【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

80歳以上の患者は降圧治療を行う事で長生きできますか?

「Longitudinal Trends in Hypertension Management and Mortality Among Octogenarians」

HYPERTENSIONAHA.116.07246 Published online before print May 9, 2016, doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.116.07246
 

PECO

P : 自宅で生活している50歳以上の成人(英国、24699人)
E : 収縮期血圧が、①<110mmHg②110~119mmHg ③130~139mmHg ④140~149mmHg ⑤150~159mmHg ⑥160~169mmHg ⑦>169mmHg
C : 収縮期血圧が120~129mmHg
O : 総死亡・心血管死亡
 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究
・交絡因子の調整は? : 年齢・性別・BMI・長期間の疾患・コレステロール値・降圧治療・喫煙・身体活動・うつ病・拡張期血圧・社会階級
・集団の代表性は? : 英国民が対象となっている縦断研究調査のデータが使用されており、大きな問題はないと思われる
・平均追跡期間 : 7年間
 

結果

[80歳台・全体]
・心血管死亡
①<110mmHg→調整ハザード比1.40(95%信頼区間0.71~3.51)
②110~119mmHg→調整ハザード比1.01(95%信頼区間0.74~2.59)
③130~139mmHg→調整ハザード比1.01(95%信頼区間0.70~1.45)
④140~149mmHg→調整ハザード比0.97(95%信頼区間0.67~1.41)
⑤150~159mmHg→調整ハザード比1.07(95%信頼区間0.71~1.62)
⑥160~169mmHg→調整ハザード比1.05(95%信頼区間0.68~1.62)
⑦>169mmHg→調整ハザード比1.03(95%信頼区間0.62~1.71)
 
・総死亡
①→調整ハザード比1.43(95%信頼区間0.93~2.20)
②→調整ハザード比1.28(95%信頼区間0.96~1.69)
③→調整ハザード比1.06(95%信頼区間0.85~1.33)
④→調整ハザード比0.98(95%信頼区間0.77~1.25)
⑤→調整ハザード比0.90(95%信頼区間0.66~1.22)
⑥→調整ハザード比0.86(95%信頼区間0.63~1.17)
⑦→調整ハザード比0.88(95%信頼区間0.59~1.32)
 
[80歳台・降圧治療例のみ]でもほぼ同じような結果。
[50~79歳・全体][50~79歳・降圧治療例のみ]でもほぼ全て有意な差は見られていない。
※[50~79歳・全体]の収縮期血圧160~169mmHgにおいて調整ハザード比1.45(95%信頼区間1.03~2.03)
 

感想

80歳台の総死亡を見ると収縮期血圧が120~129mmHgと比較すると120mmHg未満で増加傾向、140mmHg以上で減少傾向が見られるもののほぼ横ばいでありいずれにしろ有意な差は見られておらず、後期高齢者・超高齢者に対して降圧治療を行う事で死亡が延長できるかどうかについては不明です。
このコホート研究のみで後期高齢者・超高齢者に対する降圧治療は効果がないなどと結論することはできませんが、例えば80歳を超えるような患者が降圧薬の減量又は中止を希望しているような場合に判断するための材料の一つになるかなと思います。
 
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