起立性低血圧は死亡リスクを増加させますか?
「Cardiovascular morbidity and mortality related to orthostatic hypotension: a meta-analysis of prospective observational studies.」
PMID:25852216
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25852216
PECO
P : 13の観察研究に登録された121913人
E : 起立性低血圧あり(起立後1~5分以内に収縮期血圧20mmHg以上または拡張期血圧10mmHg以上の低下)
C : なし
O : 総死亡
チェック項目
・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「Two investigators (F.R. and M.R.) independently abstracted raw data sets related tobaselinecharacteristics of studies...」と記載されている。
・出版バイアス : 英語の文献のみ。Funnel plotにより検討されているが非対称である。
・元論文バイアス : 全て観察研究。Newcastle-Ottawa Scaleを用いて評価されているが、study qualityは全体的に高め。
・異質性バイアス : Cochrane QとI2統計量を用いて検討されている。フォレストプロットは視覚的に方向性が一致していない。
・追跡期間中央値 : 5年
結果
【一次アウトカム】
・総死亡→相対リスク1.50(95%信頼区間1.24~1.81) 異質性:P<0.00001、I2=93%
※サブグループ解析
・<65歳→相対リスク1.78(95%信頼区間1.25~2.52)
・≧65歳→相対リスク1.26(95%信頼区間0.99~1.62)
【二次アウトカム】
・冠動脈疾患→相対リスク1.41(95%信頼区間1.22~1.63) 異質性:P=0.21、I2=35%
・心不全→相対リスク2.25(95%信頼区間1.52~3.33) 異質性:P=0.00001、I2=95%
・脳卒中→相対リスク1.64(95%信頼区間1.13~2.37) 異質性:P<0.0001、I2=85%
感想
起立性低血圧が死亡リスクを増加させることが示唆されておりますが、元論文が全て観察研究である点と出版バイアスや異質性を考慮するとメタ解析としては妥当性が低いように思われ、ある程度割り引いて考える必要があります。
今回はその他の研究についても見ていきたいと思います。
①PMID:27032073 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27032073
→介護付き施設に入居している高齢者(平均年齢80.8歳)を対象にしたコホート研究
・拡張期血圧が10mmHg増加するごとに死亡リスクが17%(95%信頼区間2~34%)増加
・起立性低血圧は総死亡リスクを増加[ハザード比1.71(95%信頼区間1.08~2.71)]
②PMID:26022797 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26022797
→虚血性脳卒中および心筋梗塞の既往のない患者を対象にした台湾のコホート研究、平均年齢54.8±19.0歳、平均追跡期間4.5±2.9年
・起立性低血圧は虚血性脳卒中リスクを増加[ハザード比1.40(95%信頼区間1.09~1.81)P=0.009]
・総死亡リスクも増加[ハザード比1.35(95%信頼区間1.05~1.73)P=0.018]
・有害イベント(虚血性脳卒中・心筋梗塞・死亡)リスクを増加[ハザード比1.41(95%信頼区間1.18~1.68)P<0.001]
③PMID:25767137 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25767137
→高齢者を対象としたコホート研究、追跡期間4.4年
・起立性低血圧は総死亡リスクを増加[ハザード比1.23(95%信頼区間1.02~1.39)]
・心血管関連死亡リスクを増加[ハザード比1.41(95%信頼区間1.08~1.74)]
・心血管以外の死亡リスクを増加[ハザード比1.19(95%信頼区間1.01~1.60)]
④PMID:24879490 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24879490
→前向き観察研究のシステマティックレビュー&メタ解析
・起立性低血圧は総死亡リスクを増加[ハザード比1.36(95%信頼区間1.13~1.63)P<0.001]
・脳卒中、転倒との関連は見られなかった
以上のように起立性低血圧が死亡リスクを増加させるとする報告が複数あります。
全て観察研究またはそのメタ解析であるため原因と結果の関係については注意が必要ですが、やはり高齢者では起立性低血圧の有無に十分に注意し、過度の降圧治療等は避けるべきであると思います。
関連記事