シロスタゾールと認知症/静脈血栓塞栓症の再発予防
【私的背景】
未読論文が溜まる一方です。今回はアブストラクトしか読めないけど気になる論文を。
①「Cilostazol Use Is Associated with Reduced Risk of Dementia: A Nationwide Cohort Study.」
PMID:28194663
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28194663
【PECO】
P : 認知症のない40歳以上の9148例(台湾)
E : シロスタゾールの使用あり(2287例)
C : 使用なし(6861例)
O : 認知症
【チェック項目】
・研究デザイン : コホート研究
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・対象集団の代表性は? : 全民健康保険のデータベースが使用されており、大きな問題はないように思われる
【結果】
・認知症の発症→調整ハザード比 0.75(95%信頼区間 0.61~0.92)
※サブグループ解析
・虚血性心疾患と診断された患者の認知症発症→調整ハザード比 0.44(95%信頼区間 0.24~0.83)
・脳血管疾患と診断された患者の認知症発症→調整ハザード比 0.34(95%信頼区間 0.21~0.54)
【感想】
シロスタゾールの使用が認知症リスクを減少させることが示唆されています。
まあ、実際に認知症予防として使われるのはどうかなという印象ではありますが、他の抗血小板薬ではどうなのかちょっと気になったので、また後程調べてみたいと思います。
②「Rivaroxaban or Aspirin for Extended Treatment of Venous Thromboembolism.」
PMID:28316279
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28316279
【PECO】
P : 静脈血栓塞栓症の患者(3396例)
E : リバーロキサバン 20mgまたは 10mgを1日1回
C : アスピリン 100mgを1日1回
O : 有効性→致死的または非致死的な静脈血栓塞栓症の再発、安全性→大出血
【チェック項目】
・研究デザイン : 第3相ランダム化比較試験
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・ランダム化されているか? : されている
・盲検化されているか? : 二重盲検が行われている
・ITT解析されているか? : されている
・追跡期間 : 12ヶ月
【結果】
〇静脈血栓塞栓症の再発
・リバーロキサバン 20mg(1.5%) vs アスピリン(4.4%)→ハザード比 0.34(95%信頼区間 0.20~0.59)P<0.001
・リバーロキサバン 10mg(1.2%) vs アスピリン(4.4%)→ハザード比 0.26(95%信頼区間 0.14~0.47)P<0.001
〇大出血
・大出血の割合:リバーロキサバン 20mg(0.5%) 10mg(0.4%) アスピリン(0.3%)
・臨床的に関連する非大出血:リバーロキサバン 20mg(2.7%) 10mg(2.0%) アスピリン(1.8%)
【感想】
リバーロキサバン vs アスピリンという点では予想通りといった結果ですが、静脈血栓塞栓症の再発予防においてはリバーロキサバンは低用量でも良いかもしれません。
日本で使われている用量とは違う点には注意が必要です。
薬剤師がいれば薬が原因となる入院を防ぐことができますか?
【私的背景】
薬剤師であれば興味深い論文でしょう。
「Interventions in primary care to reduce medication related adverse events and hospital admissions: systematic review and meta-analysis.」
PMID:16456206
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16456206
PECO
P : 38研究の対象となった患者
E : プライマリケアにおいて、薬剤師主導で薬剤レビューを行い介入する、または他のヘルスケアの専門家が主導で介入する
C : 特別な介入はなし
O : 薬剤の過量投与または誤用が原因と考えられる入院
チェック項目
・研究デザイン : システマティックレビュー&メタ解析
・真のアウトカムか? : 真のアウトカム
・一次アウトカムは明確か? : 明確
・評価者バイアス : 「The quality of all included studies was assessed independently by two reviewers」と記載されている。
・元論文バイアス : ランダム化比較試験の他に、ランダム化されていない比較試験や前後比較の研究も含まれている。Table 2を見るとあまり質の高いものではないような印象である。
・出版バイアス : Funnel plotを用いて検討されているが、「A funnel plot was prepared and this suggested the presence of publication bias」と記載されている。言語の制約はなく検索されており、個々の研究者と連絡を取っている。
・異質性バイアス : フォレストプロットを見ると方向性が一致していない。
結果
・薬剤師主導による介入→オッズ比 0.64(95%信頼区間 0.43~0.96) 異質性:P<0.001
※ランダム化比較試験のみの解析→オッズ比 0.92(95%信頼区間 0.81~1.05) 異質性:P=0.58
・他のヘルスケアの専門家主導による介入→オッズ比 1.05(95%信頼区間 0.57~1.94) 異質性:P=0.58
感想
薬剤師主導で薬剤に対する評価を行い介入することで、薬剤が原因となる入院を防げることが明らかにされており、やはり「薬」に薬剤師は不可欠であることが示唆されている!
と言えるほどのものではないのが残念ですが、薬剤師が介入することにより入院リスク減少と関連することが示唆されております。
単なる個人的な意見ではありますが、薬剤の過量投与や誤用について介入が行われており、勿論それは薬剤師として行わなければいけない事ではありますが、しかしそれだけではなく、その薬剤が目の前の患者にとってどれだけのベネフィットがあり、また、将来的にどのようなリスクがあるのかを定量的に判断して介入を行うということが重要であるように思います。
一見すると適切に使われているような薬剤も、実は期待できるベネフィットはわずかで、リスクの方が大きいのではないかなんて事例はそれほど稀なことではありません。
患者の想いも考慮しつつ、そこに介入できるか否か。そのためにはやはり論文を読み続け、模索していかなければなりません。
それはそうと、統合されているランダム化比較試験では転倒予防について検討されているものがいくつかあり、そちらも興味深いのでまたいずれ読んでみたいと思います。