【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

急性下気道感染症へのプレドニゾロン/CKD患者への降圧治療

【私的背景】

今回は、抄録しか読めないけど気になった論文を。

 

①「Effect of Oral Prednisolone on Symptom Duration and Severity in Nonasthmatic Adults With Acute Lower Respiratory Tract Infection: A Randomized Clinical Trial.」

PMID: 28829884 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28829884

 

【PECO】

: 抗菌薬による治療の必要がない、急性の咳および1つ以上の下気道感染症状を有する、過去5年以内に慢性肺疾患の既往または喘息治療薬の使用がない成人(英国、401例、平均年齢 47歳、女性 63%、喫煙者 17%、痰 77%、息切れ 70%、喘鳴 47%、胸痛 46%、ピークフロー異常 42%)

: プレドニゾロン 20mg×2錠/日を5日間投与(199例)

: プラセボを5日間投与(202例)

: 中等度の咳の持続期間(臨床的に意味のある差は3.79日)、2~4日目の症状の重症度の平均(臨床的に身のある差は1.66点)

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ランダム化比較試験

・真のアウトカムか? : 真のアウトカムと言える

・ランダム化されているか? : されている

・一次アウトカムは明確か? : 抄録を読む限りでは設定されているのは2つであり、明確と言える

 

【結果】

・咳の期間(中央値)

E群:5日(IQR 3~8日) vs C群:5日(IQR 3~10日)→調整ハザード比 1.11(95%信頼区間 0.89~1.39)P=0.36

・症状の重症度(平均値)

E群(1.99点) vs C群(2.16点)→調整平均差-0.20(95%信頼区間 -0.40~0.00)P=0.05

・重篤な有害事象は見られなかった

 

【コメント】

慢性肺疾患や喘息のない急性下気道感染症の患者に対するプレドニゾロンの使用は、臨床的に意味のある有益性は示されず、本試験では有害事象について差は見られていないようだが、有益性よりも害の方が上回る可能性がある。

 

 

②「Association Between More Intensive vs Less Intensive Blood Pressure Lowering and Risk of Mortality in Chronic Kidney Disease Stages 3 to 5
A Systematic Review and Meta-analysis」

JAMA Intern Med. Published online September 5, 2017. doi:10.1001/jamainternmed.2017.4377

http://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2652833

 

【PECO】

: 18歳以上でステージ3~5(eGFR<60ml/分/1.73㎡)のCKD患者(ベースライン時の平均収縮期血圧 148mmHg)

: 積極的または厳格な降圧治療

: プラセボや治療なしまたは厳格ではない降圧治療

: 総死亡

 

【チェック項目】

・研究デザイン : ランダム化比較試験のシステマティックレビュー&メタ解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・一次アウトカムは明確か? : 明確

・評価者バイアス : 「 Two of us independently evaluated study quality and extracted 」の記載あり

 

【結果】

厳格な降圧治療(16mmHg低下し132mmHg) vs 厳格ではない降圧治療(8mmHg低下し140mmHg)→オッズ比 0.86(95%信頼区間 0.76~0.97)P=0.01 ※異質性は見られなかった

 

【感想】

これまでに読んだ論文の結果とは異なり、CKD患者についてはやや厳しめの血圧管理を行った方が総死亡についてはリスクを下げる(死亡を延長する)ことが示唆されている。

この研究のみでは具体的にどの程度の管理を行えば良いのかは明確ではないため、今後も追っていきたい。

少なくとも、収縮期血圧 140mmHg以下は目指したいところ。

 

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スタチンを使用している患者では、インスリンによる血糖コントロールに影響がありますか?

【私的背景】

これまで、スタチンの使用が糖尿病新規発症リスクを増加させることが示唆されているが、血糖コントロールに対してどのように影響を及ぼすかは不明であるため、今回は関連する論文を読んでみたいと思う。

 

 

「Effects of background statin therapy on glycemic response and cardiovascular events following initiation of insulin therapy in type 2 diabetes: a large UK cohort study」

PMID: 28830436

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28830436

 

PECO

: 2型糖尿病と診断され、インスリンによる治療が開始された18歳以上の患者(英国、12725例、平均年齢 58.6±14歳、ベースライン時の平均HbA1c 8.7±1.8%)

: スタチンの使用あり

: スタチンの使用なし

: 6・12・24・36ヶ月後の血糖コントロール(HbA1cの変化)

 

チェック項目

・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究

・真のアウトカムか? : 代用のアウトカムではあるが、興味深いので読み進める

・対象集団の代表性は? : 英国におけるプライマリケアのデータベースが使用されており、大きな問題はないと思われる。

・交絡因子の調整は? : 年齢、性別、社会的地位、飲酒、喫煙、体重、身長、収縮期/拡張期血圧HbA1c、血清クレアチニン、脂質状態、その他の血糖降下薬、併存疾患(Table 1参照)

・平均追跡期間 : 3.9±1.5年間

 

結果

HbA1cの変化】

・6ヶ月後 : スタチン使用群(-0.26%) vs 非使用群(-0.34%)→平均差 0.09%(95%信頼区間 0.03~0.15)P=0.004

・36ヶ月後 : スタチン使用群(-0.31%) vs 非使用群(-0.35%)→平均差 0.05%(95%信頼区間 -0.04~0.14)P=0.172

 

※二次アウトカム

【3-point MACE(総死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合アウトカム)】

・非使用群(30.9/1000人年) vs スタチン使用群(20.7/1000人年)→調整ハザード比 1.36(95%信頼区間 1.15~1.62)

【総死亡】

・非使用群(24.9/1000人年) vs スタチン使用群(9.5/1000人年)→調整ハザード比 1.89(95%信頼区間 1.51~2.37)

心筋梗塞

・非使用群(0.7/1000人年) vs スタチン使用群(1.4/1000人年)→調整ハザード比 0.88(95%信頼区間 0.35~2.23)

脳卒中

・非使用群(4.8/1000人年) vs スタチン使用群(9.4/1000人年)→調整ハザード比 0.55(95%信頼区間 0.38~0.81)

 

※サブグループ解析

・スタチン使用群は、非使用群と比較して、研究期間を通じてHbA1cが高かった。(P<0.05)

 

【3-point MACE】

・アトルバスタチン→調整ハザード比 0.82(95%信頼区間 0.68~0.98)

・シンバスタチン→調整ハザード比 0.67(95%信頼区間 0.55~0.82)

・ロスバスタチン→調整ハザード比 0.56(95%信頼区間 0.39~0.81)

・プラバスタチン→調整ハザード比 0.78(95%信頼区間 0.60~1.01)

 

感想

スタチンの使用が、インスリンによる血糖コントロールに影響を与える事が示唆されていますが、その数字を見るとそれほど大きなものではなく、長期では有意な差がみられていません。

一方で、二次アウトカムでは、MACEのリスクを減少させることが示唆されておりますが、複合アウトカムの各要素を見てみると、総死亡の減少は見られるものの、心筋梗塞では有意な差は見られず、脳卒中ではリスク増加が見られ、なんだかちょっとよくわからないというか、これをこのまま鵜呑みにすることは出来ないような印象ではありますが、血糖コントロールへの影響をリスクとして考えた場合、ベネフィットがリスクを上回るように思います。

しかし、この研究では元からスタチンを使用している群へのインスリン開始による血糖コントロールについて検討されているため、既に血糖降下薬を使用している患者でのスタチン開始によるHbA1cの変動なども見てみたいところです。

探せばあるのかな?また後日探してみたいと思います。