二次予防での抗凝固薬/ワルファリンのTTRとNOAC/心血管疾患の既往のある患者の血圧
【私的背景】
今回は、アブストラクトしか読めないけど気になった論文を。
①「Effectiveness and Safety of Apixaban, Dabigatran, and Rivaroxaban Versus Warfarin in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation and Previous Stroke or Transient Ischemic Attack.」
PMID:28655814
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28655814
【PECO】
P : 虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作の既往があり、抗凝固薬が処方されている非弁膜性心房細動患者(米国)
E : アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバンの使用
C : ワルファリンの使用
O : 虚血性脳卒中および頭蓋内出血、大出血
【チェック項目】
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 保険データが使用されており、大きな問題はないと思われる
・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている
・平均追跡期間 : 0.5~0.6年間
【結果】
〇虚血性脳卒中および頭蓋内出血
・アピキサバン→ハザード比 0.70(95%信頼区間 0.33~1.48)
・ダビガトラン→ハザード比 0.53(95%信頼区間 0.26~1.07)
・リバーロキサバン→ハザード比 0.45(95%信頼区間 0.29~0.72)
〇大出血
・アピキサバン→ハザード比 0.79(95%信頼区間 0.38~1.64)
・ダビガトラン→ハザード比 0.58(95%信頼区間 0.26~1.27)
・リバーロキサバン→ハザード比 1.07(95%信頼区間 0.71~1.61)
【感想】
二次予防において、リバーロキサバンのみワルファリンと比較して虚血性脳卒中および頭蓋内出血のリスクを減少させることが示唆されております。
しかし、有効性と安全性のアウトカムを合わせて複合アウトカムとして設定されていますが、どちらのリスクを減少させたのかについてはアブストラクトのみではわかりません。まあ、虚血性脳卒中の方だろうとは思いますが。
リバーロキサバンの用量は20mg/日であるため、日本で使われている用量とは違う点には注意が必要です。
追跡期間が短いため、長期的な有効性・安全性については不明ではありますが、ひとまず二次予防において、短期間ではNOACはワルファリンと比較して劣らないと見た方が良いでしょうか。
②「Non-vitamin K antagonist oral anticoagulants compared with warfarin at different levels of INR control in atrial fibrillation: A meta-analysis of randomized trials」
DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.ijcard.2017.06.004
【PECO】
P : 心房細動患者
E : NOACの使用
C : ワルファリンのcTTR
O : 脳卒中または全身性塞栓症、大出血または臨床に関連した非大出血
【チェック項目】
・研究デザイン : ランダム化比較試験のメタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
【結果】
〇脳卒中または全身性塞栓症
・NOAC vs cTTR <60%→ハザード比0.79(95%信頼区間 0.68~0.90)
・NOAC vs cTTR 60~<70%→ハザード比 0.82(95%信頼区間 0.71~0.95)
・NOAC vs cTTR ≧70%→ハザード比 1.00(95%信頼区間 0.82~1.23)
〇大出血または臨床に関連した非大出血
・NOAC vs cTTR <60%→ハザード比 0.67(95%信頼区間 0.54~0.83)
・NOAC vs cTTR 60~<70%→ハザード比 0.75(95%信頼区間 0.63~0.89)
・NOAC vs cTTR ≧70%→ハザード比 0.84(95%信頼区間 0.64~1.11) ※交互作用無し(P=0.271)
【感想】
ワルファリンのTTR(施設)が70%以上であれば脳卒中・全身性塞栓症および出血についてNOACと差がみられないことが示唆されております。
ワルファリンの管理が良好であればNOACに変更する必要性はあまりないのではないかと思います。
③「Achieved blood pressure and cardiovascular outcomes in high-risk patients: results from ONTARGET and TRANSCEND trials.」
PMID:28390695
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28390695
【PECO】
P : 心血管疾患の既往のある55歳以上のハイリスク患者(高血圧症 70%)
E・C : ベースライン時の血圧で比較(ラミプリル、テルミサルタンを使用)
O : 心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中・心不全による入院・総死亡の複合アウトカム
【チェック項目】
・研究デザイン : ONTARGET試験およびTRANSCEND試験の事後解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・追跡期間中央値 : 56ヶ月間
【結果】
〇SBP 140以上 vs SBP 120~140→全てのアウトカムについて有意にリスクを増加させた
〇SBP 120未満 vs SBP 120~140
・心血管複合アウトカム→調整ハザード比 1.14(95%信頼区間 1.03~1.26)
・心血管死亡→調整ハザード比 1.29(95%信頼区間 1.12~1.49)
・総死亡→調整ハザード比 1.28(95%信頼区間 1.15~1.42)
〇DBP 70未満 vs DBP 70~80mmHg
・複合アウトカム→調整ハザード比 1.31(95%信頼区間 1.20~1.42)
・心筋梗塞→調整ハザード比 1.55(95%信頼区間 1.33~1.80)
・心不全による入院→調整ハザード比 1.59(95%信頼区間 1.36~1.86)
・総死亡→調整ハザード比 1.16(95%信頼区間 1.06~1.28)
【感想】
ランダム化比較試験の事後解析であるため、これのみで結論できるというものではありませんが、心血管疾患の既往のある患者において、より血圧が低い方が良いというわけではない事が示唆されているように思います。