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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

PPIの使用はCKD発症のリスクになりますか?

制酸薬

【私的背景】

これまで、PPIの使用と急性腎傷害(AKI)との関連について取り上げてきたが、今回は慢性腎臓病(CKD)との関連について検討されている論文を読んでみたいと思う。

 

①「Proton pump inhibitors are associated with increased risk of development of chronic kidney disease.」

PMID:27487959

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27487959

 

【PECO】

: 米国の退役軍人(平均年齢56.6歳、女性6.1%)

[症例] CKDと診断された患者(19311例)

[対照] CKDと診断されていない患者(57151例)

: PPIの使用あり

: 使用なし

: CKD、死亡

 

【チェック項目】

・研究デザイン : 症例対照研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 退役軍人が対象とされており、一般化は難しい可能性がある

・暴露の定義は? : 処方データが使用されている

・交絡因子への配慮は? : 年齢、性別、人種、リスクが出てくるまでの時間、血管疾患、上部消化管併存疾患、COPD、癌、糖尿病、高血圧症

 

【結果】

・CKD→オッズ比 1.10(95%信頼区間 1.05~1.16)P<0.0001

・死亡→オッズ比 1.76(95%信頼区間 1.68~1.84)P<0.0001

 

【コメント】

PPIの使用がCKDの発症および死亡リスクと関連することが示唆されていますが、併用薬については十分な調整が行われておらず、退役軍人では一般人よりも向精神薬やNSAIDs等の使用が多いのではないかと思われ、交絡の可能性はかなり高いように思います。

また、症例対照研究では、通常は年齢等でマッチングが行われた患者が対照群として設定される事が多いですが、この研究ではそのようなマッチングが行われてはおらず、年齢等の患者背景が大きく偏っている点にも注意が必要です。

この研究のみではなんとも言えないため次に行ってみましょう。

 

 

②「Proton Pump Inhibitor Use and the Risk of Chronic Kidney Disease.」

PMID:26752337

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26752337

 

【PECO】

: 45~64歳のeGFR>60ml/min/1.73㎡である患者(米国、10482例)

: PPIまたはH2RAの使用あり

: 使用なし

: CKDの発症

 

【チェック項目】

・研究デザイン : 人口ベースのコホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 米国での広域にわたる一般住民を対象としたコホート研究であり、大きな問題はないと思われる

・交絡因子の調整は? : 年齢、性別、人種、研究施設、健康保険、教育レベル、eGFR、喫煙、収縮期血圧、BMI、糖尿病、心血管疾患、降圧薬、抗凝固薬、世帯収入、NSAIDs、アスピリン、利尿薬、スタチン

・追跡期間中央値 : 13.9年間

 

【結果】

・PPI→調整ハザード比 1.50(95%信頼区間 1.14~1.96)P=0.003

・H2RA→調整ハザード比 1.15(95%信頼区間 0.98~1.36)

 

【コメント】

①の症例対照研究と比較すると交絡因子の調整についてはしっかり行われている印象ですが、こちらでもPPIの使用がCKD発症リスクを増加させることが示唆されております。

ただ、薬剤の使用に関しては電話調査による自己申告が行われており、監視バイアスには注意が必要であるように思います。

 

 

感想

PPIの使用がCKD発症と関連することが2報の観察研究において示唆されておりますが、どちらの研究も交絡因子の排除が十分ではないように思われ、現時点では明確に結論できないといった印象です。

前回のPPIとAKIとの関連同様、併用薬が関係している可能性が高いのではないかと私は考えますが、いずれにしろやはり漫然投与は極力避け、PPIが処方されている患者ではその他の併用薬(特にNSAIDsなど)についても見直すことが重要であると思います。

 

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