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【薬局薬剤師の記録的巻物】

EBMの実践のため、論文を読み、記録していきます。

ゾルピデムは骨折リスクが低いですか?

今回はゾルピデムと骨折について検討されている論文を読んでみたいと思います。
ω1受容体に選択的でα1サブユニットへの効力が強く、α2・α3・α5サブユニットへの効力が弱いため筋弛緩作用が弱く、ベンゾジアゼピン系薬と比較すると転倒・骨折リスクが低いと言われているゾルピデムですが、果たして現象としてはどうなのか?


①「Is Zolpidem Associated with Increased Risk of Fractures in the Elderly with Sleep Disorders? A Nationwide Case Cross-Over Study in Taiwan.」

PMID: 26716836

[PECO]
P : 65歳以上の睡眠障害と診断された患者6010人(台湾)
E : ゾルピデム又はベンゾジアゼピン系薬の使用あり
C : 使用なし
O : 骨折

[チェック項目]
・研究デザイン : ケースクロスオーバー研究
・調整された交絡因子は? : 抗うつ薬・抗精神病薬・利尿薬・高血圧・骨関節炎・骨粗しょう症・関節リウマチ・うつ病
・集団の代表性は? : 一般診療のデータが使用されており、大きな問題はないと思われる

[結果]
・ゾルピデム→調整オッズ比1.13(95%信頼区間0.96~1.34)P=0.136
・ベンゾジアゼピン系薬→調整オッズ比1.08(95%信頼区間0.97~1.22)P=0.142
※年齢や性別毎でも有意な差は見られていない
※ベンゾジアゼピン系薬ではジアゼパムのみ[調整オッズ比1.49(1.05~2.11)]と有意差があり、その他では有意な差は見られていない
※骨折部位別では有意な差は見られていない

[コメント]
このケースクロスオーバー研究ではゾルピデム・ベンゾジアゼピン系薬(ジアゼパム以外)共に骨折リスクとの関連は見られていない。
ただ、この研究のみでどちらも骨折と関連しないとは言い難いため次の論文に行ってみましょう。



②「Retrospective population cohort study on hip fracture risk associated with zolpidem medication.」
PMID: 24899758

[PECO]
P : 18歳以上の台湾人
E : ゾルピデムの新規処方あり(6978人)
C : ゾルピデムの使用なし(27848人)
O : 大腿骨頚部骨折

[チェック項目]
・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究
・調整された交絡因子は? : 年齢・性別・保険の区分・不眠症・抗不安薬・抗てんかん薬
・集団の代表性は? : 台湾国内でランダムに選ばれた保険請求のデータが使用されており、大きな問題はないと思われる

[結果]
・男性 : E群(3.26/1000人年) vs C群(1.12/1000人年)→調整罹患率比2.98(95%信頼区間2.08~4.26)、NNH=467.3人/年
・女性 : E群(3.00/1000人年) vs C群(1.56/1000人年)→調整罹患率比1.97(95%信頼区間1.44~2.7)、NNH=694.4人/年
・18~44歳 : E群(0.52/1000人年) vs C群(0.08/1000人年)→調整罹患率比6.50(95%信頼区間5.45~7.76)、NNH=2272.2人/年
・45~64歳 : E群(1.69/1000人年) vs C群(0.65/1000人年)→調整罹患率比2.60(95%信頼区間2.55~2.66)、NNH=96.1/年
・65歳以上 : E群(11.1/1000人年) vs C群(5.34/1000人年)→調整罹患率比2.08(95%信頼区間1.39~3.11)、NNH=174人/年

[コメント]
ゾルピデムが骨折リスクを上昇させることが示唆されているが、転倒・骨折と関連するような併存疾患等についての調整が充分に行われていない印象なので割り引いて考える必要ああるかもしれない。



③「Zolpidem use and risk of fracture in elderly insomnia patients.」
PMID: 22880153

[PECO]
P : 睡眠障害のある65歳以上の韓国人(1508人)
E : ゾルピデム又はベンゾジアゼピン系薬の使用あり
C : 使用なし
O : 骨折

[チェック項目]
・研究デザイン : ケースクロスオーバー研究
・調整された交絡因子は? : 抗コリン作用薬・抗精神病薬・抗てんかん薬・カルシウム拮抗薬
・集団の代表性は? : 韓国国内における保険請求のデータが使われており、大きな問題はないと思われる

[結果]
・ゾルピデム→調整オッズ比1.72(95%信頼区間1.37~2.16)
・ベンゾジアゼピン系薬→調整オッズ比1.00(95%信頼区間0.83~1.21)

[コメント]
ゾルピデムと骨折との関連は見られるが、ベンゾジアゼピン系薬では骨折との関連が見られないという以外な結果。



④「Risk of fractures requiring hospitalization after an initial prescription for zolpidem, alprazolam, lorazepam, or diazepam in older adults.」
PMID: 22091502
※抄録のみ

[PECO]
P : 65歳以上の成人
E : ゾルピデム又はベンゾジアゼピン系薬の使用あり
C : 使用なし
O : 入院を要する骨折

[チェック項目]
・研究デザイン : 後ろ向きコホート研究

[結果]
・ゾルピデム→率比2.55(95%信頼区間1.78~3.65)P<0.001
・アルプラゾラム→率比1.14(95%信頼区間0.80~1.64)P=0.42
・ロラゼパム→率比1.53(95%信頼区間1.23~1.91)P<0.001
・ジアゼパム→率比1.97(95% 信頼区間1.22~3.18)P=0.01

[コメント]
ゾルピデムで最もリスクが高いという結果になっている。



⑤「Zolpidem use and hip fractures in older people.」
PMID: 11844004
※抄録のみ

[PECO]
P : 65歳以上の成人
E : 鎮静催眠薬の使用あり
C : 使用なし
O : 大腿骨頚部骨折

[チェック項目]
・研究デザイン : ケースコントロール研究

[結果]
・ゾルピデム→調整オッズ比1.95(95%信頼区間1.09~3.51)
・ベンゾジアゼピン系薬→調整オッズ比1.46(95%信頼区間1.21~1.76)
・抗精神病薬→調整オッズ比1.61(95%信頼区間1.29~2.01)
抗うつ薬→調整オッズ比1.46(95%傷害1.22~1.75)

[コメント]
こちらでもベンゾジアゼピン系薬と比較するとリスクが高い。

感想

ひとまず以上の論文を読んでみた感想としてはゾルピデムによる骨折のリスクは軽視できるものではなく、ベンゾジアゼピン系薬と比較しても今のところは少なくとも骨折リスクが低いとは言えないと思います。
漫然と使用するべきではないというのは当たり前の事として、転倒・骨折リスクを懸念してベンゾジアゼピン系薬ではなくゾルピデムを選択するというのはあまり妥当ではないような印象です。
それにしても、筋弛緩作用とはまた別の原因による転倒・骨折リスクがあるのでしょうか?

高齢者では転倒・骨折に対する十分な注意が必要ですが、夜中に起きてトイレに行った際等に転倒してしまうというケースが割りと多いと思われますが、睡眠パターンを確認して薬を選択することがやはり重要かと思います。

訂正

②でNNHの計算に誤りがあったため訂正させていただきました。