【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

新規経口血糖降下薬 vs インスリン/抗凝固薬と肝傷害/PPI・NSAIDsと急性腎傷害

【私的背景】

今回は抄録しか読めないものの、気になった論文について取り上げてみたいと思う。

 

 

①「Novel oral glucose-lowering drugs compared to insulin are associated with lower risk of all-cause mortality, cardiovascular events and severe hypoglycemia in type 2 diabetes patients」

Accepted manuscript online: 24 January 2017
DOI: 10.1111/dom.12889

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.12889/full

 

【PECO】

: 新規に経口血糖降下薬が開始された2型糖尿病患者(スウェーデン)

: 新規経口血糖降下薬であるDPP-4阻害薬またはSGLT-2阻害薬の使用(16304例)

: インスリンの使用(16306例)

: 総死亡、心血管疾患、低血糖

 

【チェック項目】

・研究デザイン : コホート研究であると思われる

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている

・追跡期間中央値 : E群→1.51年間、C群→1.53年間

 

【結果】

〇新規経口血糖降下薬 vs インスリン

・総死亡→ハザード比 0.56(95%信頼区間 0.49~0.64)

・心血管疾患→ハザード比 0.85(95%信頼区間 0.73~0.99)

・低血糖→ハザード比 0.26(95%信頼区間 0.12~0.57)

 

〇ダパグリフロジン vs インスリン

・総死亡→ハザード比 0.44(95%信頼区間 0.28~0.70)

・心血管疾患→ハザード比 0.51(95%信頼区間 0.30~0.86)

 

〇DPP-4阻害薬 vs インスリン

・総死亡→ハザード比0.59(95%信頼区間 0.51~0.67)

・心血管疾患→ハザード比0.87(95%信頼区間 0.75~1.01)

 

【感想】

インスリンとの比較では2型糖尿病の患者において、新規経口血糖降下薬の使用が総死亡・心血管疾患のリスクを低下させることが示唆されております。

ただし、そもそもインスリンが処方されている群の方がより高血糖が問題となっている患者が多い可能性等も考えられるため、この結果のみで新規経口血糖降下薬が優れていると結論することはできませんが、特にSGLT-2阻害薬については今後の研究に期待したいところです。

 

 

②「Prospective study of oral anticoagulants and risk of liver injury in patients with atrial fibrillation」

Heart doi:10.1136/heartjnl-2016-310586

http://heart.bmj.com/content/early/2017/01/18/heartjnl-2016-310586.abstract

 

【PECO】

: 新規に経口抗凝固薬が開始された心房細動患者(113717例、平均年齢70歳、女性39%)

: DOACの使用

: ワルファリンの使用

: 肝傷害による入院

 

【チェック項目】

・研究デザイン : コホート研究であると思われる

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・追跡期間中央値 : 12ヶ月間

 

【結果】

・ダビガトラン(4.0/1000人年) vs ワルファリン(9.0/1000人年)→調整ハザード比 0.57(95%信頼区間 0.46~0.71)

・リバーロキサバン(6.6/1000人年) vs ワルファリン(9.0/1000人年)→調整ハザード比 0.88(95%信頼区間 0.75~1.03)

・アピキサバン(5.6/1000人年) vs ワルファリン(9.0/1000人年)→調整ハザード比 0.70(95%信頼区間 0.50~0.97)

・リバーロキサバン vs ダビガトラン→調整ハザード比 1.56(95%信頼区間 1.22~1.99)

 

【感想】

やはりワルファリンでは肝傷害に注意が必要ですが、DOAC間でも肝傷害のリスクに差がある可能性があり、高齢者に対するリバーロキサバンの使用では注意が必要かもしれません。

 

 

③「Proton pump inhibitors and traditional nonsteroidal anti-inflammatory drugs and the risk of acute interstitial nephritis and acute kidney injury.」

PMID: 22887960

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22887960

 

【PECO】

: 【症例】急性間質性腎炎(AIN)または急性腎傷害(AKI)を発症した患者

【対照】年齢、性別、一般開業医についてマッチング

: PPIおよびNSAIDsの使用あり

: 使用なし

: 急性間質性腎炎

 

【チェック項目】

・研究デザイン : 症例対照研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

 

【結果】

〇急性間質性腎炎

・PPI単独→調整オッズ比 3.20(95%信頼区間 0.80~12.79)

・NSAIDs単独→調整オッズ比 1.90(95%信頼区間 0.65~5.51)

 

※二次アウトカム

〇急性腎傷害

・PPI単独→調整オッズ比 1.05(95%信頼区間 0.97~1.14)

・NSAIDs単独→オッズ比 1.31(95%信頼区間 1.25~1.37)

・PPI+NSAIDsの併用→オッズ比 1.33(95%信頼区間 1.07~1.64)

 

【感想】

二次アウトカムではありますがPPI単独では急性腎傷害との関連は見られず。

前回取り上げたコホート研究ではPPIの使用が急性腎傷害リスクを増加させることが示唆されておりましたが、併用されることの多いNSAIDsが原因である可能性もあるのかもしれません。

いずれにしろ、NSAIDsの使用による急性腎傷害との関連も示唆されておりますが、NSAIDsの長期使用による副作用に対して薬剤が追加され、その薬剤によりまた副作用が起きるという事を考えると、漫然投与は極力避けるべきだと月並みながら思います。

 

関連記事