【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

消化管出血の発生後でも抗血栓薬を再開した方が良いですか?

「Stroke and recurrent haemorrhage associated with antithrombotic treatment after gastrointestinal bleeding in patients with atrial fibrillation: nationwide cohort study」

BMJ 2015;351:h5876
 

PECO

P : 抗血栓薬による治療を受けていたが消化管出血により入院し、その後退院した心房細動を有する患者(4602人、デンマーク)

E : 抗血栓薬を再開する

C : 再開しない

O : 総死亡・血栓塞栓症・大出血・消化管出血の再発

 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・交絡因子の調整は? : CHA2DS2-VAScスコアの因子及び90日のブランク期間中に使用した抗血小板薬について調整されている
・集団の代表性は? : デンマークにおける一般診療等のデータが使用されており大きな問題はないと思われる
・追跡期間中央値 : 2年
・患者背景 : 平均年齢78.3歳、女性45.3%、平均CHADS2スコア2.1点
 

結果

[総死亡]
・抗凝固薬のみ→ハザード比0.39(95%信頼区間0.34~0.46)
・抗血小板薬のみ→ハザード比0.76(95%信頼区間0.68~0.86)
・抗凝固薬+抗血小板薬→ハザード比0.41(95%信頼区間0.32~0.52)
・アスピリン+ADP阻害薬→ハザード比0.88(95%信頼区間0.57~1.36)
 
[血栓塞栓症]
・抗凝固薬のみ→ハザード比0.41(95%信頼区間0.31~0.54)
・抗血小板薬のみ→ハザード比0.76(95%信頼区間0.61~0.95)
・抗凝固薬+抗血小板薬→ハザード比0.54(95%信頼区間0.36~0.82)
・アスピリン+ADP阻害薬→ハザード比0.79(95%信頼区間0.34~1.84)
 
[大出血]
・抗凝固薬のみ→ハザード比1.37(95%信頼区間1.06~1.77)
・抗血小板薬→ハザード比1.25(95%信頼区間0.96~1.62)
・抗凝固薬+抗血小板薬→ハザード比1.44(95%信頼区間1.00~2.08)
・アスピリン+ADP阻害薬→ハザード比1.36(95%信頼区間0.54~3.43)
 
[消化管出血の再発]
・抗凝固薬のみ→ハザード比1.22(95%信頼区間0.84~1.77)
・抗血小板薬→ハザード比1.19(95%信頼区間0.82~1.74)
・抗凝固薬+抗血小板薬→ハザード比1.34(95%信頼区間0.79~2.28)
・アスピリン+ADP阻害薬→ハザード比0.58(95%信頼区間0.08~4.30)
 
※PPI併用群のサブグループ解析でもほぼ同じような結果になっている
 

感想

併用薬や併存症等の調整について十分行われていないように感じるため注意が必要だが、やはり消化管出血後でも抗血栓薬を再開した方が死亡リスク減らせる(死亡を先延ばしにできる)ことが示唆されている。

ただし、アスピリンとADP阻害薬の併用では死亡や血栓塞栓症について有意な差はみられていない。