【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

2型糖尿病患者は収縮期血圧を10mmHg下げるとどれくらい心血管イベントが減りますか?

「Blood pressure lowering in type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis.」

PMID: 25668264 
 

PECO

P : 2型糖尿病患者(40試験、100354人)
E・C : 降圧の違いで比較
O : 総死亡・心血管イベント・冠動脈疾患・脳卒中・心不全・網膜症・アルブミン尿の発症又は悪化・腎不全
 

チェック項目

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確ではない
・評価者バイアス  : 2人のレビューアーが独立して評価している
・出版バイアス : 言語の制限なく検索されている
・元論文バイアス : RCTのメタ解析であり、「40 trials of low risk of bias」と記載されている
・異質性バイアス : 異質性検定が行われており下記に記載
 

結果

※収縮期血圧10mmHg低下ごとのリスク
 
[総死亡]
・相対リスク0.87(95%信頼区間0.78~0.96)  異質性:I2=36.4%、P=0.054
・絶対リスク減少3.16/1000人年(95%信頼区間0.90~5.22)
・NNT=32人/10年(95%信頼区間19~111)
 
※サブグループ解析
①ベースライン時の収縮期血圧≧140mmHg→相対リスク0.73(95%信頼区間0.64~0.84)
②<140→相対リスク1.07(95%信頼区間0.92~1.26)
③≧130→相対リスク0.75(95%信頼区間0.65~0.86)
④<130→相対リスク1.06(95%信頼区間0.90~1.25)
 
[心血管イベント]
・相対リスク0.89(95%信頼区間0.83~0.96)  異質性:I2=42.5%、P=0.033
・絶対リスク減少3.90/1000人年(95%信頼区間1.57~6.06)
・NNT=26人/10年(95%信頼区間17~64)
 
※①≧140→相対リスク0.74(95%信頼区間0.65~0.85)
②<140→相対リスク0.96(95%信頼区間(0.88~1.05)
③≧130→相対リスク0.74(95%信頼区間0.64~0.85)
④<130→相対リスク0.96(95%信頼区間0.88~1.05)
 
[冠動脈疾患]
・相対リスク0.87(95%信頼区間0.78~0.96)  異質性:I2=51.2%、P=0.008
・絶対リスク減少1.81/1000人年(95%信頼区間0.35~3.11)
・NNT=55人/10年(95%信頼区間32~284)
 
※①≧140→相対リスク0.73(95%信頼区間0.61~0.87)
②<140→相対リスク0.97(95%信頼区間0.86~1.10)
③≧130→相対リスク0.70(95%信頼区間0.58~0.83)
④<130→相対リスク0.97(95%信頼区間0.85~1.10)
 
[脳卒中]
・相対リスク0.74(95%信頼区間0.65~0.85)  異質性:I2=27.2%、P=0.133
・絶対リスク減少4.06/1000人年(95%信頼区間2.53~5.40)
NNT=25人/10年(95%信頼区間19~40)
 
※①≧140→相対リスク0.74(95%信頼区間0.64~0.86)
②<140→相対リスク0.69(95%信頼区間0.52~0.92)
③≧130→相対リスク0.76(95%信頼区間0.64~0.90)
④<130→相対リスク0.72(95%信頼区間0.57~0.90)
 
[心不全]
・相対リスク→0.88(95%信頼区間0.75~1.03)  異質性:I2=62.4%、P=0.001
 
※①≧140→相対リスク0.75(95%信頼区間0.59~0.94)
②<140→相対リスク0.97(95%信頼区間0.79~1.19)
③≧130→相対リスク0.75(95%信頼区間0.59~0.95)
④<130→相対リスク1.00(95%信頼区間0.81~1.23)
 
[腎不全]
・相対リスク→0.74(95%信頼区間0.52~1.06)  異質性:I2=46.3%、P=0.061
 
※①≧140→相対リスク0.75(95%信頼区間0.52~1.08)
②<140→相対リスク1.00(95%信頼区間0.77~1.29)
③≧130→相対リスク0.74(95%信頼区間0.52~1.06)
④<130→相対リスク1.01(95%信頼区間0.78~1.32)
 
[網膜症]
・相対リスク→0.84(95%信頼区間0.70~1.01)  異質性:51.7%、P=0.053
・絶対リスク減少2.24/1000人年(95%信頼区間0.15~4.04)
・NNT=45人/10年(95%信頼区間25~654)
 
※①≧140→相対リスク0.86(95%信頼区間0.70~1.04)
②<140→相対リスク0.88(95%信頼区間0.74~1.05)
③≧130→相対リスク0.84(95%信頼区間0.70~1.01)
④<130→相対リスク0.90(95%信頼区間0.75~1.08)
 
[アルブミン尿]
・相対リスク→0.83(95%信頼区間0.79~0.87)  異質性:61.7%、P=0.016
・絶対リスク減少9.33/1000人年(95%信頼区間7.13~11.37)
・NNT=11人/10年(95%信頼区間9~14)
 
※①≧140→相対リスク0.71(95%信頼区間0.63~0.79)
②<140→相対リスク0.86(95%信頼区間0.81~0.90)
③≧130→相対リスク0.71(95%信頼区間0.64~0.79)
④<130→相対リスク0.86(95%信頼区間0.81~0.90)
 

感想

一次アウトカムが複数設定されており、異質性が高いものもあり、ブロボグラムも視覚的にバラバラに見えるため注意が必要。
 
サブグループ解析を見る限りでは死亡や心血管イベント等に対してベースライン時の収縮期血圧が140mmHg以上の場合はリスクを低下させ、130mmHg未満の場合はリスクを低下させない事が示唆されているが、その間については不明。
前回のメタ解析(http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(15)01225-8 )を含めて考えると収縮期血圧130mmHg以上では同様の結果が得られるようにも思うが、このメタ解析で全体的に大きなウェイトを占めているACCORD BP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20228401?dopt=Abstract)では降圧目標が収縮期血圧<120mmHgを<140mmHgと比較した場合、心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントで有意な差は見られず、有害事象は有意に多くなる事が示唆されているため、心血管イベントリスクが高い場合でなければ必要以上の降圧は行うべきではないように思う。