ダビガトランエテキシラートはシンバスタチンと併用することにより虚血性脳卒中または出血リスクが増加しますか?
「Association between statin use and ischemic stroke or major hemorrhage in patients taking dabigatran for atrial fibrillation」
CMAJ November 21, 2016 First published November 21, 2016, doi: 10.1503/cmaj.160303
PECO
P : ダビガトランエテキシラートが開始された66歳以上の患者(カナダ)
【症例】虚血性脳卒中か一過性脳虚血発作が発生した患者(397人)、または入院や救急受診を要する重大な出血が発生した患者(1117人)
【対照】年齢・受診日・性別でマッチングしたイベントが発生していない患者(6053人)
E : シンバスタチンまたはロバスタチンの使用
C : その他のスタチンの使用
O : 虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作の発生、重大な出血の発生
チェック項目
・研究デザイン : コホート内症例対照研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : オンタリオ州の処方データベースが用いられており、大きな問題はないと思われる
・交絡因子の調整は? : 「結果」に記載
・暴露の定義 : アウトカム発生日から60日前以内にスタチンを使用している
結果
・虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作→調整ハザード比1.33(95%信頼区間0.88~2.01)
※調整された交絡因子 : 5年以内の脳卒中または一過性脳虚血発作の既往、併存疾患スコア、糖尿病、高血圧症、心筋梗塞、うっ血性心不全、慢性腎疾患、前年に処方された薬剤の数、併用薬(β遮断薬、硝酸薬、アスピリン、ジピリダモール、抗不整脈薬、クロピドグレル、ワルファリン、NSAIDs、P糖蛋白阻害薬、CYP3A4阻害薬)、頸動脈の超音波検査、ペースメーカー使用、スタチンの使用期間
・重大な出血→調整ハザード比1.46(95%信頼区間1.17~1.82)
シンバスタチン→調整ハザード比1.44(95%信頼区間1.14~1.81)
ロバスタチン→調整ハザード比1.90(95%信頼区間0.78~4.61)
※調整された交絡因子 : 出血の既往、併存疾患スコア、心筋梗塞、狭心症、うっ血性心不全、慢性腎疾患、慢性肝疾患、施設に入居している期間、前年に処方された薬剤の数、併用薬(β遮断薬、硝酸薬、クロピドグレル、ワルファリン、NSAIDs、P糖蛋白阻害薬、P糖蛋白誘導薬、CYP3A4阻害薬)、血管造影および経皮的冠動脈形成術
感想
ダビガトランエテキシラートは生体内でカルボキシルエステラーゼによって活性代謝物であるダビガトランに変換されるということですが、シンバスタチン・ロバスタチンはカルボキシルエステラーゼを阻害し、更にP糖蛋白も阻害するために両者を併用することによるダビガトランエテキシラートの効果減弱または出血リスクの増加が懸念されるという背景があったようです。
結果としてはシンバスタチンとの併用において重大な出血と関連することが示唆されており、現時点では代替が可能であればダビガトランを服用している患者では他のスタチンを使用することが望ましいのではないかと思います。
日本では承認されておりませんがロバスタチンについては出血との関連は見られていないもののさすがにβエラーの可能性が高いと思われ、これだけではなんとも言えないような印象です。
それにしても不勉強で恥ずかしい限りですが、シンバスタチンはP糖蛋白の基質であると思っておりました...。今後注意しなければ。