【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

COPD患者ではカルボシステインは効果がありますか?

【私的背景】

旅に出ると論文読みたくなるよね。

 

「Effect of carbocisteine on patients with COPD: a systematic review and meta-analysis.」

PMID: 28814855

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28814855

 

PECO

: 18歳以上のCOPD患者

: 3ヶ月以上のカルボシステインの服用

: プラセボの服用

: COPDの急性増悪総回数

 

チェック項目

・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析

・真のアウトカムか? : 議論が別れるところかもしれないが、真のアウトカムであると言える

・一次アウトカムは明確か? : 明確

・評価者バイアス : 「Two authors checked the relevant studies independently.」と記載されている

・出版バイアス : 統合解析されているランダム化比較試験は4つのみであり、Funnel plotによる検討などは行われていない。英語以外で書かれている文献は除外されている。

・元論文バイアス : 全てランダム化比較試験。「Two authors independently assessed the risk of bias in included studies, as recommended by the International Cochrane Collaboration. Disagreements between the authors over the risk of bias in particular studies were resolved by discussion.」と記載されているものの、結果の記載は見あたらない。

・異質性バイアス : フォレストプロットの方向性は概ね一致している。

・平均追跡期間 : 10.4ヶ月

 

結果

・急性増悪総回数→平均差 -0.43(95%信頼区間 -0.57~-0.29)P<0.000001、I2=60%

・一回以上の急性増悪患者数→相対リスク 0.86(95%信頼区間 0.78~0.95)P=0.002、I2=84%、NNT=12

QOL(SGRQで評価:各0~100点)→平均差 -6.29(95%信頼区間 -9.30~ -3.27)P=0.0001、I2=61%

・有害事象→有意な差は見られていない

・FEV1→有意な差は見られていない

・入院→有意な差は見られていない

・死亡→有意な差は見られていない

 

感想

COPD患者へのカルボシステインの投与で、急性増悪の回数を減らせる事が示されております。

恥ずかしながら、ろくにエビデンスも調べずにカルボシステインなんて効果ないだろうと思いながら仕事をしてきました。この点は重く受け止め、反省しなければなりません。

出版バイアスの可能性があり、異質性もやや高めであるので、ある程度割り引いて考える必要はあり、この結果を見る限りでは、効果はそれほど大きいものではなく、例えば長いこと症状が安定している患者ではカルボシステインを続けることに意義があるのか等の疑問も残りますが、少なくとも全く効果がないというものでもない印象です。

実際に、臨床的にどれ程の意義があるものなのか、他の論文も改めて調べてみたいと思いますが、自分の思い込みに反省させられる一報でした。

NOAC vs VKA リアルワールドメタ解析/PPIと肺炎

【私的背景】

今回は気になったものの抄録しか読めない論文を2報ほど。

 

①「Real-World Setting Comparison of Nonvitamin-K Antagonist Oral Anticoagulants Versus Vitamin-K Antagonists for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation: A Systematic Review and Meta-Analysis.」

PMID: 28716982

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28716982

 

【PECO】

P : 心房細動患者(28研究)

E : ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン

C : VK拮抗薬

O : 虚血性脳卒中、虚血性脳卒中または全身性塞栓症、全ての脳卒中または全身性塞栓症、心筋梗塞、頭蓋内出血、大出血、消化管出血、死亡

 

【チェック項目】

・研究デザイン : 観察研究のシステマティックレビュー&メタ解析

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

 

【結果】

〇アピキサバン

・頭蓋内出血→ハザード比 0.45(95%信頼区間 0.31~0.63)

・虚血性脳卒中→ハザード比 1.05(95%信頼区間 0.75~1.19)

・虚血性脳卒中または全身性塞栓症→ハザード比 1.08(95%信頼区間 0.95~1.22)

・死亡→ハザード比 0.65(95%信頼区間 0.56~0.75)

・消化管出血→ハザード比 0.63(95%信頼区間 0.42~0.95)

・大出血→ハザード比 0.55(95%信頼区間 0.48~0.63)

 

〇ダビガトラン

・頭蓋内出血→ハザード比 0.42(95%信頼区間 0.37~0.49)

・虚血性脳卒中→ハザード比 0.96(95%信頼区間 0.80~1.16)

・虚血性脳卒中または全身性塞栓症→ハザード比 1.17(95%信頼区間 0.92~1.50)

・死亡→ハザード比 0.65(95%信頼区間 0.53~0.75)

・消化管出血→ハザード比 1.24(95%信頼区間 1.08~1.41)

心筋梗塞→ハザード比 0.96(95%信頼区間 0.77~1.21)

 

〇リバーロキサバン

・頭蓋内出血→ハザード比 0.64(95%信頼区間 0.47~0.86)

・虚血性脳卒中→ハザード比 0.89(95%信頼区間 0.76~1.04)

・虚血性脳卒中または全身性塞栓症→ハザード比 0.73(95%信頼区間 0.52~1.04)

・消化管出血→ハザード比 1.24(95%信頼区間 1.08~1.41)

心筋梗塞→ハザード比 1.02(95%信頼区間 0.54~1.89)

 

【コメント】

これまでと同じようなリアルワールドデータかと思いスルーしていたらメタ解析でした。

有効性についてはNOACとVK拮抗薬では有意な差は見られず、頭蓋内出血ではNOACでリスクが減少することが示唆されており、ダビガトラン・リバーロキサバンでは消化管出血に注意が必要という、まあこれまでと同じ傾向であるように思います。

リバーロキサバンでは多くが20mg/日を使用していると思われる点には注意が必要です。

メタ解析とは言え、交絡の影響なども考えなければいけませんが、やはり現時点ではアピキサバンが有利な印象です。

 

 

②「Association of Proton Pump Inhibitors Usage with Risk of Pneumonia in Dementia Patients.」

PMID: 28321840 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28321840

 

【PECO】

P : 認知症患者

E : PPIの使用有り(786例)

C : PPIの使用なし(786例)

O : 肺炎の発症

 

【チェック項目】

・研究デザイン : コホート研究

・真のアウトカムか? : 真のアウトカム

・対象集団の代表性は? : 全民健康保険のデータベースが使用されており、大きな問題はない

・交絡因子の調整は? : 経口スコアマッチングが行われている

 

【結果】

PPIの使用→調整ハザード比 1.89(95%信頼区間 1.51~2.37)

・年齢→調整ハザード比 1.05(95%信頼区間 1.03~1.06)

・男性→調整ハザード比 1.57(95%信頼区間 1.25~1.98)

・脳血管疾患→ハザード比 1.30(95%信頼区間 1.04~1.62)

COPD→調整ハザード比 1.39(95%信頼区間 1.09~1.76)

・うっ血性心不全→調整ハザード比 1.54(95%信頼区間 1.11~2.13)

・糖尿病→調整ハザード比 1.54(95%信頼区間 1.22~1.95)

抗精神病薬の使用→調整ハザード比 1.29(95%信頼区間 1.03~1.61)

コリンエステラーゼ阻害薬およびH2RAの使用では肺炎リスクの減少が見られた

 

【結果】

認知症患者において、PPIの使用が肺炎リスクを増加させることが示唆されていますが、そもそも、これまでにGERDが肺炎リスクを増加させることも示唆されているため、やはり交絡の可能性についても考えなければなりません。

特に、漫然投与ならまだしも、認知症があるような高齢者で、抗血小板薬や抗凝固薬が処方されているような場合は継続した方が良いのではないかという例の方が多いように思います。