心筋梗塞後にNSAIDsを使用することで出血リスクは増加しますか?
【私的背景】
前回は虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作の既往があり、抗血小板薬が使用されている患者に対して、アセトアミノフェンを併用すると重大な心血管イベントおよび大出血のリスク増加が示唆されている論文を取り上げたが、今回はNSAIDsの併用について検討されている論文を読んでみたいと思う。
「Association of NSAID use with risk of bleeding and cardiovascular events in patients receiving antithrombotic therapy after myocardial infarction.」
PMID:25710657
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25710657
PECO
P : 初回の心筋梗塞後、退院して30日以上生存し、アスピリン・クロピドグレルまたはVK拮抗薬等の抗血栓薬が処方されている30歳以上の患者(デンマーク、61971例、平均年齢67.7歳、男性63.2%)
E : NSAIDsの併用あり
C : 併用なし
O : 入院を要する出血(頭蓋内出血による入院または死亡、消化管出血、呼吸器や尿路からの出血、出血による貧血)
チェック項目
・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 全国的なデータベースが用いられており、大きな問題はないと思われる
・交絡因子の調整は? : 年齢、性別、NSAIDsの種類、不整脈、末梢血管疾患、脳血管疾患、糖尿病、急性腎不全、慢性腎不全、悪性腫瘍、ショック、COPD、出血の既往、PCI、β遮断薬、ACE阻害薬/ARB、スタチン、スピロノラクトン、ループ系利尿薬、血糖降下薬、PPIについて調整されている
・追跡期間中央値 : 3.5年間
結果
【入院を要する出血】
E群(4.2/100人年) vs C群(2.2/100人年)→調整ハザード比 2.02(95%信頼区間 1.81~2.26)、NNH=50人/年
※二次アウトカム
【心血管アウトカム(心血管死亡、非致死的な心筋梗塞の再発、虚血性脳卒中)】
E群(11.2/100人年) vs C群(8.3/100人年)→調整ハザード比 1.40(95%信頼区間 1.30~1.49)、NNH=35人/年
感想
今回の論文では、心筋梗塞の既往がある患者が対象となっており、患者背景に違いがあるものの、やはり抗血栓薬による治療が行われているような患者ではNSAIDsまたはアセトアミノフェンの併用には十分な注意が必要であるように思います。
現実的にも、これらが併用されることは少なくはない印象であり、それを考慮してNNHを見ると無視はできないような数字であることを考えると、やはり極力必要最低限の日数・用量で使用されることが望まれるように思います。