【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

ニセルゴリンは認知機能低下を予防する効果がありますか?

認知機能低下の予防を期待してニセルゴリンが処方されていると思われる例にいくつか遭遇したため今回はニセルゴリンが認知症の予防に効果があるのかについて調べてみたいと思います。

 
 
①「Efficacy of nicergoline in dementia and other age associated forms of cognitive impairment.」
PMID: 11687175
※抄録のみ
 
[PECO]
P : 認知症または認知機能障害と診断された患者
E : ニセルゴリン
C : プラセボ
O : 認知機能(計量的心理テストにより測定)・臨床所見(CIBIC等で測定)・有害事象
 
[チェック項目]
・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 代用のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 複数設定されている
・出版バイアス : 個々の研究者と連絡を取っている
・元論文バイアス : 全て二重盲検プラセボコントロールのランダム化比較試験
 
[結果]
〇認知機能
・SCAGスケール(最大133点)→-5.18点(95%信頼区間-8.03~-2.33)
・MMSE(最大30点)→2.86点(95%信頼区間0.98~4.74)
・ADAS-Cog(最大70点)→-1.64点(95%信頼区間-4.62~1.34)
 
〇臨床所見→オッズ比3.33(95%信頼区間2.50~4.43)
 
〇有害事象→オッズ比1.51(95%信頼区間1.10~2.07)
 
[コメント]
なるほど、確かに効果はありそうです。
ただ、認知機能関する各種スケールを見てみるとSCAGスケールとMMSEで有意な差が見られているものの、総得点から見るとその差はあまり大きなものではなく臨床的に意義のある差であるかは疑問が残ります。
 
 
 
②「Nicergoline in mild to moderate dementia. A multicenter, double-blind, placebo-controlled study.」
PMID: 2646350
※抄録のみ
 
[PECO]
P : 軽度~中等度の認知症患者315人
E : ニセルゴリン60mg/日
C : プラセボ
O : SCAGスケールの変化
 
[チェック項目]
・研究デザイン : 二重盲検プラセボコントロールランダム化比較試験
 
[結果]
・3ヶ月後→5.5点(95%信頼区間3.6~7.4)
・6ヶ月後→9.8点(95%信頼区間7.8~11.8)
 
[コメント]
やはり有意な差が見られているものの、現実的に大きな影響があるほどの差ではないように感じます。
 
 

感想

代用のアウトカムではありますが、スケールの変化がどの程度実際の生活に影響を与えるのか個人的にはよくわからないというのが正直なところです。
上記の通りあまり臨床的に意義のある差ではないようにも思いますが全く効果がないとも言えず、わざわざ飲むこともないし止めさせることもないのかなと思いますが有害事象についてちょっと気になったのでそちらについてはまた後程調べてみたいと思います。