【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

原爆による放射線に被曝した人の子供には有害な影響はありますか?

「Risk of death among children of atomic bomb survivors after 62 years of follow-up: a cohort study.」
PMID: 26384241
 

PECO

P : 1946~1983年の間に生まれた一人っ子(75327人)
E : 親が広島又は長崎での原爆による放射線の被曝をしている
C : 親が被曝していない
O : 癌又は癌以外の疾患による死亡
 
こちらの論文は抄録のみしか読めないため交絡因子の調整等については不明ですが、追跡期間の中央値は54.3年、追跡終了時に生存していた人達の平均年齢は53.1歳でそのうち60歳以上の人は23%、E群での親における生殖腺の放射線による平均の被曝量は264mGy(≒211mSv)であり結果は、
 
・母親の生殖腺における1Gyの変化による癌での死亡→ハザード比0.891(95%信頼区間0.693~1.145)P=0.36
・母親の生殖腺における1Gyの変化による癌以外の疾患での死亡→ハザード比0.973(95%信頼区間0.849~1.115)P=0.69
 
・父親の生殖腺における1Gyの変化による癌での死亡→ハザード比0.815(95%信頼区間0.614~1.083)P=0.14
・父親の生殖腺における1Gyの変化による癌以外の疾患での死亡→ハザード比1.103(95%信頼区間0.979~1.241)P=0.12
 
広島・長崎に投下された原爆による放射線に被曝した方々の子供には癌又はその他の疾患による死亡に有意な差は見られなかった。
 
 
「被爆した人の子供には悪い影響はなさそうだな、良かった良かった。」と思うべきなのでしょうが、抄録を読んでいるうちに被爆した方やその子供の不安や苦労について馬鹿なりに考えていました。
このブログで「戦争」というテーマについて取り上げるべきではありませんが、有権者である以上は戦争へと至る道を回避するために国際的な状況が変化していく中で「現実的に」どうしていくべきなのか考えていかなければなりませんね。