ACE阻害薬・ARBは誤嚥性肺炎の予防に効果がある?
今回は前回からの続きですが、
ACE阻害薬・ARBが誤嚥性肺炎の予防に効果があるのかについて調べてみたいと思います。
まずはACE阻害薬に関する最新の論文を。
「Does Low Dose Angiotensin Converting Enzyme Inhibitor Prevent Pneumonia in Older People With Neurologic Dysphagia-A Randomized Placebo-Controlled Trial.」
PMID: 26123256
[PECO]
P : 過去3ヶ月以内に入院し、経管栄養が導入されている60歳以上の患者(93人、香港)
E : リシノプリル2.5mg/日(47人)
C : プラセボ(46人)
O : 肺炎の発症
[チェック項目]
・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 単盲検が行われている
・ITT解析されているか? : されていない
・追跡率 : 76.3%
・追跡期間 : 26週間
・患者背景 : ほぼ同等
・サンプルサイズ : 各群80人(検出力80%)
[結果]
・肺炎の発症→調整後オッズ比4.07(95%信頼区間0.87~19.15)P=0.076
一次アウトカムではあませんが、死亡については
・死亡→調整後オッズ比7.79(95%信頼区間1.42~42.65)P=0.018
[感想]
肺炎について有意な差は見られず、死亡については有意にリスクを増加させている割りと衝撃的な結果。
サンプル数が少なく脱落者が多いことが影響しているのかもしれませんが、誤嚥性肺炎のリスクがかなり高いと思われる患者では予防の効果は見られず、死亡リスクが高くなるかもしれないという事なのかもしれません。
次は前回紹介した論文を。
「Risk of pneumonia associated with use of angiotensin converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers: systematic review and meta-analysis.」
PMID: 22786934
[PECO]
P : 37の研究に参加した患者
E : ACE阻害薬・ARB
C : コントロール(ACE阻害薬・ARBの使用なし)
O : 肺炎の発症
[チェック項目]
・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「Two reviewers independently selected randomised controlled trials and cohort and case-control studies」の記載あり。
・出版バイアス : 「Visual inspection of funnel plots did not reveal any obvious asymmetrical tail」の記載あり。
・本論文バイアス : RCTだけではなく、観察研究も含まれている。
・異質性バイアス : 異質性検定が行われている。
[結果]
①ACE阻害薬群 vs コントロール群→オッズ比0.66(95%信頼区間0.55~0.80)、I2=79%
2年間のNNTは65
②ARB群 vs コントロール群→オッズ比0.95(95%信頼区間0.87~1.04)、I2=14%
③ACE阻害薬群 vs ARB群→オッズ比0.69(95%信頼区間0.56~0.85)、I2=0%
[感想]
前回の後ろ向きコホート研究の結果とは違い、ACE阻害薬では肺炎発症リスク低下との関連が見られるがARBでは見られないという結果。
なんだかよくわからなくなってきてしまいましたが、誤嚥性肺炎の予防目的で選択するならばどちらかで言えばACE阻害薬。ただし、ACE阻害薬も患者によっては効果が見られず死亡リスクが高くなる事が示唆されているため、やはり患者ごとに慎重に考えなければいけないと感じました。
ちなみに下記の先生のブログにも書かれていますが、やはり誤嚥性肺炎の予防にはまずは口腔ケアが第一でしょうかね。
pharmacist's record「口腔ケアで誤嚥性肺炎を防げる? 嚥下機能に影響する薬剤は?」http://ph-minimal.hatenablog.com/entry/2015/05/25/020428