【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

トリプルテラピー(ワルファリン+DAPT)はDAPTと比較して有効性・安全性はどうですか?

 

「Use and Outcomes of Triple Therapy Among Older Patients With Acute Myocardial Infarction and Atrial Fibrillation.」

PMID:26248987

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26248987

 

PECO

: 65歳以上の心房細動/粗動を有するPCI施行後の急性心筋梗塞患者(米国、4959人)

: トリプルテラピー(ワルファリン+DAPT)

: DAPT(抗血小板薬2剤併用)

: 2年間でのMACE(死亡・心筋梗塞・脳卒中)の発生、出血による入院

 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・集団の代表性は? : 公的医療保険制度のデータが使用されており大きな問題はないと思われる

・交絡因子の調整は? : 傾向モデルにより調整されている。(年齢・性別・BMI・高血圧症・脂質異常症・糖尿病・末梢動脈疾患・心筋梗塞歴・PCI歴・CABG歴・心不全歴・脳卒中歴・過去1年間における出血・併用薬・心筋梗塞のタイプ・ベースライン時のヘモグロビン・ベースライン時のクレアチニン・心カテーテル・多血管性疾患・薬剤溶出性ステント/ベアメタルステント・薬剤の中止・病院での指導歴・入院中の重大な出血)

 

結果

[MACE]

E群(32.6%) vs C群(32.7%)→調整ハザード比0.99(95%信頼区間0.86~1.16)P=0.94

[出血による再入院]

E群(17.6%) vs C群(11.0%)→調整ハザード比1.61(95%信頼区間1.31~1.97)P<0.0001、NNH=16

 

※二次アウトカム

[総死亡]

E群(23.8%) vs C群(24.8%)→調整ハザード比0.95(95%信頼区間0.83~1.16)P=0.82

[心筋梗塞による再入院]

E群(8.5%) vs C群(8.1%)→調整ハザード比1.03(95%信頼区間0.79~1.33)P=0.83

[脳卒中による再入院]

E群(4.7%) vs C群(5.3%)→調整ハザード比0.85(95%信頼区間0.58~1.23)P=0.38

[頭蓋内出血]

E群(3.4%) vs C群(1.5%)→調整ハザード比2.04(95%信頼区間1.25~3.34)P<0.01、NNH=53

 

感想

PCI施行後の心房細動を有する急性心筋梗塞の高齢者では、DAPTと比較してトリプルテラピーはその後の心血管イベントリスクの減少は見られず重大な出血については大きくリスクを増加させることが示唆されております。

リスクが高い患者が対象となっているとはいえ2年間でMACEを発症する割合が多い点が気になるところではありますが、高齢者ではトリプルテラピーはベネフィットよりもリスクの方が大きい可能性があります。とは言えこの研究の対象のような患者に対してDAPTのみというのも少し心許ないというか何というか現実的には抗凝固薬+抗血小板薬1剤が妥当なところでしょうか。

いずれにしろこの研究のみではその辺りはわからないため今後また改めて調べてみたいと思います。 

 

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