【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

心房細動を有するステント留置後の患者ではワルファリンよりもダビガトランの方が出血リスクが低いですか?

【私的背景】

PCI施行後の心房細動患者では、抗血小板作用を持つワルファリンではなくNOACという選択でも妥当なのかどうか気になるところ。

 

「Dual Antithrombotic Therapy with Dabigatran after PCI in Atrial Fibrillation」

August 27, 2017DOI: 10.1056/NEJMoa1708454

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1708454?query=featured_home#t=articleResults

 

PECO

: 18歳以上でPCI施行後の非弁膜性心房細動患者(41ヶ国2725例、平均年齢 70.8歳、急性冠症候群 50.5%、薬剤溶出性ステントの使用 82.6%)

: ダビガトラン(110mg/日または150mg/日)+P2Y阻害薬(クロピドグレルまたはチカグレロル)、米国以外の地域では80歳以上または日本では70歳以上でダビガトラン110mg/日+P2Y阻害薬

: ワルファリン(INR 2.0~3.0で管理)+P2Y阻害薬+アスピリン

: 大出血または臨床に関連した非大出血の初発

 

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験(非劣性試験)

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 明確

・ランダム化されているか? : されている

・盲検化されているか? : PROBE法がおこなわれている

・Per protocol解析が行われているか? : ITT解析のみ

・追跡率 : 98.3%

・サンプルサイズ : 2500例(パワー83.6%)

・患者背景 : ほぼ同等

・追跡期間 : 14ヶ月

 

結果

※非劣性マージンは95%信頼区間の上限が1.38

・ダビガトラン 110mg/日+P2Y阻害薬(15.4%) vs ワルファリン+DAPT(26.9%)→ハザード比 0.52(95%信頼区間 0.42~0.63)P<0.001、NNH=9

・ダビガトラン 150mg/日+P2Y阻害薬(20.0%) vs ワルファリン+DAPT(25.7%)→ハザード比 0.72(95%信頼区間 0.58~0.88)P<0.002、NNH=18

 

〇二次エンドポイント

【塞栓症イベント(心筋梗塞脳卒中、全身性塞栓症)・死亡・予期せぬ血行再建の複合エンドポイント】

・ダビガトラン+P2Y阻害薬(13.7%) vs ワルファリン+DAPT(13.4%)→ハザード比 1.04(95%信頼区間 0.84~1.29)P=0.74

・ダビガトラン 110mg/日(15.2%) vs ワルファリン+DAPT(13.4%)→ハザード比 1.13(95%信頼区間 0.90~1.43)P=0.30

・ダビガトラン 150mg/日(11.8%) vs ワルファリン+DAPT(12.8%)→ハザード比 0.89(95%信頼区間 0.67~1.19)P=0.44

 

感想

トリプル療法と比較したダビガトラン+P2Y阻害薬の非劣性が示されておりますが、実質、抗凝固薬+DAPTと抗凝固薬+抗血小板薬1剤なので出血についてはそりゃそうだろうなという印象です。

「あの」リバーロキサバンと似たような手口ですね。

有効性についてのアウトカムは有意な差は見られておりませんが、そもそも一次エンドポイントであった複合アウトカムが症例数が不足したため(サンプルサイズは8520例)、二次エンドポイントに変更されており、βエラーの可能性も高いので、これのみではなんとも言えない結果です。

これまでの知見を踏まえると、PCI施行後の心房細動患者では抗凝固薬+抗血小板薬1剤がリスク・ベネフィット的には適切なのかなという印象ですが、ワルファリン+DAPT vs ダビガトラン+DAPTまたはワルファリン+抗血小板薬1剤 vs ダビガトラン+抗血小板薬1剤の比較も見たいところです。

 

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