インクレチン関連薬と膵炎/SU薬と死亡リスク/SGLT-2阻害薬と総死亡
今回も抄録しか読めないけど気になった論文を。
①「The use of incretin agents and risk of acute and chronic pancreatitis: a population-based cohort study」
DOI: 10.1111/dom.12833
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.12833/full
【PECO】
P : インスリン以外の糖尿病治療薬が処方されている182428人の成人(英国)
E : インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬およびGLP-1受容体作動薬)
C : その他の糖尿病治療薬
O : 膵炎
【チェック項目】
・研究デザイン : 人口ベースのコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 一般診療のデータベースが使用されており、大きな問題はないと思われる
・交絡因子の調整は? : 詳細は不明だが、生活習慣・疾患および薬剤の歴について調整されている
【結果】
・全ての膵炎→調整ハザード比1.47(95%信頼区間1.06~2.04)
・急性膵炎→ハザード比2.12(95%信頼区間1.31~3.43)
・慢性膵炎では有意な差は見られなかった
【感想】
特に目新しい報告ではないが、インクレチン関連薬の使用が急性膵炎のリスクを増加させることが示唆されており、特にアルコールを多く摂取する患者では上腹部痛等に注意し警戒した方が良いかもしれない。
②「Cardiovascular events and all-cause mortality associated with sulfonylureas compared to other antihyperglycaemic drugs: A Bayesian meta-analysis of survival data」
DOI: 10.1111/dom.12821
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.12821/full
【PECO】
P : 2型糖尿病の患者
E : SU薬
C : プラセボまたはその他の糖尿病治療薬
O : 総死亡、心血管関連死亡
【チェック項目】
・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
【結果】
・総死亡→ハザード比1.26(95%信頼区間1.10~1.44)
・心血管関連死亡→ハザード比1.46(95%信頼区間1.21~1.77)
・心筋梗塞
SU薬 vs DPP-4阻害薬→ハザード比2.54(95%信頼区間1.14~6.57)
SU薬 vs SGLT-2阻害薬→ハザード比41.80(95%信頼区間1.64~360.4)
・DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン系薬、インスリンと比較してSU薬では脳卒中のリスクが有意に高かった
【感想】
こちらも目新しい報告ではありませんが、個人的な印象としてはSU薬は特に高齢者において長期間漫然と処方され必要以上にHbA1cが低めに管理されているようなケースも少なくはないため、予防的効果に対する血糖コントロールの意義も含めて見直す必要があるように思う。
③「Cardiovascular outcomes with sodium-glucose cotransporter-2 inhibitors in patients with type II diabetes mellitus: A meta-analysis of placebo-controlled randomized trials.」
PMID:27866027
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27866027
【PECO】
P : 2型糖尿病患者
E : SGLT-2阻害薬
C : プラセボ
O : 総死亡、心血管死亡、心不全、心筋梗塞、脳卒中/一過性脳虚血発作
【チェック項目】
・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
【結果】
・総死亡→オッズ比0.72(95%信頼区間0.59~0.86)P<0.001
・心血管死亡→オッズ比0.67(95%信頼区間0.53~0.84)P=0.001
・心不全→オッズ比0.67(95%信頼区間0.51~0.87)P=0.003
・心筋梗塞→オッズ比0.89(95%信頼区間0.74~1.09)P=0.29
・脳卒中/一過性脳虚血発作→オッズ比1.09(95%信頼区間0.87~1.37)P=0.47
※総死亡に対するサブグループ解析
・エンパグリフロジン→オッズ比0.66(95%信頼区間0.54~0.81)P<0.001
・ダパグリフロジン→オッズ比1.37(95%信頼区間0.71~2.62)P=0.35
・カナグリフロジン→オッズ比0.82(95%信頼区間0.41~1.68)P=0.59
・ルセオグリフロジン→オッズ比4.6(95%信頼区間0.07~284.25)P=0.47
・イプラグリフロジン→オッズ比4.73(95%信頼区間0.08~283.14)P=0.46
【感想】
エンパグリフロジンが特別優れているというわけではなく、SGLT-2阻害薬では大規模な臨床試験の結果が報告されているのはエンパグリフロジンのみでそちらに全体の結果が引っ張られているような印象です。様々な事情があるのかもしれませんが現時点ではメタ解析を行う意義はあまりないように思います。
SGLT-2阻害薬に関しては今後に期待。
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