【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

腎臓のために厳格な血糖コントロールを行うべきですか?

【私的背景】

私的には腎機能低下予防のためにどの程度で血糖コントロールを行うべきか不明確である。今回は厳格な血糖コントロールと腎アウトカムについて検討されている論文を読んでみたいと思う。

 

「Role of intensive glucose control in development of renal end points in type 2 diabetes mellitus: systematic review and meta-analysis intensive glucose control in type 2 diabetes.」

PMID:22636820

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22636820

 

PECO

: 7つのランダム化比較試験に参加した2型糖尿病の成人(28065例)

: 厳格な血糖コントロール

: 標準的な血糖コントロール

: 代用エンドポイント→微量アルブミン尿・顕性アルブミン尿、臨床エンドポイント→血清クレアチニン倍化・末期腎障害・腎疾患死亡

 

チェック項目

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析

・真のアウトカムか? : 微量アルブミン尿・顕性アルブミン尿・血清クレアチニン倍化→代用のアウトカム、末期腎障害・腎疾患死亡→真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されているため注意

・評価者バイアス : 「Two investigators independently reviewed」と記載されている。

・出版バイアス : Funnel plotを用いて評価されており、「There was evidence of publication bias by funnel plot analysis for the outcomes of microalbuminuria, macroalbuminuria, and doubling of serum creatinine,」と記載されている。

・元論文バイアス : 盲検化の項目に注意が必要だが、アウトカムを見ると大きな問題はないように思われる

・異質性バイアス : フォレストプロットの方向性は概ね一致している

 

結果

・微量アルブミン尿→リスク比 0.86(95%信頼区間 0.76~0.96)P=0.009 異質性:I2=64%、P=0.01

・顕性アルブミン尿→リスク比 0.74(95%信頼区間 0.65~0.85)P<0.0001 異質性:I2=13%、P=0.33

・血清クレアチニン倍化→リスク比 1.06(95%信頼区間 0.92~1.22)P=0.44 異質性:I2=13%、P=0.33

・末期腎障害→リスク比 0.69(95%信頼区間 0.46~1.05)P=0.09 異質性:I2=43%、P=0.13

・腎疾患死亡→リスク比 0.99(95%信頼区間 0.55~1.79) 異質性:I2=0%、P=0.55

 

感想

厳格な血糖コントロールは標準的な血糖コントロールと比較して、微量アルブミン尿及び顕性アルブミン尿のリスクは減少させることが示唆されているものの、臨床的なアウトカムについては有意なリスク減少はみられていないという結果です。

「厳格な血糖コントロール」と言ってもHbA1cの中央値は各ランダム化比較試験で6.4~7.4%と幅が広く、「標準的な血糖コントロール」も7.3~9.4%であるため、具体的にどれくらいの血糖コントロールを目指すべきかは明確ではなく、妥当性の高いメタ解析とは言えない印象であるため、改めて他の論文を探して読む必要がありますが、少なくとも低ければ低いほど良いというわけではないとは言えるかなと思います。

7%前後であればまず問題ないかな。

 

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