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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

後期高齢者には厳格な降圧治療を行うべきですか?

高血圧・降圧薬

先日改めてSPRINT試験に触れる機会があったのですが、今回はその後に発表されたサブ解析について考えていきたいと思います。

 
SPRINT試験についてはこちら。

 

 

では今回のサブ解析へ参りたいと思います。
 
「Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years: A Randomized Clinical Trial.」
PMID: 27195814 
 
タイトルにありますようにSPRINT試験の対象患者のうち75歳以上の患者のみについて解析されている研究でありますが、実は昨日このサブ解析の内容についてツイキャスにて配信させていただいたので詳しくはそちらを聴いていただくとして(初めてツイキャスでお話ししてみたのですが内容としてはひどいものでした…。ライブ履歴はこちら→ http://twitcasting.tv/screamtheyellow/movie/279761340 )、いきなり結果にいってみたいと思います。
 
[結果]
・一次アウトカム(心筋梗塞・急性冠症候群・脳卒中・心不全・心血管死亡の複合アウトカム)
E群(2.59%/年) vs C群(3.85%/年)→ハザード比0.66(95%信頼区間0.51~0.85)P=0.001、3.14年間でのNNTは27人
 
※二次アウトカム
・総死亡
E群(1.78%/年) vs C群(2.63%/年)→ハザード比0.67(95%信頼区間0.49~0.91)P=0.009、3.14年間でのNNTは41人
 
・重篤な有害事象(致死的または生死に関わるもの)
E群(48.4%) vs C群(48.3%)→ハザード比0.99(95%信頼区間0.89~1.11)P=0.90
 
 
厳格な降圧治療を行うことで標準的な降圧治療と比較すると約3年間で27人のうち1人の心血管アウトカムを予防するという、数字を見るとなかなか衝撃的な結果です。総死亡についても有意差が見られている点は注目したいところです。
 
ただし、やはりあくまでもサブ解析である点、複合アウトカムのうち有意な差が見られているのは心不全だけである点、SPRINT試験自体早期終了されているため過大評価されている可能性がある点、ベースライン時の平均BMIがおよそ27.8kg/㎡であり全体的に肥満の患者が多い点などについては注意が必要であり、この結果のみで一律に後期高齢者に対する降圧治療は厳格に行うべきだと結論することはできないと考えます。
 
 
ではツイキャスでも触れました高齢者と血圧・降圧治療について検討されている研究についても見ていきたいと思います。
 
 
①「Longitudinal Trends in Hypertension Management and Mortality Among Octogenarians」
PMID: 27160194 
→英国のコホート研究。
80歳台の高齢者では収縮期血圧110mmHg未満の群から170mmHg以上の群まで心血管死亡および総死亡について有意な差は見られていない。
 
 
②「Target blood pressure for treatment of isolated systolic hypertension in the elderly: valsartan in elderly isolated systolic hypertension study.」
PMID: 20530299 
→日本人を対象としたランダム化比較試験。
収縮期血圧>160mmHg・拡張期血圧<90mmHgである70~84歳の患者に対してバルサルタンを投与して収縮期血圧<140mmHgを目標に降圧治療を行う群と、収縮期血圧140~149mmHgを目標に降圧治療を行う群の比較では心血管イベントに有意な差は見られていない。
(バルサルタンが良くなかったんじゃ…)
 
 
③「Treatment of hypertension in patients 80 years of age or older.」
PMID: 18378519
→ヨーロッパ・中国・オーストラリア・チュニジアで行われたランダム化比較試験。
収縮期血圧>160mmHg以上である80歳以上の患者に対してインダパミド・ペリンドプリルを用いて血圧150/80mmHgを目標に降圧治療を行う群と、プラセボを投与した群の比較において二次アウトカムである総死亡についてリスクを21%減少させている。
(早期終了・二次アウトカムである点に注意)
 
 
④「Treatment With Multiple Blood Pressure Medications, Achieved Blood Pressure, and Mortality in Older Nursing Home Residents: The PARTAGE Study.」
PMID: 25685919
→フランス・イタリアにおける縦断研究。
ナーシングホームに入居している80歳以上の患者では、2剤以上の降圧薬を使用して収縮期血圧を130mmHg未満にコントロールすることで死亡リスクが増加することが示唆されている。
 
 
なんだか混沌としているような印象を受け、余計にわけがわからなくなってしまいました…。
 
ひとまず今回のサブ解析も含めて、薬局に歩いて来られるような後期高齢者の患者さんと介護付き施設に入居しているような患者さんとでは目標とすべき血圧に違いがある可能性があるという事は考えられるかなと思います。
 
では実際に後期高齢者において、どの患者でどのくらいの血圧を目標に治療を行うべきかといった具体的な数値については明確には答えられませんし、収縮期血圧<120mmHgを目標にした厳格な降圧治療を積極的に行うべきだとは思いませんが、例えば比較的元気で太っている後期高齢者の患者さんで起立性低血圧等はなく転倒リスクが高くないと考えられる方において厳格に血圧が管理されている場合は継続しても良いのかなというようには思います。それも何歳まで行うのかといったような問題もありますが…。
 
という事で今回は以上にさせていただきたいと思います。