喘息の小児ではICS+LABAは安全に使えますか?
今回は小児の喘息に対するICS+LABAの使用に関する論文を。
①「Safety of Adding Salmeterol to Fluticasone Propionate in Children with Asthma.」
PMID:27579634
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27579634
※抄録のみ
[PECO]
P : 4~11歳で1年以内に喘息の急性憎悪があり、毎日の薬物治療が必要な患者(6208人)
E : フルチカゾンプロピオン酸エステル+サルモテロール
C : フルチカゾン単独
O : 安全性→重篤な喘息関連イベントの初発(死亡・気管挿管・入院)、有効性→全身性ステロイドによる治療が必要な喘息の急性憎悪の初発
[チェック項目]
・研究デザイン : ランダム化比較試験(非劣性試験)
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・追跡期間 : 26週間
[結果]
・重篤な喘息関連イベント(非劣性マージンは95%信頼区間の上限2.675)
E群(27例) vs C群(21例)→ハザード比1.28(95%信頼区間0.73~2.27)P=0.006
・喘息急性憎悪
E群(8.5%) vs C群(10.0%)→ハザード比0.86(95%信頼区間0.73~1.01)
[コメント]
ICS単独に対するICS+LABAの非劣性が示されておりますが、そもそも約2.7倍までのリスク増加を許容するというのは妥当なんでしょうかね?
急性憎悪についてはギリギリ有意差は見られておらず、この非劣性試験においては少なくとも小児についてICS+LABAの使用が推奨されるといったものではないように思います。
②「Addition of long-acting beta2-agonists to inhaled corticosteroids for chronic asthma in children.」
PMID:26594816
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26594816
※抄録のみ
[PECO]
P : 小児または青年期の喘息患者(平均年齢11歳)
E : ICS+LABA
C : ICS単独
O : 経口ステロイドによる治療が必要な急性憎悪
[チェック項目]
・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 2人の著者が独立して評価している
[結果]
①ICS+LABAとICS単独でのICSの用量が同じ
・急性増悪→リスク比0.95(95%信頼区間0.70~1.28)
※二次アウトカム
・入院→リスク比1.74(95%信頼区間0.90~3.36)
・重篤な有害事象→リスク比1.17(95%信頼区間0.75~1.85)
・薬剤の中止→リスク比0.80(95%信頼区間0.67~0.94)
②ICS+LABAと比較してICS単独ではICSが倍量
・急性増悪→リスク比1.69(95%信頼区間0.85~3.32)
※二次アウトカム
・入院→リスク比1.90(95%信頼区間0.65~5.54)
・重篤な有害事象→リスク比1.54(95%信頼区間0.81~2.94)
・薬剤の中止→リスク比0.96(95%信頼区間0.67~1.37)
[コメント]
ICS単独と比較してICS+LABAでは急性増悪について有意な差は見られず。
やはりICS+LABAが推奨されるような結果ではなく、吸入薬による治療が開始される場合などはICS単独が優先されるべきではないかと考えます。
ただやはり小児においてもICS単独のみではコントロール不良な場合がしばしばありますが、その際もまずは吸入が適切に行えているかの確認を行う必要があります。
初めはしっかり吸入できていたのに時間が経つと吸入の仕方が雑になっている場合もあったりするので定期的な確認も大事。