【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

降圧薬は何を選択するべきですか?

【私的背景】

前回から引き続き、降圧薬の選択について論文を読んでみたいと思う。

 

 

「First-line drugs for hypertension.」

PMID: 19588327 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19588327

※抄録のみ

 

【PECO】

: 57のランダム化比較試験に参加した58040例(70%以上が血圧> 140/90mmHg)

: チアジド系利尿薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、α遮断薬の使用

: プラセボまたは治療なし

: 死亡、脳卒中、冠動脈疾患、心血管イベント、収縮期/拡張期血圧の低下、副作用による中止

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ランダム化比較試験のシステマティックレビュー&メタ解析(コクラン)

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

 

【結果】

①チアジド系利尿薬

・死亡→リスク比 0.89(95%信頼区間 0.83~0.96)

脳卒中→リスク比 0.63(95%信頼区間 0.57~0.71)

・冠動脈疾患→リスク比 0.84(95%信頼区間 0.75~0.95)

※低用量チアジド→リスク比 0.72(95%信頼区間 0.61~0.84)、高用量チアジド→リスク比 1.01(95%信頼区間 0.85~1.20)

・心血管イベント→リスク比 0.70(95%信頼区間 0.66~0.76)

 

②β遮断薬

・死亡→リスク比 0.96(95%信頼区間 0.86~1.07)

脳卒中→リスク比 0.83(95%信頼区間 0.72~0.97)

・冠動脈疾患→リスク比 0.90(95%信頼区間 0.78~1.03)

・心血管イベント→リスク比 0.89(95%信頼区間 0.81~0.98)

 

③ACE阻害薬

・死亡→リスク比 0.83(95%信頼区間 0.72~0.95)

脳卒中→リスク比 0.65(95%信頼区間 0.52~0.82)

・冠動脈疾患→リスク比 0.81(95%信頼区間 0.70~0.94)

・心血管イベント→リスク比 0.76(95%信頼区間 0.67~0.85)

 

④Ca拮抗薬

・死亡→リスク比 0.86(95%信頼区間 0.68~1.09)

脳卒中→リスク比 0.58(95%信頼区間 0.41~0.84)

・冠動脈疾患→リスク比 0.77(95%信頼区間 0.55~1.09)

・心血管イベント→リスク比 0.71(95%信頼区間 0.57~0.87)

 

ARB、α遮断薬

・ランダム化比較試験は見つからなかった

 

【コメント】

やはり降圧薬の第一選択としては、チアジド系利尿薬が考慮されるのが好ましい印象。

かなり古い論文であるため、今ならARBのランダム化比較試験も探せばそれなりに見つかるだろう。また後程調べてみたいと思う。

 

 

以下はこれまでに取り上げた論文を。

 

→64~85歳の高血圧症患者において、ACE阻害薬(エナラプリル)は利尿薬(ヒドロクロロチアジド)と比較して、心血管イベント・全死亡のリスクを減少。

 

 

→高血圧を有する冠動脈疾患と診断された患者において、ARB(カンデサルタン)は他の降圧薬(主にACE阻害薬)と比較して、心血管イベントについて有意な差はみられていない。

 

 

→冠動脈疾患のリスク因子を有する高血圧症患者において、チアジド系利尿薬(クロルタリドン)は、ACE阻害薬(リシノプリル)・Ca拮抗薬(アムロジピン)と比較して、致死性冠動脈疾患・非致死的心筋梗塞について有意な差はみられていない。

 

 

論文を読むほどわからなくなりますね...。

SPRINT試験ではチアジド系利尿薬が第一選択だったことを考えると、個人的には推したくなりますが、チアジド系利尿薬・ACE阻害薬・ARB・Ca拮抗薬では、有効性という部分ではそれほど大きな差はないのかもしれません。