全力のヘドバンは危険ですか?
恐らく私は頭を振る回数が日本の成人男性の平均を上回っていると推測されるのですが、ライブを観に行った翌日や自分のバンドでライブを行ったりスタジオ練習を行った翌日に仕事や日常生活に支障を来す事が多々あり、「このままでは何れ重大な障害が起きるんじゃないか?」と感じながら日々を過ごしてきました。
今回はそんな疑問に関連した論文を読んでみたいと思います。
まずは疑問の定式化を
P : 30代男性、日本人。メタル・ミクスチャー・スクリーモ等の音楽を好む。
E : ヘドバンあり
C : ヘドバンなし
O : 脳卒中・頸部の損傷
では実際に検索してみます。PubmedのClinical Queriesで「head banging」と入力して「Etiology/Narrow」を選択すると意外にも複数の論文がヒットしました。
その中で選んだ論文がこちら
「Head and neck injury risks in heavy metal: head bangers stuck between rock and a hard bass.」
PMID: 19091761
そうですか、BMJ Christmasですか。
まあ息抜きついでに読んでみましょう。
PECO
P : Motörhead・Mötley Crüe・ Skid Row・The Hell City Glamours・L.A. Guns・Ozzy Osbourne・Winger・Ratt・Whitesnake・W.A.S.P.のライブに参戦していた人々E : 一般的なヘヴィメタル
C : イージーリスニング
O : 頭部傷害・脛部傷害
・真のアウトカムで一次アウトカムは明確
結果
・頭部傷害 : 146ビート/分で首を振る角度が75度を超えた場合に頭痛やめまいが起きることが示唆された
・脛部傷害 : 146ビート/分で首を振る角度が105°を超えると発生する事が示唆された
感想
残念ながら今回の論文でのアウトカムは重大な障害ではなく、自然に軽快するような傷害のようです。
ちなみにLancetではヘドバンが硬膜下血腫を引き起こしたとする論文が発表されているようでやはり体には良くないのかもしれません。
ただし、今回に限っては上記のような論文の内容が妥当かどうかなど実はどうでも良いのです。
恐らく、重大な障害が起こるとしても私は全力のヘドバンは止められないでしょう。テンションが上がってしまえばきっと狂ったようにヘドバンしてしまうんだと思います。こればかりはわかっていても止められないのです。
「わかっていても止められない」
さて、自分ではなく患者さんに置き換えた場合に、食べ過ぎや飲み過ぎ又は喫煙、お年寄りが毎回持っていくPL顆粒等々わかっていても止められないというようなシチュエーションに良く遭遇する事があります。
人にもよりますがいくら他人が注意してもこれはなかなか止められないものです。何故ならそこには少なからず「幸せ」があるからだと思います。
その幸せを制限してまで得られる「利益」とは一体何なのか?ということを患者さん一人一人アセスメントしながらアドバイスなりコーチングなりを行っていく必要があるのではないかと論文を読みながら感じました。
そのためには患者さんとどういったコミュニケーションを取っていくのかを考えるのも重要かと思いますが、いやはや思った以上に勉強になる論文でした。
本日はこれでおしまい。
あっ、PL顆粒はあかん。