PPIとH2ブロッカーではどちらが即効性がありますか?~case6
今回は「PPIとH2ブロッカーで即効性がある(投与後から胃内pHが上昇するまでの時間)のはどっち?」という疑問を頂きました。
私は英語が苦手だったり、検索のコツがイマイチ掴めていないため割りと苦労しているんですが検索の仕方について私なりにちょっと触れてみたいと思います(「もっと良い方法があるよ!」という方も勿論いらっしゃると思いますので是非教えて下さい)。
検索する際のキーワードはPECO(患者・暴露・比較・結果)の各項目に沿って検索すると目当ての論文が見つけやすいのですが、例えばH2ブロッカーは論文によって「H2 blocker」と書かれていたり「Histamine H2 Antagonist」と書かれている場合もあるため1つの単語では必要な論文を見落としてしまう可能性があるので統一されたキーワードである「MeSH term」をまずは調べてみます。
検索ボックスに「H2 blocker」と入力して、左上のプルダウンメニューから「MeSH」を選択します。
すると下図のように表示され、「Histamine H2 Antagonists」というキーワードで検索すれば良いんだなということがわかります。
さて、このMeSHから検索式を考えて検索していくべきなんですが私はいつも横着して初めの画像の真ん中辺りにある「Clinical Queries」で検索しています。この「Clinical Queries」はキーワードを入れると自動的に検索式を作成して検索してくれます。
「Clinical Queries」をクリックすると下の画像が表示されます。
ここで検索ボックスに「Proton Pump Inhibitors Histamine H2 Antagonist pH fasting(又はearly effectとか)」と入力してsearchをポチッとすると下の画像のように検索結果が出てきます。
ちなみにCategoryは効果をみたいため「Therapy」、Scopeはヒットした論文の数がそれほど多くないため「Broad」で良いかと思います。
例えば薬の副作用をみたいときは「Etiology」、論文の数を絞りたいときは「Narrow」を選択します。
ここで「See all(43)」と書いてある部分をクリックすると各論文のタイトルが出てくるので、あとは1つずつ確認していくのみです。
ひとまずは検索の仕方についてはこんなところでしょうか。
ではここから、見付けた4報の論文について読んでいきたいと思います。
①「Intragastric pH after oral administration of single doses of ranitidine effervescent tablets, omeprazole capsules and famotidine fast-dissolving tablets to fasting healthy volunteers. 」
PMID: 9663842
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9663842
[PECO]
P : 健康なボランティア15人。平均年齢24歳(±3)・平均体重74kg(±13)・平均身長179cm(±11)
E : ラニチジン口腔内崩壊錠150mg又は300mg
C : ファモチジン20mg・オメプラゾール20mg
O : 服用後4時間までの胃内pHの変化
[チェック項目]
・研究デザイン : クロスオーバーランダム化比較試験
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : 行われていない
・ITT解析が行われているか? : 行われていない
・追跡率 : 100%
[結果]
①服用後4時間の胃内pH変化
・ラニチジン150mg群→平均pH5.81・pH中央値5.98
・ラニチジン300mg群→平均pH5.51・pH中央値6.14
・ファモチジン群→平均pH4.48・pH中央値5.09
・オメプラゾール群→平均pH1.76・pH中央値1.79
②胃内pHが4に達するまでの時間
・ラニチジン150mg群→平均時間22分・時間中央値5分
・ラニチジン300mg群→平均時間11分・時間中央値5分
・ファモチジン群→平均時間79分・時間中央値80分
・オメプラゾール群→平均時間113分・時間中央値115分
※比較
・ラニチジン150mg群 vs ラニチジン300mg→差13分(95%信頼区間-23~49)P=0.4604
・ラニチジン150mg群 vs オメプラゾール群→差-93分(95%信頼区間-52~-138)P=0.0001
・ラニチジン150mg群 vs ファモチジン群→差-59分(95%信頼区間-24~-95)P=0.002
・ラニチジン300mg群 vs オメプラゾール群→差-108分(95%信頼区間-64~-152)P=0.0001
・ラニチジン300mg群 vs ファモチジン群→差-72分(95%信頼区間-36~-109)P=0.0003
・ファモチジン群 vs オメプラゾール群→差35分(95%信頼区間-8~79)P=0.1116
[コメント]
H2ブロッカーというかラニチジン口腔内崩壊錠が圧倒的に早いように感じますね。ITT解析は行われておりませんが、脱落者はおらず、服用後4時間の様子をモニターしている性質上そちらは問題ないように思います。
