セレコキシブはナプロキセン・イブプロフェンと比較して心血管イベントを増加させますか?
「Cardiovascular Safety of Celecoxib, Naproxen, or Ibuprofen for Arthritis」
November 13, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1611593
http://www.nejm.org/doi/abs/10.1056/NEJMoa1611593
PECO
P : 心血管疾患の既往がある又はリスクが高い18歳以上の変形性関節症又は関節リウマチの患者(13ヶ国、24081人)
E : セレコキシブ100mg×2/日を使用(8072人)
C : ナプロキセン375mg×2/日(7069人)又はイブプロフェン600mg×3/日(8040人)を使用
O : 心血管死亡・非致死的心筋梗塞・脳卒中の複合アウトカム
チェック項目
・研究デザイン : ランダム化比較試験(非劣性試験)
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : 層別ランダム化が行われている
・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている
・ITT解析されているか? : ITT解析とon-treatment解析が行われている
・結果を覆すほど脱落者がいるか? : 試験期間中68.8%の患者が薬剤を中止し、27.4%の患者が追跡中止となった
・サンプルサイズ : 20000例(パワー90%)
・患者背景 : ほぼ同等
・平均追跡期間 : 34.1±13.4ヶ月
結果
・ハザード比→事前にハザード比1.12および97.5%信頼区間の上限1.33と設定されていたが、イベント発生率が低く、中断率が高かったため97.5%信頼区間の上限1.40に変更されている。
【ITT解析】
・セレコキシブ(2.3%) vs ナプロキセン(2.5%)→ハザード比0.93(95%信頼区間0.76~1.13)P=0.45
・セレコキシブ(2.3%) vs イブプロフェン(2.7%)→ハザード比0.85(95%信頼区間0.70~1.04)P=0.12
【on-treatment解析】
・セレコキシブ(1.7%) vs ナプロキセン(1.8%)→ハザード比0.90(95%信頼区間0.71~1.15)
・セレコキシブ(1.7%) vs イブプロフェン(1.9%)→ハザード比0.81(95%信頼区間0.65~1.02)
※二次アウトカム(ITT解析のみ記載)
〇重大な心血管イベント(一次アウトカム+冠血行再建術又は不安定狭心症による入院又は一過性脳虚血発作)
・セレコキシブ(4.2%) vs ナプロキセン(4.3%)→ハザード比0.97(95%信頼区間0.83~1.12)P=0.64
・セレコキシブ(4.2%) vs イブプロフェン(4.8%)→ハザード比0.87(95%信頼区間0.75~1.01)P=0.06
〇深刻な消化管イベント
・セレコキシブ(1.1%) vs ナプロキセン(1.5%)→ハザード比0.71(95%信頼区間0.54~0.93)P=0.01
・セレコキシブ(1.1%) vs イブプロフェン(1.6%)→ハザード比0.65(95%信頼区間0.50~0.85)P=0.002
※三次アウトカム
〇腎イベント
・セレコキシブ(0.7%) vs ナプロキセン(0.9%)→ハザード比0.79(95%信頼区間0.56~1.12)P=0.19
・セレコキシブ(0.7%) vs イブプロフェン(1.1%)→ハザード比0.61(95%信頼区間0.44~0.85)P=0.004
感想
つい先日も同じような非劣性試験を取り上げましたが(関連記事①)、心血管イベントリスク増加が示唆されているジクロフェナクが含まれていない点・心血管リスクが高い患者が対象となっている点が大きく異なる部分かと思います。
ナプロキセン・イブプロフェンと比較してセレコキシブの非劣性が示されておりますが、やはり脱落者が多い点とイブプロフェン・ナプロキセンは日本で通常使われる用量よりも多い点には注意が必要であり、非劣性マージンは97.5%信頼区間の上限で設定されておりますが結果の記載は95%信頼区間のみである点が非常に引っかかります。
今回もまたセレコキシブは非選択的NSAIDsと比較して心血管イベントリスクに差がないとは結論できないような印象であり、少なくとも積極的におすすめできるような結果ではないように思います。
消化管出血等のリスクの高い患者でセレコキシブを選択するというのはまあ有りかなとは思いますが..
関連記事
①
②