【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

DAPTとPPI/急性心筋梗塞後にRA系阻害薬/高齢者に対する降圧薬

本日は抄録のみしか読めないけど気になった論文をいくつか。

 
 
①「Proton-Pump Inhibitors Reduce Gastrointestinal Events Regardless of Aspirin Dose in Patients Requiring Dual Antiplatelet Therapy.」
PMID: 27012778
 
[PECO]
P : クロピドグレル及びアスピリンによるDAPTが行われている患者
E : ①高用量アスピリン(>100mg)の使用②PPIの使用あり
C : ②低用量アスピリンの使用(≦100mg)②PPIの使用なし
O : 上部消化管イベント・重大な心血管イベント
 
[チェック項目]
・研究デザイン : ランダム化比較試験のサブ解析?
・追跡期間中央値 : 110日
 
[結果]
①高用量アスピリン vs 低用量アスピリン
・上部消化管イベント→調整ハザード比0.88(95%信頼区間0.46~1.66)
・重大な心血管イベント→調整ハザード比0.73(95%信頼区間0.40~1.11)
 
②PPIの使用あり vs 使用なし
・上部消化管イベント→低用量アスピリンの使用時:1.2% vs 3.1%、高用量アスピリンの使用時:0.9% vs 2.6%,交互作用なし
・重大な心血管イベント→影響は見られなかった
 
[コメント]
アスピリンの用量に関わらずPPIの使用が上部消化管イベントを予防し、心血管イベントを増加させない事が示唆されをりますが患者背景などを詳しく見るためにも元のRCT(COGENT試験)についても後程読んでみたいと思います。
 
 
 
②「Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors and Angiotensin Receptor Blockers in Myocardial Infarction Patients With Renal Dysfunction」
j Am Coll Cardiol. 2016;67(14):1687-1697. doi:10.1016/j.jacc.2016.01.050
 
[PECO]
P : 急性心筋梗塞の既往がある患者(スウェーデン)
E : ACE阻害薬又はARBの使用あり
C : 使用なし
O : 死亡・心筋梗塞・脳卒中・急性腎不全(AKI)
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
 
[結果]
・死亡 : 17.4% vs 25.4%→3年間でのハザード比0.80(95%信頼区間0.77~0.83)、NNT=13人
※透析患者を含む腎不全患者でも一貫していた。
・心筋梗塞→3年間でのハザード比0.91(95%信頼区間0.87~0.95)
・脳卒中→有意な差は見られなかった
・急性腎不全→E群(2.5%) vs C群(2.0%)、E群ではリスクの有意な上昇が見られた
 
[コメント]
腎障害を有する心筋梗塞後の患者において、ACE阻害薬/ARBの使用により急性腎不全のリスクは高くなるものの死亡リスクについては割りと小さくはないリスク減少が示唆されております。
 
 
 
③「Antihypertensive Drug Use, Blood Pressure Variability, and Incident Stroke Risk in Older Adults」
PMID: 27012741
 
[PECO]
P : 収縮期血圧>140mmHg又は拡張期血圧>90mmHgで少なくとも1つ以上の降圧薬を服用している65歳以上の患者(5951人、中央値74歳・女性60%)
E・C : 降圧薬の使用又は血圧の変動で比較
O : 致死性及び非致死性脳卒中
 
[チェック項目]
・研究デザイン : コホート研究
・追跡期間 : 12年
 
[結果]
・降圧薬の使用による脳卒中の減少は見られなかった
・ARBの使用→ハザード比1.56(95%信頼区間1.06~2.28)P=0.02
・β遮断薬の使用→ハザード比1.41(95%信頼区間1.03~1.92)P=0.03
・収縮期血圧140~160mmHgにおいて変動係数が0.1%増加→ハザード比1.59(95%信頼区間1.05~2.40)P=0.03
 
[コメント]
高齢者に対する降圧治療は脳卒中のリスクを減少させず、薬剤によってはむしろ虚血性脳卒中を増加させる事が示唆されており若干衝撃的な結果です。
降圧治療によるベネフィットを考える上で年齢はやはり重要なファクターであり、施設入所者において複数の薬剤使用による降圧治療が死亡リスクを増加させる事が示唆されている文献もあるため、高齢の患者に対する降圧治療はベネフィットよりもリスクの方が上回る場合も案外多いのかもしれません。

 

 

 

感想

今回は全て抄録のみしか読めないため妥当性については不明な部分が多いので注意が必要ですが、私も会社から例の認定取得のための研修についてはお金を出すと言われているんですが、むしろこういった有料の論文を購読するためのサポートをしてもらいたいななんて、甘えかもしれませんが個人的には思ったりします。まあ会社にとってのメリットを感じてもらえなければ難しいんでしょうが…。