【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

インダカテロール+グリコピロニウム vs サルメテロール+フルチカゾン!!

「Indacaterol–Glycopyrronium versus Salmeterol–Fluticasone for COPD」

May 15, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1516385
 

PECO

P : modified Medical Research Council scale(息切れスケール)がGrade 2(平地を急ぎ足で移動する、又は穏やかな上り坂を歩く場合に息切れを感じる)以上で、FEV1(1秒量)が25%~60%及びFCV(努力性肺活量)が0.70以下であり、過去1年間に1回以上COPDの憎悪により全身性ステロイド又は抗菌薬の治療を受けている40歳以上の患者(43ヶ国、3362人)
E : インダカテロール110μg+グリコピロニウム50μgを1日1回吸入
C : サルメテロール50μg+フルチカゾン500μgを1日2回吸入
O : COPD憎悪の年率
 

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験(非劣性試験)
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : 二重盲検が行われている
・統計解析は? :  per-protocol解析が行われている
・追跡率 : 91.7%
・サンプルサイズ : 3332人(パワー95%以上)
・追跡期間 : 52週
・患者背景 : 特に気になるような偏りは見られない、平均年齢64.6±7.8歳・男性76.1%・COPDの期間7.3±5.4年
 

結果

[一次アウトカム]
・COPD憎悪の年率 
※非劣性マージンは95%信頼区間の上限が1.15
E群(3.59) vs C群(4.03)→率比0.89(95%信頼区間0.83~0.96)P=0.003、NNT=228人/年
 
[二次アウトカム]
・初回の急性憎悪までの期間
E群(中央値71日) vs C群(中央値51日)→ハザード比0.84(95%信頼区間0.78~0.91)P<0.001
 
・中等度~重度の急性憎悪の年率
E群(0.98) vs C群(1.19)→率比0.83(95%信頼区間0.75~0.91)P<0.001
 
・初回の中等度~重度の急性憎悪までの期間
E群(127日) vs C(87日)→ハザード比0.78(95%信頼区間0.70~0.86)P<0.001
 
・初回の重度の急性憎悪までの期間
→ハザード比0.81(95%信頼区間0.66~1.00)P=0.046
 
・重度の急性憎悪の年率
E群(0.15) vs C群(0.17)→率比0.87(95%信頼区間0.69~1.09)P=0.23
 
[安全性]
・重篤な有害事象については同程度
・肺炎の発症 : E群(3.2%) vs C群(4.8%) P=0.02
 

感想

以前読んだメタ解析(PMID: 26235837)ではLAMA+LABAはICS+LABAと比較すると若干有利な印象でしたが、こちらの非劣性試験では非劣性を示すだけでなくCOPDの急性憎悪の年率を有意に低下させており、急性憎悪までの期間も延長させる事が示唆されております。
 
ただ一次アウトカムについてはあまり大きな差ではなく(NNTが間違いでなければですが…)、デバイスの操作性や心血管リスク等も考慮する必要はあるかと思います。
 
チオトロピウムについては以前も取り上げましたが、LAMA・LABAが心血管リスク増加と関連するという報告もあるため(PMID: 23689820 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=23689820 )、このテーマについてもまた改めて調べてみたいと思います。
 
 
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