NSAIDsの使用は心血管イベントリスクを増加させますか?
「Vascular and upper gastrointestinal effects of non-steroidal anti-inflammatory drugs: meta-analyses of individual participant data from randomised trials.」
PMID:23726390
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23726390
PECO
P : NSAIDs vs プラセボのRCTに参加した124513人およびNSAIDs vs 他のNSAIDsのRCTに参加した229296人(平均年齢61歳、平均BMI29kg/㎡、平均血圧132/79mmHg)
E : NSAIDsの使用
C : プラセボの使用
O : 重大な血管イベント(非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・血管死亡)、重大な冠動脈イベント(非致死的心筋梗塞・冠動脈疾患死亡)、脳卒中、心不全による入院、死亡、上部消化管合併症
チェック項目
・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されている
・評価者バイアス : 「All trials were reviewed for eligibility by two authors」と記載されている
・出版バイアス : 言語の制約はなく検索されているがシステマティックレビューは行われておらず、出版バイアスについて検討はされていない
・元論文バイアス : 全てRCT、risk of biasについて検討された結果などは記載されていない
・異質性バイアス : フォレストプロットの方向性は比較的一致しているように見える
結果
【コキシブ系】
・重大な血管イベント→率比1.37(95%信頼区間1.14~1.66)P=0.0009、異質性:P=0.09
・重大な冠動脈イベント→率比1.76(95%信頼区間1.31~2.37)P=0.0036、
・脳卒中→率1.09(95%信頼区間0.78~1.52)P=0.64
・心不全→率比2.28(95%信頼区間1.62~3.20)P<0.0001
・総死亡→率比1.22(95%信頼区間1.04~1.44)P=0.0139
・上部消化管合併症→率比1.81(95%信頼区間1.17~2.81)P=0.0070
【ジクロフェナク】
・重大な血管イベント→率比1.41(95%信頼区間1.12~1.78)P=0.0036、異質性:P=0.44
・重大な冠動脈イベント→率比1.70(95%信頼区間1.19~2.41)P=0.0032
・脳卒中→率比1.18(95%信頼区間0.79~1.78)P=0.42
・心不全→率比1.85(95%信頼区間1.17~2.94)P=0.0088
・総死亡→率比1.20(95%信頼区間0.94~1.54)P=0.15
・上部消化管合併症→率比1.89(95%信頼区間1.16~3.09)P=0.0106
【イブプロフェン】
・重大な血管イベント→率比1.44(95%信頼区間0.89~2.33)P=0.14、異質性:P=0.41
・重大な冠動脈イベント→率比2.22(95%信頼区間1.10~4.48)P=0.0253
・脳卒中→率比0.97(95%信頼区間0.42~2.24)P=0.95
・心不全→率比2.49(95%信頼区間1.19~5.20)P=0.0155
・総死亡→率比1.61(95%信頼区間0.90~2.88)P=0.11
・上部消化管合併症→率比3.97(95%信頼区間2.22~7.10)P<0.0001
【ナプロキセン】
・重大な血管イベント→率比0.93(95%信頼区間0.69~1.27)P=0.66、異質性:P=0.12
・重大な冠動脈イベント→率比0.84(95%信頼区間0.52~1.35)P=0.48
・脳卒中→率比0.97(95%信頼区間0.59~1.60)P=0.90
・心不全→率比1.87(95%信頼区間1.10~3.16)P=0.0197
・総死亡→率比1.03(95%信頼区間0.71~1.49)P=0.88
・上部消化管合併症→率比4.22(95%信頼区間2.71~6.56)P<0.0001
感想
上部消化管に対するリスクは当然のことながら、コキシブ系・ジクロフェナク・イブプロフェンでは心血管イベント・冠動脈イベントのリスク増加が示唆されており、コキシブ系では死亡リスクも増加させることが示唆されております。
また、やはり心不全リスク増加については以前読んだ論文同様に一貫しているような印象です。
ただ、仮説生成的なメタ解析であり各種バイアスについては十分に検討されてはいないように思われ妥当性についてはかなり疑問が残り、あまり鵜呑みには出来ないようには思います。リスクが高い患者では注意したいところではありますが。
いずれにしろ論文としてもやや古めのものであるため今後もこのテーマについては改めて調べていきたいと思います。
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