【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

高尿酸血症患者はキサンチンオキシダーゼ阻害薬を使用することにより尿路結石を予防することができますか?

【私的背景】

尿路結石の既往のない無症候性の高尿酸血症患者に対して結石予防でキサンチンオキシダーゼ阻害薬が処方されていたが、どれだけ効果があるのかわからなかったため関連するような論文を調べてみることにした。

 

 

①「Randomized controlled trial of febuxostat versus allopurinol or placebo in individuals with higher urinary uric acid excretion and calcium stones.」

PMID:23929928

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23929928

 

【PECO】

: 尿酸の排泄量が>700mg/日で5年以内に腎臓結石の既往があり、≧3mmの放射線不透過性カルシウム腎臓結石を有する18歳以上の患者(米国、99人、男性85.9%、平均年齢47.4歳平均BMI32.8kg/㎡)

: フェブキソスタット80mg(33人)

: アロプリノール200/300mg(33人)またはプラセボ(33人)

: 6ヶ月間での尿酸排泄量の変化率

※二次エンドポイント→6ヶ月間でのカルシウム結石の大きさの変化、カルシウム結石の数の変化

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ランダム化比較試験(第Ⅱ相試験)

・真のアウトカムか? : 代用のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 明確であるが知りたいのは二次エンドポイント

・ランダム化されているか? : されている

・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている

・ITT解析されているか? : FASによる解析が行われている

・追跡率 : 86.9%

・サンプルサイズ : 90例

・患者背景 : 偏りが見られる

 

【結果】

〇6ヶ月間での尿酸排泄量の変化率

・フェブキソスタット群(-58.6%) vs アロプリノール群(-36.4%)→P=0.003

・フェブキソスタット群(-58.6%) vs プラセボ群(-12.7%)→P<0.001

 

※二次アウトカム

〇6ヶ月間でのカルシウム結石の大きさの変化

各群で有意な差は見られなかった

〇6ヶ月間でのカルシウム結石の数の変化

各群で有意な差は見られなかった

 

【コメント】

尿酸合成阻害薬が結石の予防に効果があるのかは不明であるが、そもそもの症例数が少なく更に二次エンドポイントであるためこの結果のみで結論することは出来ない点に注意。

 

 

②「Randomized trial of allopurinol in the prevention of calcium oxalate calculi.」

PMID:3534570

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3534570

※抄録のみ

 

【PECO】

: 高尿酸尿があり、カルシウム排泄は正常な結石の既往がある患者(60人)

: アロプリノール100mg×3/日

: プラセボ

: 結石の非再発率、結石によるイベント

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ランダム化比較試験

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている

 

【結果】

〇結石の非再発率

アロプリノール群(81.2%) vs プラセボ群(63.4%)→P<0.001

〇結石によるイベント

アロプリノール群(0.12%/年) vs プラセボ群(0.26%/年)→NNT=715人/年

 

【コメント】

一次アウトカムが何かは抄録からは不明。

結石の非再発率および結石イベントについて有意な差が見られているものの、結石イベントについては両群とも発生率はかなり低くNNTで見てみると大きな効果ではないように思う。

 

 

感想

結石の既往のある患者ではキサンチンオキシダーゼ阻害薬の使用による予防効果はあるかもしれませんが、特に結石によるイベントを予防するものとしてはやはり効果としてはあまり大きいものではなく、ましてや結石の既往のない患者については更にその効果は小さくなると考えられるため積極的に使用するべきというものではない印象です。

 

今回は質が高いと思われる研究が見つからなかったため更に探してみる必要があるかとは思いますが、そもそも高尿酸血症の患者がどれほど尿路結石のリスクが高いのかについてもまた改めて調べてみたいと思います。