【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

心房細動を有するステント留置後の患者ではワルファリンよりもリバーロキサバンの方が出血リスクが低いですか?

「Prevention of Bleeding in Patients with Atrial Fibrillation Undergoing PCI」

November 14, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1611594

http://www.nejm.org/doi/abs/10.1056/NEJMoa1611594

 

PECO

: 18歳以上のPCI施行およびステント留置が行われた発作性・持続性または恒久的な非弁膜症性心房細動患者(2124人)

: リバーロキサバン15mg/日+P2Y12阻害薬(group1・709例)、リバーロキサバン2.5mg/日+DAPT(group2・709例)

C : ワルファリンをINR2.0~3.0を目標に調整+DAPT(group3・706例)で比較

: 臨床上明らかな出血(大出血・心筋梗塞の血栓溶解に伴う小出血・臨床上注意を要する出血) 

※DAPT→抗血小板薬2剤併用療法

チェック項目

・研究デザイン : ランダム化比較試験

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 明確

・ランダム化されているか? : されている

・盲検化されているか? : PROBE法が行われている

・ITT解析されているか? : 修正ITT解析が行われいる

・追跡率 : 100%

・サンプルサイズ : 各群750例(パワー80%)

・患者背景 : 気になるような偏りは見られない

・追跡期間 : 12ヶ月

 

結果

・group1(16.8%) vs group3(26.7%)→ハザード比0.59(95%信頼区間0.47~0.76)P<0.001

・group2 (18.0%) vs group3(26.7%)→ハザード比0.63(95%信頼区間0.50~0.80)P<0.001

・group1&2(17.4%) vs group3(26.7%)→ハザード比0.61(95%信頼区間0.50~0.75)P<0.001

 

※二次アウトカム

【重大な有害心血管イベント(心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中)】

・group1(6.5%) vs group3(6.0%)→ハザード比1.08(95%信頼区間0.69~1.68)P=0.75

・group2(5.6%) vs group3(6.0%)→ハザード比0.93(95%信頼区間0.59~1.48)P=0.76

 

感想

一見するとワルファリンよりもリバーロキサバンの方が出血リスクが低いようにも見えますが、実際には「リバーロキサバン+抗血小板薬1剤 vs ワルファリン+抗血小板薬2剤」または「超低用量リバーロキサバン+ワルファリン常用量」での比較であるため、単に心房細動を有するステント留置後の患者では抗凝固薬+DAPTよりも抗凝固薬+抗血小板薬1剤の方が出血リスクが低いという事が示唆されているに過ぎないように思います。

心血管イベントについては有意な差は見られておりませんが、二次アウトカムでありそもそも症例数が不足しているためこれだけではなんとも言えないような印象です。

 

複合エンドポイントとなっている出血の中身を見てみると大出血・心筋梗塞の血栓溶解に伴う小出血では有意な差は見られておらず、臨床上注意要する出血(薬物・外科的治療または検査を要する出血)でのみ有意な差が見られておりこちらはソフトエンドポイントっぽいところも若干気になるところではありますが、ひとまずこれまで通り心房細動を有するステント留置後の患者では抗凝固薬+抗血小板薬1剤が妥当なところかなと思います。

 

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