【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

SGLT-2阻害薬はリアルワールドではどうですか?

【私的背景】

SGLT-2阻害薬のエビデンスは十分ではなく、現時点では積極的な使用は躊躇われる印象であるが、今回貴重な報告を見つけたため読んでみたいと思う。

 

 

Open Access Lower Risk of Heart Failure and Death in Patients Initiated on SGLT-2 Inhibitors Versus Other Glucose-Lowering Drugs: The CVD-REAL Study」

https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.117.029190 

Circulation. 2017;CIRCULATIONAHA.117.029190
Originally published May 18, 2017

 

PECO

P : 糖尿病と診断された18歳以上の患者(309056例、平均年齢57歳、女性44%、心血管疾患あり13%、米国・ノルウェーデンマークスウェーデン・ドイツ・英国)

: SGLT-2阻害薬(カナグリフロジン・ダパグリフロジン・エンパグリフロジン)の開始

: その他の血糖降下薬の開始

: 心不全による入院

 

チェック項目

・研究デザイン : コホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 各国での一般診療のデータベースが使用されており、大きな問題はないと思われる

・交絡因子の調整は? : 傾向スコアマッチングが行われている(因子については Table S4に記載されている)

・平均追跡期間 : 心不全による入院→E群 239日・C群 211日、総死亡→E群 271日・C群 251日

 

結果

心不全による入院

E群(0.36/100人年) vs C群(0.67/100人年)→ハザード比 0.61(95%信頼区間 0.51~0.73)P<0.001、NNT=323人/年

 

※二次アウトカム

・総死亡

E群(0.52/100人年) vs C群(1.24/100人年)→ハザード比 0.49(95%信頼区間 0.41~0.57)P<0.001、NNT=139人/年

心不全による入院および総死亡

E群(0.89/100人年) vs C群(1.92/100人年)→ハザード比 0.54(95%信頼区間 0.48~0.60)P<0.001、NNT=98人/年

 

感想

アブストラクトを見ると結構インパクトがあったんですが、一次アウトカムは心不全による入院だけだったんですね。ちょっと残念。

総死亡については二次アウトカムであり、やはりより重症な例では他の血糖降下薬が使われやすい等の交絡の可能性も考えられるものの、EMPA-REG OUTOCOME trialも含めて考えると、SGLT-2阻害薬は他の血糖降下薬と比較して、非高齢者では死亡の延長効果は大きいのではないかと個人的には思います。NNTを見ると、それほど大きな差ではないかもしれませんが。

EMPA-REG OUTOCOME trialではBMIの平均が30.6kg/㎡でした。今回の論文には残念ながらBMIについての記載は見当たりませんでしたが、やはり日本人よりは大きめと考えられるので、肥満ではない患者にこのまま適用はできない可能性がある点には注意が必要かと思います。

また、最近ではFDAからカナグリフロジンによる下肢切断リスク上昇に関する安全性情報が発出されましたが( https://medical-tribune.co.jp/news/2017/0518508563/ )、特に長期使用による安全性については不明であり、現時点では積極的に使用されるべきものではないと考えます。

 

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