坐骨神経痛に対するプレガバリン/厳格な血糖コントロールと細小血管障害
【私的背景】
今回も抄録しか読めないけど、興味深い論文を読んでみたいと思います。
「Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica」
N Engl J Med 2017; 376:1111-1120March 23, 2017DOI: 10.1056/NEJMoa1614292
http://www.nejm.org/doi/abs/10.1056/NEJMoa1614292
【PECO】
P : 坐骨神経痛のある患者(209例)
E : プレガバリン 150mg/日(108例)
C : プラセボ
O : 下肢痛の強度(全10ポイント)
【チェック項目】
・研究デザイン : ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカムと言える
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている
【結果】
・8週目
E群(平均3.7ポイント) vs C群(平均3.1ポイント)→調整平均差 0.5ポイント(95%信頼区間 -0.2~1.2)P=0.19
・52週目
E群(平均3.4ポイント) vs C群(平均3.0ポイント)→調整平均差 0.3ポイント(95%信頼区間 -0.5~1.0)P=0.46
※有害事象
E群:227例 C群:124例
プレガバリン群では眩暈が最も多かった
【感想】
プレガバリンは坐骨神経痛の患者についてプラセボと差がみられないという結果で、ちょっと衝撃的です。
個人的には効果がみられない患者と、劇的に痛みが改善する患者が両極端にいて、眩暈で中止になる例がやはり多く、特に腎機能が低下している患者では眩暈の他に浮腫みが出てくる例も数例経験しているため、痛みに対する薬物治療そのものが難しいところがある印象ですが、その中でも使いどころが難しい薬剤である印象です。
「Effects of intensive glucose control on microvascular outcomes in patients with type 2 diabetes: a meta-analysis of individual participant data from randomised controlled trials」
DOI http://dx.doi.org/10.1016/S2213-8587(17)30104-3
【PECO】
P : 4つのランダム化比較試験に参加した2型糖尿病患者(27049例)
E : 厳格な血糖コントロール
C : 厳格ではない血糖コントロール
O : 腎イベント(末期腎不全、腎死亡、eGFR<30mL/min/1.73㎡、糖尿病性腎症)、眼イベント(網膜光凝固療法、硝子体切除術、増殖性網膜症、糖尿病性網膜症)、神経イベント(振動覚消・足首の反射・軽い接触に対する感覚の消失)
【チェック項目】
・研究デザイン : メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・追跡期間中央値 : 5.0年間
【結果】
・腎イベント→相対リスク 0.80(95%信頼区間 0.72~0.88)P<0.0001
・眼イベント→相対リスク 0.87(95%信頼区間 0.76~1.00)P=0.04
・神経イベント→相対リスク 0.98(95%信頼区間 0.87~1.09)P=0.68
【感想】
「厳格」と言ってもどの程度の血糖コントロールであるかは、それぞれのランダム化比較試験の論文を読む必要があるとして、厳格な血糖コントロールの大血管障害に対するベネフィットについては今のところ不明確である印象ですが、腎イベントや眼イベントについてはリスクを減少させることが示唆されております。
これを以て、厳格な血糖コントロールを行うべきだとは思いませんが、細小血管障害についてはベネフィットがあるかもしれないというのは貴重な報告であると思います。
シロスタゾールと認知症/静脈血栓塞栓症の再発予防
【私的背景】
未読論文が溜まる一方です。今回はアブストラクトしか読めないけど気になる論文を。
①「Cilostazol Use Is Associated with Reduced Risk of Dementia: A Nationwide Cohort Study.」
PMID:28194663
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28194663
【PECO】
P : 認知症のない40歳以上の9148例(台湾)
E : シロスタゾールの使用あり(2287例)
C : 使用なし(6861例)
O : 認知症
【チェック項目】
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 全民健康保険のデータベースが使用されており、大きな問題はないように思われる
【結果】
・認知症の発症→調整ハザード比 0.75(95%信頼区間 0.61~0.92)
※サブグループ解析
・虚血性心疾患と診断された患者の認知症発症→調整ハザード比 0.44(95%信頼区間 0.24~0.83)
・脳血管疾患と診断された患者の認知症発症→調整ハザード比 0.34(95%信頼区間 0.21~0.54)
【感想】
シロスタゾールの使用が認知症リスクを減少させることが示唆されています。
まあ、実際に認知症予防として使われるのはどうかなという印象ではありますが、他の抗血小板薬ではどうなのかちょっと気になったので、また後程調べてみたいと思います。
②「Rivaroxaban or Aspirin for Extended Treatment of Venous Thromboembolism.」
PMID:28316279
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28316279
【PECO】
P : 静脈血栓塞栓症の患者(3396例)
E : リバーロキサバン 20mgまたは 10mgを1日1回
C : アスピリン 100mgを1日1回
O : 有効性→致死的または非致死的な静脈血栓塞栓症の再発、安全性→大出血
【チェック項目】
・研究デザイン : 第3相ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている
・ITT解析されているか? : されている
・追跡期間 : 12ヶ月
【結果】
〇静脈血栓塞栓症の再発
・リバーロキサバン 20mg(1.5%) vs アスピリン(4.4%)→ハザード比 0.34(95%信頼区間 0.20~0.59)P<0.001
・リバーロキサバン 10mg(1.2%) vs アスピリン(4.4%)→ハザード比 0.26(95%信頼区間 0.14~0.47)P<0.001
〇大出血
・大出血の割合:リバーロキサバン 20mg(0.5%) 10mg(0.4%) アスピリン(0.3%)
・臨床的に関連する非大出血:リバーロキサバン 20mg(2.7%) 10mg(2.0%) アスピリン(1.8%)
【感想】
リバーロキサバン vs アスピリンという点では予想通りといった結果ですが、静脈血栓塞栓症の再発予防においてはリバーロキサバンは低用量でも良いかもしれません。
日本で使われている用量とは違う点には注意が必要です。