②「In single doses ranitidine effervescent is more effective than lansoprazole in decreasing gastric acidity.」
PMID: 9146775
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9146775
[PECO]
P : 健康な若いボランティア12人。年齢中央値23歳(21-25)
E : ラニチジン口腔内崩壊錠150mg又は300mg
C : ランソプラゾールカプセル30mg
O : 胃内pHが4.0に上昇するまでの時間・効果の持続時間
[チェック項目]
・研究デザイン : クロスオーバーランダム化比較試験
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : 行われていない
・ITT解析が行われているか? : 行われていない
・追跡率 : 100%
・追跡期間 : 11時間
[結果]
①胃内pHが4.0に上昇するまでの時間
・ラニチジン150mg群→時間中央値5分(95%信頼区間2~61)
・ラニチジン300mg群→時間中央値6.5分(95%信頼区間1~83)
・ランソプラゾール群→時間中央値98分(95%信頼区間64~181)※5例は胃内pHが4.0まで上昇しなかった
ラニチジン150mg群及び300mg群 vs ランソプラゾール群→P=0.02
ラニチジン150mg群 vs 300mg群→P=0.47
②胃内pHが4.0以上であった時間の中央値
・ラニチジン150mg群→188分(95%信頼区間106~221)
・ラニチジン300mg群→220分(95%信頼区間134~315)
・ランソプラゾール群→17分(95%信頼区間0~40分)
ラニチジン150mg群及び300mg群 vs ランソプラゾール群→P=0.002
ラニチジン300mg vs ラニチジン150mg群→P=0.01
[コメント]
やはりラニチジン口腔内崩壊錠が圧倒的。
③[Early effects of oral administration of omeprazole and roxatidine on intragastric pH.]
PMID: 22205617
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22205617
[PECO]
P : 健康な男性ボランティア10人。平均年齢29.1歳(23-44)
E : ロキサチジン75mg
C : オメプラゾール20mg
O : 服用後6時間の平均胃内pH・効果の発現時間
[チェック項目]
・研究デザイン : クロスオーバーランダム化比較試験
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化が行われているか? : 行われている
・盲検化が行われているか? : 行われていない
・ITT解析が行われているか : 行われていない
・追跡率 : 100%
[結果]
①服用後6時間の平均胃内pH
ロキサチジン群(4.43) vs オメプラゾール群(2.65) P=0.0367
※0~1時間→2.20 vs 1.45 P=0.0380
0~2時間→3.80 vs 1.85 P=0.0068
0~3時間→4.55 vs 2.65 P=0.0189
0~4時間→4.65 vs 2.65 P=0.0077
0~5時間→4.70 vs 2.75 P=0.0189
②服用後6時間の効果の発現
・胃内pHが2以上であった時間 : ロキサチジン群(90.6%) vs オメプラゾール群(55.2%) P=0.0284
・5以上であった時間 : ロキサチジン群(43.7%) vs オメプラゾール群(10.6%) P=0.0125
・6以上であった時間 : ロキサチジン群(40.3%) vs オメプラゾール群(3.3%) P=0.0125
[コメント]
単回投与ではやはりロキサチジンはオメプラゾールと比較して服用後6時間までの胃内pHの上昇について有意な差が見られているが、ラニチジン口腔内崩壊錠と比較するとちょっと見劣りするような感じがしますね。
④「Early effects of intravenous administrations of lansoprazole and famotidine on intragastric pH.」
PMID: 19579641
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19579641
※抄録のみ
[PECO]
P : ピロリ菌陰性の男性12人
E : ファモチジン20mg
C : ランソプラゾール30mg
O : 服用後4時間までの胃内pH
[チェック項目]
・研究デザイン : クロスオーバーランダム化比較試験
[結果]
ファモチジン群(pH中央値5.13) vs ランソプラゾール群(3.55) P=0.0376
※pH>3の時間→73.6% vs 57.0% P=0.0414
>3.5→66.8% vs 47.8% P=0.0281
>4→60.8% vs 38.8% P=0.015
>5→55.7% vs 29.7% P=0.0281
>6→45.0% vs 23.1% P=0.0414
>7→23.9% vs 3.65% P=0.0076
[コメント]
①のランダム化比較試験ではpHが4まで上昇する時間に有意差がみられなかったものの、こちらでは服用後4時間までのpHの上昇に有意な差がみられている。