【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

BZDおよびZ-drugsの多剤併用はより転倒リスクを増加させますか?

【私的背景】

以前職場で、眠剤を複数併用しているとそれだけ転倒・骨折リスクは増加するのかと質問されたことがあった。

今回はその質問に関連した論文を見つけたので読んでみたいと思う。

 

「Association of benzodiazepine and Z-drug use with the risk of hospitalisation for fall-related injuries among older people: a nationwide nested case-control study in Taiwan.」

PMID: 28693443 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28693443

 

PECO

: 【症例】転倒に関連した怪我で入院した65歳以上の患者(2238例)

【対照】年齢・性別・発生年でマッチング(8645例)

: BZDまたはZ-drugsの使用あり

: 使用なし

: 骨折に関連した怪我による入院

 

チェック項目

・研究デザイン : コホート内症例対照研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 全民健康保険のデータベースが使用されており、大きな問題はないと思われる

・交絡因子への配慮は? : 認知症パーキンソン病、脳血管疾患、糖尿病、高血圧症、虚血性心疾患、抗精神病薬抗うつ薬、抗けいれん薬、チアジド、オピオイド、チャールソン併存疾患指数

・暴露の定義は? : 発生日から365日前以内に医師から処方された場合のみ。1~30日前に処方があった場合はCurrent user、31~90日前をindeterminate user、91~365日前をformer userとしている。また、ジアゼパム 10mg=1DDDとして、<0.3をlow、0.3~0.6をmedium、>0.6をhighとしている。

 

結果

〇BZD

・current→調整オッズ比 1.32(95%信頼区間 1.17~1.50)

・inderminate→調整オッズ比 0.75(95%信頼区間 0.62~0.91)

・former→調整オッズ比 0.64(95%信頼区間 0.64~0.86)

 

・high→調整オッズ比 1.75(95%信頼区間 1.47~2.08)

・midium→調整オッズ比 1.54(95%信頼区間 1.28~1.85)

・low→調整オッズ比 1.27(95%信頼区間 1.08~1.50)

 

〇Z-drug

・current→調整オッズ比 1.24(95%信頼区間 1.05~1.48)

・inderminate→調整オッズ比 0.87(95%信頼区間 0.64~1.18)

・former→調整オッズ比 0.96(95%信頼区間 0.78~1.17)

 

・high→調整オッズ比 1.37(95%信頼区間 1.14~1.64)

・inderminate→調整オッズ比 0.77(95%信頼区間 0.46~1.28)

・former→調整オッズ比 0.46(95%信頼区間 0.10~2.08)

 

半減期での比較

・長時間作用型BZD→調整オッズ比 1.41(95%信頼区間 1.16~1.71)

・短時間作用型BZD→調整オッズ比 1.42(95%信頼区間 1.20~1.69)

・長時間作用型+短時間作用型→調整オッズ比 1.61(95%信頼区間 1.37~1.89)

 

〇BZDまたはZ-drugのポリファーマシー

・BZD1種類→調整オッズ比 1.40(95%信頼区間 1.19~1.65)

・BZD2種類以上→調整オッズ比 1.61(95%信頼区間 1.38~1.89)

・Z-drugsのみ→調整オッズ比 1.33(95%信頼区間 1.04~1.69)

・BZD1種類+Z-drugs→調整オッズ比 1.65(95%信頼区間 1.08~2.50)

・BZD2種類以上+Z-drugs→調整オッズ比 1.58(95%信頼区間 1.21~2.07)

 

感想

オッズ比を見ると、BZDおよびZ-drugsの単剤よりも、併用している方が転倒による怪我のリスクが高い傾向にある印象です。

数種類併用しているような患者では、やはり、より転倒・骨折への注意が必要であると考えます。

 

関連記事

 

抗凝固薬と眼内出血/症候性の喘息にアジスロマイシン/DAPTの期間

【私的背景】

今回は、アブストラクトまでしか読めなけど気になった論文を。

 

 

①「Risk of Intraocular Bleeding With Novel Oral Anticoagulants Compared With Warfarin: A Systematic Review and Meta-analysis.」

PMID: 28687831

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28687831

 

【PECO】

: 心房細動または静脈血栓塞栓症の患者

: NOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)の使用

: ワルファリンの使用

: 眼内出血

 

【チェック項目】

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・評価者バイアス : 2人の研究者が独立して評価している

 

【結果】

NOAC vs ワルファリン→リスク比 0.78(95%信頼区間 0.61~0.99) 異質性:I2=4.8%、P=0.40

 

【感想】

各RCTのワルファリンの管理について改めて確認する必要があるが、やはり出血についてはNOACが有利か。

網膜下出血リスクの高い患者などでは注意したい。

 

 

②「Effect of azithromycin on asthma exacerbations and quality of life in adults with persistent uncontrolled asthma (AMAZES): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.」

PMID: 28687413 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28687413

 

【PECO】

: 症候性の喘息のためステロイドおよびLABAの吸入を継続して使用している、聴覚障害またはQT延長のない18歳以上の患者(420例)

: アジスロマイシン 500mg×3/週を48週間

: プラセボを48週間

: 喘息の増悪率(中等度~重度)、喘息QOL

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ランダム化比較試験

・真のアウトカムか? : 代用のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 設定さえているのは2つであり、問題ないと思われる

・ランダム化されているか? : されている

・盲検化されているか? : ニ重盲検が行われている

・ITT解析されているか? : されている

 

【結果】

・喘息の増悪

E群(1.07%/年) vs C群(1.86%/年)→発生率比 0.59(95%信頼区間 0.47~0.74)P<0.0001、NNT=127人/年

・喘息関連QOL

E群 vs C群→調整平均差 0.36(95%信頼区間 0.21~0.52)P=0.001

・アジスロマイシン群では下痢が多かった:E群(34%) vs C群(19%)→P=0.001

 

【感想】

成人の症候性喘息患者に対して、アジスロマイシンの使用は、喘息の増悪を減らし、QOLの改善も見られるという興味深い報告。

しかし、NNTを見るとそれほど大きな効果ではなく、QOLについても臨床的に意義のある差であるかは不明。

副作用のリスクも考えると、現時点では推奨されるものではない印象。

 

 

③「6- Versus 24-Month Dual Antiplatelet Therapy After Implantation of Drug-Eluting Stents in Patients Nonresistant to Aspirin: Final Results of the ITALIC Trial (Is There a Life for DES After Discontinuation of Clopidogrel).」

PMID: 28641840

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28641840

 

【PECO】

: 薬剤溶出ステント留置後のアスピリン非抵抗性の患者

: 6ヶ月間のDAPT

: 24ヶ月間のDAPT

: 死亡・心筋梗塞・血行再建術・脳卒中・出血の複合エンドポイント

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ランダム化比較試験の事後解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

 

【結果】

※2年間

・一次エンドポイント : E群(3.5%) vs C群(3.7%)→P=0.79

心筋梗塞 : E群(1.3%) vs C群(1.0%)→P=0.51

脳卒中 : E群(0.6%) vs C群(0.8%)→P=0.77

・血行再建術 : E群(1.0%) vs C群(0.3%)→P=0.09

・死亡 : E群(1.2%) vs C群(2.2%)→P=0.11

 

【感想】

6ヶ月間のDAPTは24か月間と比較して、効果について大きな差は見られないという、これまでの報告と同じような結果である。