読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

糖質制限ダイエットは危険ですか?

生活習慣

今回は糖質の摂取と死亡の関係について論文を読んでみたいと思います。

 

①「Low-carbohydrate diets and cardiovascular and total mortality in Japanese: a 29-year follow-up of NIPPON DATA80.」

PMID: 25201302

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25201302

 

[PECO]

P : 30歳以上の日本人(9200人、女性56%、年齢中央値51歳)

: エネルギー摂取量のうち糖質からの摂取が68.3%以下

C : 糖質からの摂取が68.4~71.2%

: 心血管疾患死亡・総死亡
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・集団の代表性は? : 全国から無作為抽出された300地区の国民が対象となっており問題ないと思われる
・調整された交絡因子は? : 年齢・食事スコアの十分位数・BMI・高血圧・喫煙・飲酒・血清総コレステロール値・血糖値・血清クレアチニン値・食物繊維の摂取・Na及びKの比・雇用されている状況・性別
・追跡期間 : 29年
 
[結果]
〇心血管疾患死亡
第1十分位数(エネルギーの総摂取量のうち糖質からの摂取が68.4~71.2%)と比較して第10十分位数(17.3%~53.5%)では[調整ハザード比0.78(95%信頼区間0.58~1.05)]、女性のみでは[ハザード比0.60(95%信頼区間0.38~0.94)]。
 
第2~9十分位数では女性のみでも有意な差は見られていない。
 
 
〇総死亡
第1十分位数と比較して、第10十分位数では[調整ハザード比0.87(95%信頼区間0.74~1.02)]、女性のみでは[調整ハザード比0.75(96%信頼区間0.57~0.94)]
 
第2~9十分位数では全て有意な差は見られていない。
 
[コメント]
女性においては糖質の摂取量が少ないほど心血管死亡・総死亡のリスクを下げる事が示唆されているが、第10十分位数のみやけに糖質摂取量の幅が広い点が気になる。
 
 
 
②「Low-carbohydrate, high-protein score and mortality in a northern Swedish population-based cohort. 」
PMID: 22333874 
※抄録のみ
 
[PECO]
P : スウェーデンの男性37639人・女性39680人
E・C : 糖質及びたんぱく質からのエネルギー摂取割合で比較
O : 総死亡
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
 
[結果]
より糖質の摂取が少なく、たんぱく質の摂取が多い群では[男性:ハザード比1.03(95%信頼区間0.88~1.20)、女性ハザード比1.10(95%信頼区間0.91~1.32)]
 
[コメント]
本文が読めないため具体的な糖質やたんぱく質の摂取量については不明だが、より糖質の摂取が少ない群で死亡の増加は見られていない。
 
 
 
③「Low-carbohydrate diets and all-cause and cause-specific mortality: two cohort studies.」
PMID: 20820038
 
[PECO]
P : 心血管・癌・糖尿病のない34~59歳の女性85168人及び40~75歳の男性44548人(米国)
E・C : 糖質及び動物性たんぱく質・植物性たんぱく質の摂取量で比較
O : 総死亡・心血管死亡・癌死亡
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・集団の代表性は? : 医療従事者が対象となっており一般よりも健康に対する意識が高い可能性がある
・調整された交絡因子は? : 年齢・身体活動・BMI・エネルギー摂取・飲酒・高血圧・喫煙・マルチビタミンの使用、女性では月経の状態・閉経後のホルモン療法について調整されている
・追跡期間 : 女性→26年、男性→20年
 
[結果]
〇総死亡
①最も糖質の摂取が少なかった群(E1群) vs 最も糖質の摂取が多かった群(C1群)→調整ハザード比1.12(95%信頼区間1.01~1.24)
②低糖質高動物性たんぱく質(E2群) vs 高糖質低動物性たんぱく質(C2群)→調整ハザード比1.23(95%信頼区間1.11~1.37)
③低糖質高植物性たんぱく質(E3群) vs 高糖質低植物性たんぱく質(C3群)→調整ハザード比0.80(95%信頼区間0.75~0.85)
 
〇心血管疾患死亡
①E1群 vs C1群→調整ハザード比1.08(95%信頼区間0.95~1.22)
②E2群 vs C2群→調整ハザード比1.14(95%信頼区間1.01~1.29)
③E3群 vs C3群→調整ハザード比0.77(95%信頼区間0.68~0.87)
 
〇癌死亡
①E1群 vs C1群→調整ハザード比1.19(95%信頼区間0.99~1.42)
②E2群 vs E2群→調整ハザード比1.28(95%信頼区間1.02~1.60)
③E3群 vs C3群→調整ハザード比0.96(95%信頼区間0.87~1.05)
 
[コメント]
糖質の摂取が少ないと僅かではあるが死亡リスク増加が示唆されているが、動物性たんぱく質の摂取が多いとよりリスクが高く、植物性たんぱく質の摂取が多いとむしろリスクが低い。
糖質制限を行う場合、代わりに何を食べるのかが重要という事なのかもしれない。
 
 
 
④「Low-carbohydrate-high-protein diet and long-term survival in a general population cohort.」
PMID: 17136037
 
[PECO]
P : 20~86歳の健康な成人22944人(ギリシャ
E・C : 糖質及びたんぱく質の摂取量で比較
O : 総死亡
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・集団の代表性は? : ボランティアとして参加した人が対象となっており比較的健康に対する意識が高い可能性がある
・調整された交絡因子は? : 性別・年齢・教育・喫煙・BMI・身体活動・飲酒・総エネルギー摂取・飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸摂取
・平均追跡期間 : 4.9年
 
[結果]
・十分位数で糖質の摂取が多い群→死亡率0.94(95%信頼区間0.89~0.99)
・たんぱく質摂取が多い群→死亡率1.02(95%信頼区間0.98~1.07)
・低糖質/高たんぱく質→死亡率1.08(95%信頼区間1.03~1.13)
※第5十分位数(糖質50g/日・たんぱく質15g/日の摂取)では死亡率1.22(95%信頼区間1.09~1.36)
 
[コメント]
低糖質のみではわずかながら死亡率の低下が見られるが、低糖質及び高たんぱく質の摂取になると死亡率が増加することが示唆されている。たんぱく質の種類については詳しく記載されていない。
 
 

感想

以上の論文を読んだ限りでは死亡のアウトカムに対する結果はまちまちで、明確な結論は出せない印象です。
 
日本人女性では糖質制限により死亡リスクの低下が示唆されていますが、有意差が出ている群が他の群と比べて糖質摂取の割合の幅がかなり広いため差が出やすくなっている可能性もあるのではないかと思います。
 
また、糖質制限ダイエットの謳い文句でたまに「糖質以外なら何をどれだけ食べても大丈夫!」というようなものを目にすることがありますが、糖質の摂取が少なく動物性たんぱく質の摂取が多くなると死亡リスクが増加する可能性がある点に注意が必要です
 
 
いずれにしろ糖質制限を行うことが良いとも悪いとも言えないような結果ではありますが、以前読んだ論文では他のダイエット法と比較して短期間では体重減少に対する効果が大きいものの長期間ではあまり差が見られず、重篤なものではないものの消化器症状や頭痛・脱力感などの生活に影響を与えるような有害事象が起きる懸念もあるため(どの程度の制限を行うのかという問題もありますが)、夏前にどうしても短期間で結果にコミットしたいという場合もあるかとは思いますが、糖質制限ダイエットを積極的にオススメは出来ないかなと思います。
 
個人的な感想ですが、ダイエットに関しては摂取するエネルギーを減らすのにあまり極端な方法を行わない方が良いように思います。
 
 
関連記事