【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高齢者にフィブラートを開始すると入院リスクは増加しますか?

【私的背景】

今回は実際に仕事上で悩んでいる問題であるが、高齢者に対するフィブラート開始による腎機能低下リスクに関する論文を読んでみたいと思う。

 

「New fibrate use and acute renal outcomes in elderly adults: a population-based study.」

PMID:22508733

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22508733

 

PECO

: 新規でフィブラートまたはエゼチミブが処方された66歳以上の外来患者(カナダ、80903例、平均年齢73歳)

: フィブラートの使用

: エゼチミブの使用

: 開始後、90日以内の血清クレアチニン値の上昇による入院

 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 医療保険のデータベース等が使用されており、大きな問題はないと思われる

・交絡因子の調整は? : 年齢、性別、発症日、社会的地位、薬剤数、NSAIDs、ACE阻害薬またはARB、Ca拮抗薬、利尿薬、スタチン、冠動脈疾患、糖尿病、高血圧症、末梢動脈疾患、うっ血性心不全、CKDについて調整されている

 

結果

・90日以内の血清クレアチニン値上昇による入院

E群(0.4%) vs C群(0.2%)→調整オッズ比 2.4(95%信頼区間 1.7~3.3)、NNH=500人

 

※二次アウトカム

・腎臓科医によるコンサルテーション→調整オッズ比 1.3(95%信頼区間 1.0~1.6)

・深刻な急性腎傷害による透析→調整オッズ比 0.9(95%信頼区間 0.5~1.5)

・総死亡→調整オッズ比 1.1(95%信頼区間 0.8~1.5)

 

感想

エゼチミブとの比較において、高齢者フィブラートを開始することで血清クレアチニン値上昇による入院リスクが増加することが示唆されており、腎機能の変化には十分に注意すべきであると考えます。

ただ、患者背景を見るとスタチンの併用がフィブラート群で59.3%、エゼチミブ群で84.8%と半数以上を占めており、単独同士での比較でないような印象である点には注意が必要かもしれません。

ベースライン時の腎機能を見ると、eGFRが60~89ml/min/1.73㎡と正常値または軽度の低下がみられる患者が半数以上を占めており、中等度以上の低下がみられる患者ではより注意が必要であるという見方もできるかもしれません。

 

ある程度余命の限られた高齢者ではフィブラートを開始する意義はいまいち不明である点を考慮すると、フィブラート単独でもリスクがベネフィットを上回る可能性があるのではないかと考えております。

 

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