CKD患者に対するDAPTの期間【メモ】
【私的背景】
腎機能が低下している患者の薬物療法について相談をいただいた。
そこで今回は、ステント留置後のDAPTの最適な期間について調べてみたいと思う。
①「Impact of chronic kidney disease on 2-year clinical outcomes in patients treated with 6-month or 24-month DAPT duration: An analysis from the PRODIGY trial.」
PMID: 28198091
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28198091
※抄録のみ
【PECO】
P : PCI後の中等度~重度のCKD患者(604例)
E : 24ヶ月間のDAPT(抗血小板薬2剤併用療法)
C : 6ヶ月間のDAPT
O : 死亡・心筋梗塞・脳血管障害の複合エンドポイント
【チェック項目】
・研究デザイン : PRODIGY試験のサブ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
【結果】
〇死亡・心筋梗塞・脳血管障害の複合エンドポイント
・CKDあり→調整ハザード比 0.957(95%信頼区間 0.652~1.407)P=0.825
・CKDなし→調整ハザード比 1.341(95%信頼区間 0.861~2.086)P=0.194
〇出血
・CKDあり→調整ハザード比 1.999(95%信頼区間 1.100~3.632)P=0.023
・CKDなし→調整ハザード比 2.880(95%信頼区間 1.558~5.326)P=0.001
【感想】
中等度から重度のCKD患者に対して、PCI後24ヶ月間のDAPTは6ヶ月間のDAPTと比較して死亡・心筋梗塞・脳血管障害についてのベネフィットは見られず、出血リスクは増加させることが示唆されている。
ランダム化比較試験のサブ解析であるため、検出力不足等の可能性も考えられ、あくまでも仮説生成的な解析である点には注意したい。
患者背景についても抄録のみではわからない。
PRODIGY試験の論文も後で読む必要あり。
②「Long-term versus short-term dual antiplatelet therapy was similarly associated with a lower risk of death, stroke, or infarction in patients with acute coronary syndrome regardless of underlying kidney disease.」
PMID: 27865441
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27865441
※抄録のみ
【PECO】
P : 急性冠動脈症候群を発症したCKD患者
E : DAPT(クロピドグレル+アスピリン)を3ヶ月目以降も継続
C : DAPTを3ヶ月で中止
O : ①死亡・心筋梗塞・虚血性脳卒中の複合アウトカム、②出血、③111日および365日以内の①と②の総計
【チェック項目】
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
【結果】
アウトカム①
・eGFR ≧60→調整ハザード比 0.76(95%信頼区間 0.67~0.85)
・eGFR <60→調整ハザード比 0.84(95%信頼区間 0.73~0.96)
・eGFR 45~60→調整ハザード比 0.85(95%信頼区間 0.70~1.05)
・eGFR 30~45→調整ハザード比 0.78(95%信頼区間 0.62~0.97)
・eGFR <30→調整ハザード比 0.91(95%信頼区間 0.70~1.24)
【感想】
そもそもステント留置後の患者が対象ではなかったが、興味深いので読んでしまった。
3ヶ月以降もDAPTを継続した方が良さそうではあるが、最適な期間については不明。
検索語を変えて、また改めて調べてみよう。
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PPIの使用は死亡リスクを増加させますか?
【私的背景】
PPIの使用と死亡リスクについて検討されている興味深い論文を見つけたので読んでみたいと思う。
「Risk of death among users of Proton Pump Inhibitors: a longitudinal observational cohort study of United States veterans.」
PMID: 28676480
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28676480
PECO
P : 米国の退役軍人(349312例、平均年齢61.00歳、男性93.51%)
E : PPIの新規使用
C : H2RAの新規使用
O : 死亡
チェック項目
・研究デザイン : 縦断的コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 退役軍人が対象であり、一般化はできないかもしれない
・交絡因子の調整は? : 年齢、人種、性別、eGFR、血清クレアチニンの測定回数、入院の回数、糖尿病、高血圧、心血管疾患、末梢動脈疾患、脳血管疾患、慢性肺疾患、癌、C型肝炎、HIV、認知症、GERD、上部消化管出血、潰瘍疾患、ピロリ菌感染、バレット食道、アカラシア、狭窄および食道腺癌について調整されている
・追跡期間中央値 : 5.71年間
結果
・PPI群(4.74/100人年) vs H2RA群(3.32/100人年)→調整ハザード比 1.25(95%信頼区間 1.23~1.28)、NNH=71人/年
※二次コホート
・PPI群 vs PPIなし群→調整ハザード比 1.15(95%信頼区間 1.14~1.15)
・PPI群 vs PPIまたはH2RAなし群→調整ハザード比 1.23(95%信頼区間 1.22~1.24)
※PPIに暴露期間による比較
・31~90日 vs ≦30日→ハザード比 1.05(95%信頼区間 1.02~1.08)
・91~180日 vs ≧30日→ハザード比 1.17(95%信頼区間 1.13~1.20)
・181~360日 vs ≧30日→ハザード比 1.31(95%信頼区間 1.27~1.34)
・361~720 vs ≧30日→ハザード比 1.51(95%信頼区間 1.47~1.56)
感想
PPIの使用は死亡リスクを増加させることが示唆されております。
しかし、この研究では交絡因子として併用薬については調整されておらず、例えば抗凝固薬と低用量アスピリンが併用されており、消化管出血リスク・死亡リスクが共に高い例では、H2RAと比べてよりPPIの方が使われている等の交絡の可能性も考えられるのではないかと思います。
また処方された期間も、H2RAは120日(中央値)、PPIでは450日(中央値)と差がある点も気になるところです。
また、一般化が可能であるかという点にも注意が必要ですが、少なくともこの研究のみではPPIが死亡リスクを増加させるとは言い難い印象です。