【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

NOACとワルファリンはどちらが良いですか?

「Comparative effectiveness and safety of non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin in patients with atrial fibrillation: propensity weighted nationwide cohort study」

BMJ 2016; 353 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i3189 (Published 16 June 2016)
 

PECO

P : 非弁膜性心房細動のため抗凝固薬が開始された患者(デンマーク、61678人)
E : NOAC(アピキサバン5mg×2/日・ダビガトラン150mg×2/日・リバーロキサバン20mg×1/日)の使用
C : ワルファリンの使用
O : 有効性→虚血性脳卒中・虚血性脳卒中または全身性塞栓症・死亡・虚血性脳卒中または全身性塞栓症または死亡
安全性→全ての出血・頭蓋内出血・大出血
 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・交絡因子の調整は? : IPTW法により解析されている。(年齢・性別・虚血性脳卒中または全身性塞栓症または一過性脳虚血性発作・血管疾患・高血圧・糖尿病・癌・アスピリン・β遮断薬・NSAIDs・スタチン・CHA2DS2-VAScスコア・HAS-BLEDスコア)
・集団の代表性は? : 一般診療のデータベースが基になっており、大きな問題はないと思われる。
・追跡期間 : 平均1.9年間(アピキサバン群は平均0.9年間)
 

結果

〇有効性
[虚血性脳卒中・全身性塞栓症]
・アピキサバン:E群(3.92/100人年) vs C群(3.25/100人年)→ハザード比1.08(95%信頼区間0.91~1.27)
・ダビガトラン:E群(3.72/100人年) vs C群(3.25/100人年)→ハザード比1.17(95%信頼区間0.89~1.54)
・リバーロキサバン:E群(2.79/100人年) vs C群(3.25/100人年)→ハザード比0.83(95%信頼区間0.69~0.99)、NNT=218人/年
 
[虚血性脳卒中]
・アピキサバン:E群(3.72/100人年) vs C群(3.01人/年)→ハザード比1.11(95%信頼区間0.94~1.30)
・ダビガトラン:E群(3.68/100人年) vs C群(3.01/100人年)→ハザード比1.24(95%信頼区間0.94~1.64)
・リバーロキサバン:E群(2.79/100人年) vs C群(3.01/100人年)ハザード比0.86(95%信頼区間0.72~1.04)
 
[死亡]
・アピキサバン:E群(5.01/100人年) vs C群(7.41/100人年)→ハザード比0.65(95%信頼区間0.56~0.75)、NNT=42人/年
・ダビガトラン:E群(4.62/100人年) vs C群(7.41/100人年)→ハザード比0.63(95%信頼区間0.48~0.82)、NNT=36人/年
・リバーロキサバン:E群(7.02/100人年) vs C群(7.41/100人年)→ハザード比0.92(95%信頼区間0.82~1.03)
 
[虚血性脳卒中・全身性塞栓症・死亡]
・アピキサバン:E群(8.71/100人年) vs C群(10.28/100人年)→ハザード比0.79(95%信頼区間0.70~0.88)、NNT=64人/年
・ダビガトラン:E群(7.92/100人年) vs C群(10.28/100人年)→ハザード比0.78(95%信頼区間0.64~0.94)、NNT=43人/年
・リバーロキサバン:E群(9.38/100人年) vs C群(10.28/100人年)→ハザード比0.87(95%信頼区間0.79~0.96)、NNT=112人/年
 
〇安全性
[全ての出血]
・アピキサバン:E群(3.13/100人年) vs C群(4.71/100人年)→ハザード比0.63(95%信頼区間0.53~0.76)、ワルファリンのNNH=64人/年
・ダビガトラン:E群(2.85/100人年) vs C群(4.71/100人年)→ハザード比0.61(95%信頼区間0.51~0.74)、ワルファリンのNNH=54人/年
・リバーロキサバン:E群(4.82/100人年) vs C群(4.71/100人年)→ハザード比0.99(95%信頼区間0.86~1.84)
 
[大出血]
・アピキサバン:E群(2.29/100人年) vs C群(3.59/100人年)→ハザード比0.61(95%信頼区間0.49~0.75)、ワルファリンのNNH=77人/年
・ダビガトラン:E群(2.04/100人年) vs C群(3.59/100人年)→ハザード比0.58(95%信頼区間0.47~0.71)、ワルファリンのNNH=65人
・リバーロキサバン:E群(4.83/100人年) vs C群(3.59/100人年)→ハザード比1.06(95%信頼区間0.91~1.23)
 
[頭蓋内出血]
・アピキサバン:E群(0.40/100人年) vs C群(0.55/100人年)→ハザード比0.72(95%信頼区間0.42~1.24)
・ダビガトラン:E群(0.22/100人年) vs C群(0.55/100人年)→ハザード比0.40(95%信頼区間0.25~0.65)、ワルファリンのNNH=303人/年
・リバーロキサバン:E群(0.31/100人年) vs C群(0.55/100人年)→ハザード比0.56(95%信頼区間0.34~0.94)、ワルファリンのNNH=417人
 

感想

アピキサバン・ダビガトランでは虚血性脳卒中や全身性塞栓症で有意な差は見られていないものの死亡リスクの低下が示唆されおりますが、これはやはり出血の副作用に関連するものなのでしょうか?
同じNOACでもリバーロキサバンでは虚血性脳卒中や全身性塞栓症では有意差があるものの、死亡や頭蓋内以外の出血では有意な差が見られていないのは1日の用量が1回と2回の違いに起因するものなのでしょうか?
 
疑問形ばかりで申し訳ありませんが、本文には「Warfarin is only available in 2.5 mg dose tablets in Denmark. 」と書いてあり日本とデンマークとではワルファリンの用量調節の仕方に違いがある可能性があり、その点については注意が必要かもしれません。
 
ただやはり出血を考慮するとNOACが有利でしょうか。
また後日、ポリファーマシーとNOAC・ワルファリンについての論文を読んでみたいと思います。