【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

デグルデグ vs グラルギン!

【私的背景】

抄録は目にしてはいたものの、しばらく放置していた論文を読んでみたいと思う。

 

「Efficacy and Safety of Degludec versus Glargine in Type 2 Diabetes.」

PMID: 28605603 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28605603

 

PECO

: 1剤以上の経口または注射の血糖降下薬による治療が行われている、心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者(20ヶ国438施設、7637例、心血管疾患の既往ありまたは中等度のCKD 85.2%、平均年齢 65.0歳、平均糖尿病期間 16.4年、平均HbA1c 8.4±1.7%)

: 通常ケアにインスリンデグルデグ1日1回を夕食後から寝る前の間に追加(3818例)

: 通常ケアのインスリングラルギン1日1回を夕食後から寝る前の間に追加(3819例)

: 心血管死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合アウトカム

 

・心血管イベントリスクが高い

①50歳以上でいずれかの心血管疾患および腎疾患を合併している→心筋梗塞の既往あり、脳卒中またはTIAの既往あり、冠動脈・頸動脈または末梢動脈の再建術が行われている、冠動脈・頸動脈または下肢動脈に50%以上の狭窄が見られる、症候性冠動脈疾患を有する、無症候性の心血管虚血を有する、慢性心不全を有する、eGFR 30~59のCKD

②60歳以上で①のほかに以下のいずれかのうち1つ以上に該当する→微小アルブミン尿症またはタンパク尿、左室肥大のある高血圧症、左室収縮期または拡張期機能不全、足関節上腕血圧比 <0.9

 

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験(非劣性試験)

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 明確

・ランダム化されているか? : されている

・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている

・解析方法は? : ITT解析が行われている

・追跡率 : 98.1%

・サンプルサイズ : 7500例(パワー91%)

・追跡期間中央値 : 観察期間→1.99年間、暴露期間→1.83年間

・患者背景 : ほぼ同等

 

結果

〇非劣性マージンは95%信頼区間の上限が1.3

E群(8.5%) vs C群(9.3%)→ハザード比 0.91(95%信頼区間 0.78~1.06)P<0.001

 

※複合アウトカムの各項目

・心血管死亡

E群(3.6%) vs C群(3.7%)→ハザード比 0.96(95%信頼区間 0.76~1.11)P=0.71

・非致死的心筋梗塞

E群(3.8%) vs C群(4.4%)→ハザード比 0.85(95%信頼区間 0.68~1.06)P=0.15

・非致死的脳卒中

E群(1.9%) vs C群(2.1%)→ハザード比 0.90(95%信頼区間 0.65~1.23)P=0.50

 

※二次アウトカム

・平均空腹時血糖(24ヶ月時点)

E群 : 128±56mg/dl、C群 : 136±57mg/dl

・重症低血糖

E群(4.9%) vs C群(6.6%)→ハザード比 0.60(95%信頼区間 0.48~0.76)P<0.001

・夜間の重症低血糖

E群(1.0%) vs C群(1.9%)→ハザード比 0.47(95%信頼区間 0.31~0.73)P<0.001

 

感想

デグルデグのグラルギンに対する非劣性が証明され、更にグラルギンと比較して重症低血糖のリスクが低い事が示されています。

しかし、サンプルサイズの項に7500例を5年間追跡と記載されておりますが、実際の観察期間は中央値で1.99年間であり、今回の一次アウトカムを見るには期間が短い印象があります。

グラルギンとプラセボとの比較を見てみると(PMID:22686416 Basal insulin and cardiovascular and other outcomes in dysglycemia. - PubMed - NCBI )、追跡期間の中央値が6.2年間であり、それと比較しても期間が非常に短く、少なくとも現時点では長期的な使用についてグラルギンと比較して、心血管系に対する安全性について問題ないとは言えないのではないかと思います。

また、結果に大きな影響はないようには思いますが、per-protcol解析等ではなく、差が出にくいITT解析が行われている点も気になるところではあります。

しかし、二次アウトカムではありますが、重症低血糖のリスクが低いというのはなかなか魅力的なようにも思います。今後、使い分けのポイントになるのかもしれません。

 

ちなみに、前述のグラルギンとプラセボとの比較では、心血管系の複合アウトカムについて有意な差は見られていないようです...。

勿論、細小血管障害の予防や高血糖昏睡などが問題となる場合は意義があるかもしれませんが、改めてインスリンを導入することの意義を考える必要があるようにも思います。

グラルギン vs プラセボについてはまた後程詳しく読んでみたいと思います。

 

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