【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

インクレチン関連薬は総死亡リスクを減少させますか?

【私的背景】

これまで、特にDPP-4阻害薬を使用する意義については不明である印象であるが、今回はインクレチン関連薬と死亡について検討されている論文を読んでみたいと思う。

 

「Incretin based treatments and mortality in patients with type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis.」

PMID:28596247

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28596247

 

PECO

: 2型糖尿病患者(平均年齢の範囲60.3~65.0歳、平均BMI29.5~32.8、平均ベースライン時HbA1c7.2~8.7%)

: GLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬

: プラセボまたはその他の糖尿病治療薬

: 総死亡

 

チェック項目

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 明確

・評価者バイアス : 2人のレビューワーが独立して評価しており、必要に応じて3人目のレビューワーが仲裁する

・出版バイアス : Funnel plotを用いて評価されており、「Our funnel plot and statistical test showed no evidence of publication bias」と記載されている。言語の制約はない。

・元論文バイアス :  modified Cochrane risk of bias instrumentを用いて評価されており、 「all of which were at low to moderate risk of bias」と記載されている。table Dを見ても大きな問題はないように思われる。

・異質性バイアス : フォレストプロットの方向性は一致していない。

 

結果

・インクレチン関連薬→オッズ比 0.96(95%信頼区間 0.90~1.02)P=0.17 異質性:I2=0%、P=0.56

※サブグループ解析

・GLP-1作動薬→オッズ比 0.89(95%信頼区間 0.80~0.99)P=0.03 異質性:I2=0%、P=0.44

・DPP-4阻害薬→オッズ比 1.02(95%信頼区間 0.88~1.06)P=0.48 異質性:I2=44%、P=0.11

 

※心血管イベント(心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)

・GLP-1作動薬→オッズ比 0.88(95%信頼区間 0.74~1.04)P=0.13 異質性:I2=68%、P=0.07

・DPP-4阻害薬→オッズ比 0.94(95%信頼区間 0.87~1.03)P=0.17 異質性:I2=50%、P=0.07

 

感想

死亡の延長効果という点ではインクレチン関連薬の意義は不明であるという結果であると思います。

あくまでも仮説の段階ではありますが、サブグループ解析を見るとGLP-1作動薬とDPP-4阻害薬には差がある可能性があり、今後の研究に期待したいところではあります。

現時点ではメトホルミンが使えない、またはメトホルミンのみではコントロールが悪い患者で消極的に選択されるという辺りが妥当なところかなと思います。