【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

慢性心不全患者にACE阻害薬は有用ですか?

「Comparison of the Efficacy and Safety of Different ACE Inhibitors in Patients With Chronic Heart Failure: A PRISMA-Compliant Network Meta-Analysis.」

PMID: 26871774
 

PECO

P : 慢性腎不全の患者
E : ACE阻害薬の使用
C : プラセボ使用
O : 総死亡・一回心拍出量・駆出率
 

チェック項目

・研究デザイン : ネットワークメタ解析
・真のアウトカムか? : 総死亡→真のアウトカム、一回心拍出量・駆出率→代用のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「Two authors independently selected the studies after reading the title and abstract.」と記載されている
・出版バイアス : 言語の制約はない
・元論文バイアス : 全てRCT、Figure 2 を見ると致命的な問題はないように思う
・異質性バイアス : 「I2 exceeded 50% was considered as high heterogeneity and I2 under 25% was considered as no heterogeneity.」と記載されている
 

結果

[総死亡]
・リシノプリル→オッズ比65.9(95%信頼区間1.91~239.6)
・ラミプリル→オッズ比14.65(95%信頼区間1.23~49.5)
・カプトプリル及びエナラプリルでは有意な差は見られていない
 
[一回心拍出量]
・カプトプリル、エナラプリル、リシノプリルで有意な差は見られていない
 
[駆出率]
・カプトプリル、エナラプリル、リシノプリルで有意な差は見られていない
 
 

感想

心臓の「前負荷」「後負荷」を軽減するということで心不全の治療薬としても使われるACE阻害薬ですが、慢性心不全患者ではACE阻害薬の使用により総死亡については有意な差は見られない又はリスクを大きく増加させ、代用のアウトカムですら改善が見られないという個人的にちょっと衝撃的な結果でした。
 
 
リシノプリルについては注意する必要があると思いますが、この論文にはフォレストプロットやI2値の記載がないため異質性については不明であり、私自身の問題ですがネットワークメタ太郎の妥当性の吟味も充分ではないためこの論文のみでは例えば「慢性心不全患者にACE阻害薬を使うえきではない」などと結論する事はできません。
慢性心不全とACE阻害薬についてはまた改めて調べていきたいと思います。