【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高血圧患者ではRA系阻害薬で心房細動の再発が防げる?

「Prevention of atrial fibrillation with renin-angiotensin system inhibitors on essential hypertensive patients: a meta-analysis of randomized controlled trials.」

PMID: 26668582
 

PECO

: 洞調律は正常だが、心電図による心房細動の兆候があるか又は過去6ヶ月の間に発作性心房細動を発症した収縮期血圧≧140mmHg・拡張期血圧≧90mmHgの患者42892人
E : ACE阻害薬又はARBの使用
C : その他の降圧薬(β遮断薬・Ca拮抗薬)又はプラセボの使用
O : 心房細動の新規発症又は再発
 

チェック項目

・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「2 investigators independently read the titles, abstracts and full texts, using the following steps」と記載されている。
・出版バイアス : Funnel plotを用いて検討されているが、「publication bias was possible due to asymmetry」と記載されている。
・元論文バイアス : 全てRCT、Table2を見ると大きな問題はないように思われる。
・異質性バイアス : 「I2 statistic of 25%-50% were considered as low heterogeneity, those with an I2 statistic of 50%-75% had moderate heterogeneity, and those with an I2 statistic of .75% had a high degree of heterogeneity」と記載されている。ブロボグラムの方向性は視覚的に一致している。
・追跡期間 : 3~73.2ヶ月
 
 

結果

・3ヶ月間における心房細動の再発
E群(7.2%)  vs C群(14.9%)→リスク比0.49(95%信頼区間0.34~0.72)P<0.003、I2=0%、NNT=13人
・長期間の追跡における心房細動の再発
E群(15.8%) vs C群(33.6%)→リスク比0.47(95%信頼区間0.39~0.57)P<0.00001、I2=0%、NNT=6人
・長期間の追跡における心房細動の新規発症
E群(3.8%) vs C群(4.8%)→リスク比0.86(95%信頼区間0.69~1.07)P=0.19、I2=81%、NNT=100人
 
※サブグループ解析
・長期間における心房細動の再発
①ACEI/ARB(16.0%) vs Ca拮抗薬(33.2%)→リスク比0.48(95%信頼区間0.40~0.58)P<0.00001、I2=0%、NNT=6人
②ACEI/ARB(14.3%) vs β遮断薬(37.1%)→リスク比0.39(95%信頼区間0.20~0.74)P=0.005、NNT=5人
 
・長期間の追跡における心房細動の新規発症
①ACEI/ARB(5.0%) vs Ca拮抗薬(5.3%)→リスク比0.96(95%信頼区間0.74~1.24)P=0.75、I2=76%、NNT=334人
②ACEI/ARB(3.9%) vs β遮断薬(4.5%)→リスク比0.87(95%信頼区間0.62~1.21)P=0.40、I2=86%、NNT=167人
 
※二次アウトカム
・有害事象による中断
E群(1.9%) vs C群(4.2%)→リスク比0.44(95%信頼区間0.21~0.89)P=0.02、I2=0%
・末梢性浮腫(有害事象)
E群(13.5%) vs C群(27.0%)→リスク比0.47(95%信頼区間0.42~0.53)P<0.00001、I2=57%
・めまい
E群(19.0%) vs C群(18.7%)→リスク比1.11(95%信頼区間1.02~1.20)P=0.01、I2=51%
 

感想

高血圧患者において発作性心房細動の既往がある場合、RA系阻害薬は他の降圧薬と比較して心房細動の再発を抑える事が示されているが、心房細動の兆候がある患者に対しては心房細動の新規発症を減少させる傾向があるものの有意な差は見られていません。
 
心房細動の再発については約5割ほどリスクを下げ、NNTを見ても比較的効果は大きいように思いますが、出版バイアスもあるために割り引いて考える必要があるかもしれません。
 
 
 
ちなみにもう一報RA系阻害薬と心房細動の新規発症・再発について検討されているメタ解析を見つけたので紹介させていただきます。
 
「Effects of RAAS Blockers on Atrial Fibrillation Prophylaxis: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.」
PMID: 26817632
 
こちらは抄録しか読めまないため結果のみ。
・心房細動の発症→オッズ比0.76(95%信頼区間0.68~0.85)
・収縮性心不全を有する患者の心房細動の発症→オッズ比0.51(95%信頼区間0.30~0.85)
・心房細動の新規発症→オッズ比0.81(95%信頼区間0.67~1.00)
・高血圧を有する患者の心房細動の再発→オッズ比0.46(95%信頼区間0.33~0.62)
・Ca拮抗薬と比較した心房細動の再発→オッズ比0.61(95%信頼区間0.44~0.84)
・β遮断薬と比較した心房細動の再発→オッズ比0.59(95%信頼区間0.44~0.80)
 
 
以上ですが、発作性心房細動の既往がある高血圧患者に対して降圧治療を行う場合、RA系阻害薬を使用する事が勧められるのではないかと思います。