【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

VD製剤はいつまで続ける必要がありますか?~case7

今回はとある先生から臨床疑問をいただき、調べた論文を読んでいこうと思います。

 

成り行きは前回の記事に。

ツイキャスライブ履歴→VD3製剤と骨折 - TwitCasting

 

では、論文へ。

 

 

 

「The effect of cholecalciferol (vitamin D3) on the risk of fall and fracture: a meta-analysis.」

PMID:17308327

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17308327

 

PECO

P : 閉経後の女性または75歳以上の男性

E : VD3単独やVD3+Ca

C : プラセボやCa単独

O : 転倒・非脊椎骨折・脊椎骨折

 

チェック項目

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析

・一次アウトカムは明確化か? : 複数設定されている。骨折などはアウトカムとして明確なもの。

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・評価者バイアス 特に記載はない。

・出版バイアス : 英語の文献のみ収集されており、出版バイアスについて検討されているかの記載はない。

・元論文バイアス : 統合されているのはRCT8報、前後比較の研究が1報。「All of the included studies were high-quality randomized controlled trials」と記載されている。

・異質性バイアス : フォレストプロットは視覚的に一致している。統合されている研究の期間はバラバラ。

 

結果

・転倒→相対リスク0.88(95%信頼区間0.78~1.00) I2=8.3%

・非脊椎骨折→相対リスク0.96(95%信頼区間0.84~1.09) I2=0%

・脊椎骨折→相対リスク1.22(95%信頼区間0.64~2.31) I2=24.2%

 

感想

かなりいい加減なシステマティックレビュー&メタ解析という印象でありますが、少なくともこの論文の結果からはVD3製剤の骨折予防効果については不明であり、前回の記事にもありました「ずっと続けなければならない?」という問いに対して私は「止めたい」というニュアンスが含まれていると勝手に受け取ってしまいその点について反省しておりますが、保険薬局に自ら来られて、問題なくお食事が摂れて、腎不全などもない患者で止めたいという訴えがあった場合には中止を提案する余地は十分にあると考えました。

 

ついでにVD3製剤に関連した他の論文についても以下に記載させていただきたいと思います。

 

 

「Vitamin D and vitamin D analogues for preventing fractures in post-menopausal women and older men.」

PMID:24729336

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24729336

→ランダム化比較試験のメタ解析

閉経後の女性または高齢に男性に対してVD単独では股関節骨折に対して有意な差は見られてない[リスク比1.12(95%信頼区間0.98~1.29)]、VD+Caで股関節骨折リスクを減少[リスク比0.84(95%信頼区間0.74~0.96)]、VD単独またはVD+Caでは総死亡について有意な差は見られていない[リスク比0.97(95%信頼区間0.93~1.01)]、VD単独で高Ca血症のリスクを増加[リスク比2.28(95%信頼区間1.57~3.31)]、VD+Caで腎疾患のリスクを増加[リスク比1.16(95%信頼区間1.02~1.33)]。

 

 

「Hip fracture risk in relation to vitamin D supplementation and serum 25-hydroxyvitamin D levels: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials and observational studies.」

PMID:20540727

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20540727

→ランダム化比較試験とケースコントロール研究のメタ解析

コレカルシフェロールまたはエルゴカルシフェロールのサプリメント投与群とプラセボまたはコントロール群の比較において股関節骨折について有意な差は見られていない[相対リスク1.13(95%信頼区間0.98~1.29)]。

 

 

 

「Efficacy of vitamin D3 supplementation in preventing fractures in elderly women: a meta-analysis.」

PMID:20302551

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20302551

→ランダム化比較試験のメタ解析

閉経後の女性に対して、VD3+Caの服用はプラセボとの比較において非脊椎骨折リスク減少と関連[オッズ比0.77(95%信頼区間0.6~0.93)]、股関節骨折リスク減少と関連[オッズ比0.70(95%信頼区間0.53~0.90)]。また、Ca単独との比較では非脊椎骨折について有意な差は見られていない[オッズ比0.68(95%信頼区間0.43~1.01)]、股関節骨折について有意な差は見られていない[オッズ比1.03(95%信頼区間0.39~2.25)]、脊椎・股関節以外の骨折についてはリスク減少と関連[オッズ比0.64(95%信頼区間0.38~0.99)]。

 

 

「Calcium plus vitamin D supplementation and health outcomes five years after active intervention ended: the Women's Health Initiative.」

PMID:24131320

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24131320

→ランダム化比較試験

50~79歳である閉経後女性に対するt平均7年間の追跡では、VD3+Caはプラセボと比較して股関節骨折について有意な差は見られていない[ハザード比0.88(95%信頼区間0.72~1.08)]、脊椎骨折について有意な差は見られていない[ハザード比0.90(95%信頼区間0.74~1.10)]、全ての骨折についても有意な差は見られていない[ハザード比0.96(95%信頼区間0.91~1.02)]。

 

 

 

「Treatment of Vitamin D Insufficiency in Postmenopausal Women: A Randomized Clinical Trial.」

PMID:26237520

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26237520

→ランダム化比較試験

75歳以下の閉経後女性において、VD3の服用はプラセボと比較して骨密度・筋肉量・転倒回数などについて差が見られない。

 

 

ひとまず以上ですが、やはりVD3製剤単独での骨折や寝たきりの予防効果については不明であり、Caとの併用についてもその効果は不明確であるという印象です。

これらの論文情報を以て、患者の思いとともに選択肢は複数あるのではないかと思います。

 

個人的にはもちろん個別での対応は重要ですが、処方提案とは別にこれらの論文情報をまとめて資料を作成し医師に話しに行ってみようかなと思います。