【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高齢者の二次予防にスタチンは効果がありますか?

「Safety and Effectiveness of Statins for Prevention of Recurrent Myocardial Infarction in 12 156 Typical Older Patients: A Quasi-Experimental Study.」
PMID: 27146371

PECO

P : 心筋梗塞による入院の経験がある60歳以上の患者(英国、12156人、平均年齢76.5±9.2歳、女性45.5%)
E : スタチンの使用あり
C : スタチンの使用なし
O : 致死的又は非致死的な心筋梗塞の再発

チェック項目

・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている
・集団の代表性は? : 英国内におけるプライマリーケアのデータが使用されており、大きな問題はないと思われる
・追跡期間 : 10年間

結果

[一次アウトカム]
〇心筋梗塞の再発→ハザード比0.84(95%信頼区間0.69~1.02)P=0.073、NNT=154.6(104.5~248.2)
①60~79歳→ハザード比0.73(95%信頼区間0.57~0.94)P=0.013
②80歳以上→ハザード比1.06(95%信頼区間0.78~1.44)P=0.690

[二次アウトカム]
〇総死亡→ハザード比0.62(95%信頼区間0.57~0.68)P<0.001
①60~79歳→ハザード比0.62(95%信頼区間0.55~0.72)P<0.001
②80歳以上→ハザード比0.77(95%信頼区間0.67~0.89)P<0.001

〇転倒
①60~79歳→ハザード比1.13(95%信頼区間0.91~1.40)P=0.260
②80歳以上→ハザード比1.82(95%信頼区間1.45~2.30)P<0.001

〇骨折
①60~79歳→ハザード比1.00(95%信頼区間0.70~1.41)P=0.993
②80歳以上→ハザード比1.91(95%信頼区間1.36~2.67)P<0.001

※ST、認知症、虚血性脳卒中については有意な差は見られていない


感想

心筋梗塞後の二次予防とはいえやはり80歳を超えるような高齢者ではスタチンを使用しても心筋梗塞再発のリスクに差がないことが示唆されています。

興味深いのは総死亡については有意なリスク低下が見られている点ですが、あくまでも二次アウトカムであり交絡の可能性もあるためこの結果をもって10年間における総死亡のリスクを低下させると結論する事は当然出来ませんが個人的にはちょっと中止を提案しづらいかなと思ってしまうのが正直なところです。記載は見当たりませんが、絶対リスクとしてどの程度なのかも見てみたいところです。