤度比→感度/1ー特異度

(感度が高いほど、特異度が高いほど、大きくなる値)

・陰性尤度比→1ー感度/特異度

(感度が高いほど、特異度が高いほど、小さくなる値)

 

ちなみに、陽性尤度比>1、陰性尤度比<1でなければ意味がなく、有意に意味を持つのは陽性尤度比>10、陰性尤度比<0.1の場合のようです。

※陽性尤度比>10→有意に陽性的中率が上昇=確定診断に向く

陰性尤度比<0.1→有意に陰性的中率が上昇=除外診断に向く

 

ここまでくれば、あとはモノグラムというものを用いて事前確率(検査前オッズ)と尤度比に直線を引くことで事後確率(検査後オッズ)を測定できます

 

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上の図では、事前確率が50%で陽性尤度比が2の結果が事後確率が66.7%で、

例えば陰性尤度比が0.2だった場合、事後確率は17%くらいになるため、

検査をして陽性だった場合に本当に疾患がある可能性は66.7%で、陰性だった場合に本当に疾患がない可能性は17%なのでその検査はあまり有用ではないのではないかというような見方が出来ます。